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第128話 推理②


ラオスは脅されている。


正確には家族を人質に取られていた。


どうしてそう思ったのか。


それは簡単なこと。


ラオスの家族はたしか帝都から二週間ほどかかる場所に住んでいたはず。


しかし、夏休みに僕たちが滞在した貴族の家で、何故かラオスの家族が働いていた。


その家は、少なくとも二週間以上かかる場所には無い。


つまり、理由があって彼の家族はあそこにいた。


調べてみるとビンゴだった。


ラオスの家族は夏休みの三ヶ月前に突然、元住んでいた家を引き払ってあの家に移り住み始めた。


おそらく第一皇子がラオスの家族を人質にしたのだ。


ラオスが裏切らないように彼が大切にしているものを奪った。


だから、ラオスは僕を殺すしかなかった。


その戦略自体はあながち間違ってはいなかった。


ただ、敵がもし何かを間違えていたとしたら、それは弱小貴族に人質を任せたことだ。


おそらく親戚の貴族に預けることで怪しまれないようにしたのだろうけど、結果的にこちらの介入がしやすかった。


お陰で人質をこちらが奪って、逆に人質にしてやった!


「すまん、本当にすまん!教師として失格なのは分かっている。だが、やるしかなかったんだ・・・」


陰謀策略、へつらいや騙し合い、このどろどろの貴族社会だ。


そんなのは日常茶飯事だから、僕はそこまで怒ってはいない。


どちらかと言えば腹が立つのは、自分は安全な場所にいて、僕を殺そうとしている奴。


僕の道を邪魔する奴に怒りを覚える。


僕を排除しようとするなら、やられる覚悟はあるのだろうか?


「殺すつもりはなかったんだ。ただ、怪我を少し負ってくれるだけでも言い訳はできた。そう考えてしまった。本当にすまない!」


自分よりも歳が上の人が土下座をしてくるのは何とも言えない気持ちになる。


正直ラオスの謝罪に価値を感じない。


たかだか駒でしか無いのだから。


それよりも、もっと上の人間の土下座のほうが興味がある。


心から反省している謝罪なんて面白みがない。


悔しそうな表情を浮かべる敗者の歪んだ顔こそ、どの芸術作品よりも価値がある!


「ルイ兄様、顔がゲスくなっています」


おっと、いかんいかん。


とりあえず、目の前の男の処遇だ。


「ラオス先生。あんたはこれからどうなるか分かっていますか?」

「分かっています。責任を持って辞めます。そして捕まります」


アホ、ボケ!


「違いますよ。あんたはこの学園に残ってください」

「でも―」

「僕の手駒としてしっかりと働いてもらいたい」


ラオスは僕を見上げる。


「一定の発言力はありますよね?」

「まあ、少しは」

「その力はこの学園で僕の力を伸ばすうえでは重要になってくる。人質はこっちが管理しているので、しっかりと働くように」


ラオスは頷くしか無い。


「ちょっと、それじゃあ、今までと変わらないでしょ」


ここで反抗してきたのはナータリだった。


「確かに先生は駄目なことをしたけど仕方が無かったでしょ!慈悲の心を持って家族を自由にしたらどうなの!」


はぁ〜〜〜これだから無知は。


「おい、ナータリ。貴族の暗殺未遂はどんな罪になるか知っているか?」

「それは・・・知らないわ」

「親族全員処刑だ。それも公爵家の長男を狙ったのだから、親族と言っても又従兄弟のさらに従兄弟ぐらいまでは刑に処されるぞ」


この世界では貴族、家柄こそ全て!


だからこそ、貴族に歯向かう奴らは徹底的にやらなければならない。


「僕は慈悲の心でそれを見逃しているんだ。しかも、このまま自由になったらどうなるか分かるか?口封じとして結局殺されるんだ。だから僕らが保護してあげているんだ」


どんだけ僕は慈悲深いんだろう!


「・・・分かったわよ」


よし、納得したな。


「じゃあ、行くぞ!」


僕は追求を終えたところで立ち上がった。


「どこへ?」

「もちろん、魔法協会の本部だ」


ラオスとナータリは驚く。


「ルイ様、六人用の馬車の用意はできております」

「ご苦労」

「六人って・・・」

「そうだ、全員で行くぞ」




そこから数十分。


目立つ高い建物、魔法協会の本部の建物の前につく。


馬車から降りた僕らは中へと入る。


入った瞬間、二人の大人が出迎えてくる。


「お前、騙したな」

「完全に騙されましたわぁ〜」


その二人を見て、ラオスとレーナは声を合わせる。


「「アリオス先生とイルナ先生!!!」」


二人の男女こそ、Sクラス担当のアリオスと実践授業副担任のイルナだった。



さて、ここからだ!


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