第118話 帝立学園祭準備④
三日後、昼休みをいつものように本を読んで過ごしていた時。
すごい勢いでアルスが教室に駆け込んでくる。
「ルイ兄様!どういうことですか!?」
入ってきて、僕のところへ駆け寄ってくる。
「お前、何処に行っていたんだ?」
「何処も何も、生徒会長に呼ばれたんですよ!予算の件で!」
「アルス、うるさいですよ」
「レーナ、さては知っていたな!?」
隣にいたレーナを睨むアルス。
「で、何の話だ?」
「とぼけないでください!なんでこのSクラスに追加の資金が決まったんですか!前の会議でも言われていたように予算は逼迫していたはずですから、そんなまねは本来できないはずです!」
僕はそれに答える。
「それについては別に変なことはしてないぞ。寄付をただ持ちかけただけだ」
そう、話は二日前に遡る。
この冴えてる頭で妙案を思いついた僕は早速生徒会室を訪ね、生徒会長と直に交渉をした。
相手は予算が逼迫しているが何としても学園祭を盛り上げたい人間だ。
資金提供をすると言ったら簡単に食いついてきた。
僕が寄付する代わりに、その寄付金で増えた予算の一部をS組へ回すことを約束させた。
つまり、現行の予算額分配ルールの枠外から資金を流し込んで自分で使えるようにしたのだ!
だから、直接に自分のお金は使うわけではない。
あくまで学園に寄付されたお金として使う。
ルールには常に抜け穴があるのだ。
「そんな事を・・・レーナ、君は止めなかったのか?」
アルスの質問に肩をすくめて答える。
「別に、悪いことをしたわけではありません。しかも、ルイ様はそれが不都合な事だとは気づかれていませんし」
そうそう、悪いことは・・・ちょっと待って、気づいていないって何なんだ?
「え・・・・ああ、なるほど、そうですね。ルイ兄様は気づいていないようですね」
「こちらとしても一石二鳥です。まあ、ルイ様にしたら、もしかするとマイナスかもですが」
待て、待て、待て。マイナスかもとはどういう事だ?
僕、どこかで間違えたか?
いや、そんなはず無い!間違えることなど・・・
???いや、待てよ。
僕はS組の資金を増やした。
そうすることで提供できるパンケーキ量も増える。
ん、パンケーキ量が増える?ということは、作る数も増える。
作る数が増えるということは、作る人である僕の、
「負担が増えるのか!!!」
「「そういうことでーす!!」」
何というミスだ!
楽したいはずが、逆に忙しくなっている!
でも、売上一位も取りたいし。
二兎を追う者一兎をも得ず、的な悩み?
だが、一兎は得られるかもしれないから・・・・ってそんなことは今はいい!
「よし、返金してこよう!そして回収してくる」
「何をですか?」
「決まっているだろ!僕が寄付したお金だ!」
「じゃあ、無理ですよ。すでにもう決定されたので」
クソ、今から無理矢理にでも回収するか?
「無理矢理は止めといた方がいいです。一度した寄付を取り下げでもしてら、名がすたります」
だめだ、僕が苦労することは決定事項になる!
こんなはずじゃなかったのに!
「おい、レーナ!お前もこうなる事は分かっていたのか?!」
僕は憎しみを込めてレーナを睨みつける。
だが、レーナは飄々としている。
「さあ、何の事でしょうか?」
僕は机を叩くのを抑える。
絶対殺す!!!
さて、資金が増えたことで一日に提供できる数も三百から四百食に増えた。
テーブルや照明などの内装も豪華に変えることが出来て、みんなの士気も一層爆上がりだ。
一方、僕のやる気はだだ下がりだが。
僕ら作る班はパンケーキを作る練習と内装の手伝い。
接待班は内装と接客マナーについて学んでいる。
学園全体で少しずつ盛り上がりを感じてきた。
廊下や教室では作業した跡が。
放課後になると大半の生徒たちが残って作業を進めていた。
慣れない作業で怪我をする生徒も多く、保健室には行列もできていた。
校舎も、グラウンドも、校門も。
少しずつ装飾が多くなり、店舗も並ぶ。
帝都の祭りとしても人気のある催しのため、校外からも出店しに来るお店もある。
それらは全てグラウンドで店舗を構えている。
そんなこんなで、もうすぐ帝立学園祭が始まろうとしている。
明日は一話投稿




