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第132話 交渉⑥


「リリスと戦うだと!?何故そういう結論になるんだ?」


フアンズの質問にアリオスが答える。


「ルイ、無断で決闘をするということですね?」

「ええ」

「無断で決闘だと?」


決闘がこの異世界では稀にある。


一対一で正々堂々と戦う。


何かの因縁があったり、何かを奪い合うときによく使われる決着法だ。


学園内でも決闘は存在する。


だが、全て許可制だ。


本来、決闘は命の奪い合いをするものだ。


だから、教師の立ち会いなしで行えば大きな事故につながりかねない。


更に言うと決闘は神聖なものとされてきた。


そるゆえ正しい手順があるし、その儀礼的作法を踏まえて行う必要かがある。


それを破った者は、決闘を侮辱したとして罰せられる。


こうした理由から、学園内での無許可の決闘は禁じられている。


その事は校則にもしっかり明記されており、破った者は重い処罰を下される。


つまり、僕はこの校則を逆手にとって休学をする。


リリスを勝手に呼び出し、無断で決闘を行う。


そうして休学になる!


「それでいいのか?」


敵なのにこちらに同情の色を見せるフアンズ。


「何を心配しているのか?これはそちらのためでもあるぞ」

「こちらの?」

「ああ。僕とリリスが戦うところを見れば、きっと精霊術に関する情報も引き出せる」


ハッとする魔法協会幹部。


無詠唱魔法を扱える僕と、未知の精霊術士リリスとの戦い。


リリスは必ず本気で来るはず。


そうなると、魔法協会の目的であるリリスの実力を知る良い機会となる。


まあ、僕としても今の自分とリリスのどちらが強いか現状を測ることができ、今後の計画の立て方の参考に役立てる事が出来る。


そう、これももちろん、自分のためである!


「・・・それではこちらが情報を多くもらうことになるが」

「ええ、だからもう一つ条件を付けますよ」

「やっぱり」


そりゃ、そうだ。僕もリリスと決闘となれば、ただでは帰れないだろう。体を張るのだから要求して当然だ。


「誓約書を書いてください。『今後二度とこちらには手を出さない』と」


口約束では信用ならない。神に誓わせて紙に書かせれば、ある程度は信用できる。むろん、それも守られるとは思っていない。ただ、しばらくは手を出しにくくなるだろう。


「分かった。その提案を飲もう」


交渉成立だ。


「では先生方、後処理は任せました」


しっかり休学にしてもらわなければ困る。


「善処する」

「はぁ〜〜い」

「分かった」



交渉がまとまったので、こちらが用意した紙にサインを促す。


全員が署名を書き終えたところでお待ちかねの謝罪の時間だ。


「さて、お二方。謝罪をお願いしますよ」

「・・・分かった」


屈辱的な顔。


うん、これはいい眺めだ!


九十度に腰を折って深々と謝罪をする。


「「申し訳ありませんでした」」


僕は満足げに口角を上げた。


「許そう」


頭を上げたテッペンの目がこちらを睨んでいたが気にしない。


僕は何も悪いことしていないからな!



さて、交渉が終わり僕らは帰ることになった。


建物の外に出た頃は、すでに日は沈み始めていた。


だいだい色に染まる夕焼け空は、僕の勝利を祝ってくれているように見えた。


「ナータリ、そういう事だから、後は頼んだぞ」


馬車に乗った僕は声をかけたが、無愛想に無視される。


いや、実際はナータリは放心状態だった。


たまに口を開いては、早口で独り言をぶつぶつ喋る。


「あんなことを知ってしまった・・・どうしよう?どうすれば?わたし、これからどうすれば?・・・」


ナータリは故障していた。よほど今回の出来事、明かされた真実に大きな衝撃を受けたのだろう。その目は焦点が合っておらず、僕に食ってかかるいつもの元気も無い。


その姿を見て不憫に思ったが、今は何もしてやれない。ナータリは僕らと出会ってしまったがゆえに、彼女の人生の軌道がカーブしてしまった。だが今、僕が同情したところで何の慰めにも何の役にも立てない。彼女は彼女自身で、この狂った世界の真実や悪意、現実と折り合いをつけて生きていくしかないんだ。


もちろん、世の中には真実を知らずに生きてゆく人間も沢山いる。あるいは、それをなるべく見ないように目隠しして通り過ぎる者もいる。それを知るには勇気がいるし、真実を知っていい勇敢な人間は、いつの時代も限られている。これから彼女がどう生きるかは彼女にしか決められない。それは彼女の問題であり、彼女の人生だからだ。


とにかく、交渉は終わった。


僕はこれからリリスとの戦いに備えなければならない。


僕が勝つのは当然だ。


だが、圧勝でなければならない!


それがこの世界に転生した僕の人生であり、そのために僕は生きているのだから!!


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