第116話 帝立学園祭準備②
一週間後。
レシピを入手した僕らは早速作ることになった。
放課後に調理室を借り、それぞれ班に分かれて作る。
「では、まず材料の説明をします」
材料は六つ。
卵、牛乳、サラダ油、砂糖、薄力粉、ベーキングパウダー。
前世ではグラニュー糖を用いるがこの世界には無いのか？
しかしどうしてこの世界にベーキングパウダーがあるのか？
色々と細かい疑問があったが、まあ今はそんなことどうでもいい。
作り方に戻る。
ボウルに卵と牛乳、サラダ油、砂糖を入れてホイッパーで混ぜ合わせる。
そこへ薄力粉とベーキングパウダーをふるいにかけて入れる。
とろりとするまでよくかき混ぜるのが重要。
それが終わったらフライパンをしっかり温め、真ん中へと落として丸く広がらせる。
ふつふつと表面に気泡が出来始めたらひっくり返す。
両面焼き上がれば出来上がり。
蜂蜜やバターを乗せて、簡単にできる。
そこまで難しいものではない。
「ふぅ〜〜〜まあ、こんなもんだな」
流石に前世のようなふわっとした感じはないし安物の味だが、それでもおいしい。
これに果物なんかを乗せるとより美味しくなる。
僕は終わったが・・・・周りを見てみるとほとんど誰も終わっていなかった。
アルスから話を聞いてすぐに全員が作り始めたが、まだかき混ぜるところをやっている奴もいる。
大半はひっくり返すタイミングや仕方を間違えている。
そこへアルスが行ってアドバイスをする。
すでにゴミ箱には大量のパンゴーミの山が。
僕の隣で作っているナータリも苦戦している。
何故か焼いているパンケーキとにらめっこをしていたので声をかける。
「お前、何―」
「うるさいわね！タイミングを待っているから静かにして！！」
キレられた。
しばらく睨み合っていたが、ふいに焦げ臭いがし始める。
慌ててナータリがひっくり返したときにはすでに裏面は真っ黒。
とても店に出せる気がしない。
「あーー、貴方が話しかけたせいよ！」
「どうしてだ？全てお前の責任だろ」
「う、うるさいわね！・・・ていうか、貴方は何をしている？？？」
椅子に腰掛けている僕に質問してくる。
「何って見て分からないのか？作り終わったから座っているだけだ」
「はぁ！？！？！作り終わったって・・・ま、まさかアルスに作らせて自分の手柄にしたの！」
「違うわ！！！！」
この不敬女め！
「自分で作ったわ！隣にいただろ！」
「で、でもおかしいわよ。何で貴方がそんな簡単に作れるのよ！」
「それは昔から思っていました。どうしてルイ様はお菓子作りだけは得意なのですか？」
まるでそれ以外はダメダメだと暗に言いながら現れるレーナ。
「まあ、何故か、ね」
僕は指摘され、暗い過去を思い出す。
前世で結婚した女に最初に言われた言葉が、とある有名店のお菓子を作れだった。
最初は何かの冗談かと思ったが、前世の両親も相手のために作れと命令してきた。
料理はおろか皿洗いもしたことの無かった僕は、一日かけて作った。
もらった通りのレシピで作ったお菓子を食べたときの女の反応は「まずい、やり直し」だけ。
それから僕は見返してやるために、日々菓子作りをした。
本気で店を出そうかと考えるぐらいには腕は上達したが、不意に思ってしまった。
何で男である僕がこんな菓子作りをやらなければいけないんだ！と。
まあ、とりあえず僕はお菓子とスイーツを作れるといういらない特技がある。
この世界では作る必要はないのだが、一度父のプレゼントとして作ったら何故か何回かねだられた。
その後も数回作り、アルスとレーナも食べたことがある。
「ま、まさか貴方にそんな特技があったなんて・・・」
ショックを受けるナータリ。
別に僕は望んで手に入れたわけではいし。
「料理は全く出来ないぞ！」
「誇れることではありません」
すぐさまツッコまれる。
それよりも、
「おいレーナ。お前が持っているものは何だ？」
「フレンチトーストですけど、何か？」
おいおい、こいつ僕らがパンケーキを作っている間に別の物を作っていたのかよ！
「心配はいりません。ちゃんとパンケーキも作っています」
そう言って持ってきたのはパンケーキタワーだった。
一番上から滴り落ちるバターと蜂蜜、どこからか持ってきたいちごとブルーベリーをふんだんを色鮮やかに飾り付けられている。
「お前、これこの短時間で併用して作ったのか」
「はい、そうです」
クソ、ドヤ顔うざい！！！
「何かもう疲れたわ」
更にショックを受けるナータリだった。
その後、ちゃんとパンケーキを成功させたのはリリスやアレックスを含む五人。
僕らを入れて八人しか作れていないのだ。
料理をしたことがない貴族のガキの集まりだから当然か。
ルイ「菓子作りも料理も女がするもの！」
（あくまで個人の意見です。）
