Ⅱ 翡翠色の悪魔(6)
「誰かと思ったら。お前か、出来損ない」
声の主を見ると、フォーゲルと同じような青い衣に身を包んでいる。短髪だが翡翠の髪に翡翠の瞳、灰色の肌をしていた。
背はフォーゲルほど高くはなく、手は人間と同じようなものに見える。
「どこへいなくなったかと思ってたよ。心配なんてしてないけど」
フォーゲルは一言も声を発していないのに男は、一人で揚々と話を続ける。
「お前は、どうせ。廃棄されるだけの存在だからね。なんだい、怒ったのかい。あはは、そんな感情あったっけ?」
彼は腹を抱えながら大きな笑い声を上げた。
「さぁて、今日の仕事はその子で最後だ。そこをどいて貰おうか」
急に神妙な顔つきになった男は低く唸った。
争いには無縁のミルヒにも分かるほど男は、殺気立っている。
こいつはヤバいと彼女は本能で感じた。
「フォーゲル、逃げろ」
ミルヒは叫んだが、彼が動じる気配はない。
フォーゲルが「「ユーリ」」と一言、呟いた。
「おや、なんだい?」と言った男の様子からそれが、彼の名前のようだと分かった。
「子供、タチハ?」
その問いかけにユーリは満足そうに微笑み、腹をさする。
「ああ。それなら美味しくいただきました」
それを聞いてミルヒは身震いした。
男が何を言っているのか、理解したくない。
「だってそういう、命令なのだから仕方がないさ。まぁ、喰らったのは完全に趣味だけど」
「め、命令だって……?」
「そう、お前らはどうせ知らないかもなぁ。
この辺に存在している人間は、いずれすべて殲滅されるんだ。
まぁ、早いか遅いかだけで、「お嬢ちゃん」もすぐに皆に会えるよ」
ユーリは嬉しそうに笑い声を上げた。何がそんなに愉快なのか、ミルヒには分からない。分かりたくなかった。
「お喋りはここまでだ。さぁ、食後のデザートといこうか」
ユーリはニヤニヤと嬉しそうに舌なめずりをした。
勝負は一瞬で決した。
フォーゲルが姿を消すとユーリの後ろに現れたのだ。片手でその首元を持ち上げて締め上げている。
「このボクが。完成品が速さで負ける、なんて」
ユーリが苦悶の声を上げると、ミシッと骨の軋む音がして、彼はバタバタと足を打ち鳴らした。
ミルヒは見るに耐えなくなり、慌ててフォーゲルの衣を引いた。しかし、彼は攻撃の手を緩めなかった。
「もうやめろ、フォーゲル。こんな奴と同じになったらダメだ」
そう言うとようやく、困った様子でミルヒを振り返ってから男を離した。
ユーリはさっと起きあがると素早くフォーゲルと距離をとる。
「第二番、おまえは廃棄予定のはずじゃなかったのか……」
ゆらゆらと体を横揺れさせ始めたユーリは、先ほどまでとは打って変わって様子がおかしい。




