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第127話 推理


「急に何のことを話し出すんだ、ルイ?暗殺?魔法協会だと?俺に言われても分からないぞ。人を間違えたんじゃないのか」


明らかに饒舌になるラオス。


「ちょっと、ルイ!貴方、急に何言っているのよ!ラオス先生が何かしたって言うの!」


まだ分かってないのかよ!!!


じゃあ一個ずつ説明してやるか。


「事の発端は僕が無詠唱魔法を使った時に話が遡る」

「そこからなの?」

「元々他の人間を監視する目的のあった魔法協会は、突如目の前に現れた僕に驚きを隠せなかった。自分たちが長年成し遂げられなかった魔法を、子供が成し遂げてしまって協会はめちゃめちゃ焦った」


魔法協会が焦った理由は二つ。


第一に、自分たちが無能だという烙印が世間から押され、発言力が低下してしまうから。


第二に、元々の監視対象自体が僕のせいで霞んでしまい、当初の目的が遂行できなくなるから。


以上の二つの理由で僕という存在が邪魔になってしまった。


だが、彼らにとってさらに厄介な問題があった。


それは、僕が国内最最高位の貴族であるブルボン公爵家の長男であること。


だから、あからさまに表立って消すことはできず、事故などに偽装して裏で暗殺するしか方法は無かった。


学園入学の間もない時点で、すでにアルスとレーナは魔法協会の行動を察知していた。


僕は特に気にしてはいなかったが、二人は危機感を持って新たな派閥を作った。


「それに私が巻き込まれたのね・・・」

「まあ、そうだな」


まあナータリには気の毒だが、ドンマイ!としか言いようがない。


僕の周囲に人が集まることで、暗殺がしにくくなる。


言ってみれば僕を守る人間の盾や城だ。


そういう意図もあって派閥を大きくしていった。


だが、ここで大きな誤算があった。


魔法協会は実は学園にあまり影響力を持っていなかったのだ。


それを知らなかった僕らは、第一皇子と第二皇子の誘いをともに断ってしまった。


第二皇子はまだよかったが、第一皇子を怒らせたのは今にして考えるとまずかった。


と言うのも、魔法協会の狙いを知った第一皇子派は、魔法協会の者を学園内に手引して僕を狙うよう指示したからだ。


ただし、その証拠はまだ十分ではなく、いまだ推測の域を出ないが。


とはいえ、一つだけ確実なことがある。


それは、


「ラオス先生、貴方は魔法協会側の人間ですよね!」


さっきよりもいっそう顔を青くさせるラオス。


「最初に違和感と言うか疑問に思ったのは、あのダンジョンの時です」

「ダンジョン?」

「どうしてゴーレムを見た時、『まさかゴーレムだったのか!』と先生は発言をしたのか?どうして子供思いの先生が、ゴーレムとの戦闘を一生徒の僕に任せたのか?と」

「二つ目の質問は、貴方が強いと分かっていたからじゃないの?」


ナータリの推理はもっともである。


だが、そうは言ってもラオスは生徒にそんなことはさせないはずだ。


まず、最初の疑問は、まるで初めからすでに何かが来ると分かっていたような口ぶりだった。


ただ、何が現れるかまでは正確には知らなかったような口ぶり。


二つ目の場合、ラオスの印象とはかけ離れる行動だった。


子供好きで、生徒を守ろうとする教師の鏡。


であるならば、魔物ゴーレムクラスの相手を生徒がどんなに強かろうと任せるわけがない。


それに、僕が強いと聞いてはいても実際に僕が戦っているところを見たことが無いのだから、「勝てる!」という言葉を鵜呑みにするはずはない。


もちろん、ここまでの推理にはこじつけの部分もある。


人なのだから急に心が変わる時もある。


「もう少し言うと、ダンジョンの進むルートを変えましたよね?元々ダンジョンには三つの道がある。そのうちAグループは第一の道、Bグループは第三の道に行く予定だった。そう事前の計画書にも書いてありましたよ。なのに、第二の道を僕らは行きました」


資料をひらひらと見せる。もちろん、極秘ルートで入手したものだ。


学園からダンジョンに行くには瞬間移動しか無い。


ラオスがあの魔法陣を書いた本人だからこそ、そこに流す魔力の調整も知っており、三重になっていた魔法陣の真ん中、つまり第二の道を発動させた。


そう考えれば説明がつく。


「・・・・・・・・・」


ラオスは黙りっぱなし。


「まだあるぞ」

「まだあるの!」


当たり前だ。今日の日のために、どれだけ証拠を集めたと思っている。


あの夏休みの旅行という名の調査。


あの時、僕らが泊まった家は第一皇子派の家だった。


宿泊時に、あれだけしつこく第一皇子派に僕を勧誘してきたのは言わば最後通牒のようなものだったのだ。


その後、渋々受けた依頼で戦った野盗共。


聞いていたよりも野盗の数が多かったのは、あえて少ない数の噂を流して僕たちを油断させようとしたのだろう。


そして、野盗の死体から見つけた高価な物。


その正体は、魔力を流すと文書が見れる時計だった。


そこにはあの泊まった家の主から野盗へ、僕を殺すように指示が出ていた。


馬鹿な奴らだ。燃やせばよかったものを。


とりあえず、僕は敢えて知らないふりをしてそのまま調査をした。


「・・・とまあ、ざっくりこんな感じだ。ラオス先生はダンジョンの件で僕を殺そうとした罪がある。言い逃れはできませんよ。他にも証拠品はあるぞ」


押し黙り、黙秘を続けるラオス。


はぁ〜〜、じゃあ、あれを言うしか無いな。


「先生、あんた脅されていたんでしょ?」


その言葉を聞いてラオスが目も口をあんぐりと開ける。


「ど、どうして、それを?」

「先生、大丈夫ですよ。安心して下さい。私達の方で、保護しましたから」


レーナが優しく教える。


その途端、ラオスは両膝を折り、突っ伏して泣き崩れた。


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