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第1話 傾国の勇者パーティー

宜しくお願いします。

 王国からの魔獣のスタンピード討伐を依頼された私達勇者パーティー。

 話によると、1ヶ月前からその前兆はあったが、王国は僅かな兵士を派遣しただけで有効な対策を怠り、結局幾つかの街は魔獣達によって蹂躙された。


 なんとか魔獣を食い止める為、最前線の街へと私達はやって来たが...


「この臭いは?」


 街には既に炎が上がっており、なにやら肉の焼ける臭いがする。


「人間の焼ける臭い...」


 隣の馬に乗る賢者のアンナが吐き捨てる。

 どうも間に合わなかったみたいだ。


「まだ生き残りが居るかもしれません、とにかく急ぎましょう」


 マリアの言葉に馬を急がせる。

 少しの差だったが、王都を出て3日間休まず来たんだ、これは仕方ない。


「カリーナだ、しっかりしろ!」


「おぉ勇者様...」


 魔獣に取り囲まれた人達を助け出す。

 私達をみた人々の目に輝きが戻る、名前を名乗るのは気が進まないが、希望を抱かせる為だ。


「マリアは街の人間にヒールを、アンナは私と来い!」


「...分かった」


「分かりましたわ」


 アンナと馬を走らせる。

 街は魔獣で溢れているので、一気に片付けるとしよう。


「随分多いな」


 斬り続けるが、中々数は減らない、既に数十匹は倒したんだけど。


「...任せろカリーナ」


 魔獣の群れにアンナが手を向ける。

 アンナはどうやら最高位の火炎魔法ぶつけるつもりだ。

 詠唱の間、私は魔獣がアンナに近づかないよう援護に回った。


「...灼熱火炎(スコーチファイア)


 アンナから放たれた炎に包まれた魔獣はその高熱に叫び声一つ上げる事なく、消し炭と化した。


「...うし」


 右手で小さく握り拳を固めるアンナ。

 普段は全く感情を出さない彼女にしては珍しい...だが気持ちは分かる。


「早く終わらせよう」


「...モチだ」


 小さく頷くアンナの口角が僅かに上がり、愛しい人の口癖を真似る。


「どうやら片付いたか」


 残りの魔獣を全て片付け、街には静寂が訪れた。


「マリア、そっちは?」


「ええ、助けられる人は全員なんとかしたよ」


 街の人達の救難に当たっていた高位回復術師(ヒーラー)のマリアが髪を靡かせながら歩いて来る。


 すっかり綺麗になったマリア。

 三年前の彼女と別人の様...いやマリアだけじゃない、私とアンナもだ。

 彼に出会う前の私達は毎日を絶望しながら過ごしていたんだから。


「助かったのは400人程です。

 死んで直ぐならもっと沢山蘇生魔法で助けられたのですが」


「そうか、マリアはよくやったよ」


 この街には約千人が暮らしていると聞いていたか、半分以上死んでしまったか。

 それでもマリアの蘇生魔法が無ければ、もっと死者は増えていただろう。

 マリアの使った蘇生魔法は世界でも数人しか使えないのだから、文句はあるまい。


 生き残りが居ないか街中をくまなく探していると、数十人の死体が折り重なりように倒れていた。

 街を逃げ出そうと外門に殺到し、詰まった所を魔獣に襲われたんだろう。


「...一応探すか」


 壁に押し潰されている死体を剥がして行く。

 体当たりでもされたのか、死体の損傷が激しい。

 苦悶の表情は生前の最期が凄惨だった事を感じさせた。


 生き残った街の人々も加わり、死体を1ヵ所に積み重ねていく。

 マリアは死体を確認するが、治癒魔法を使ってないところを見ると、手遅れなのだろう。


「...ん?」


 死体を退けていたアンナの手が止まる。

 壁際の地面で倒れている数人の男達。

 鎧を身に纏い、手には血の付いた剣が...


「派遣されていた王国兵ね。

 殺到する街の人達を脅して逃げられない様にしていたのか」


「...街の人を魔獣の餌にして、自分達だけ逃げるつもり...奴等は腐っている」


 アンナは憎悪の目で死体を睨む。

 これが王国兵の本性なのだ、奴等には国民を守る気持ちなんか毛頭無い。


「兵士の隊長は一番に逃げました...」


 生き残りった街の男が呟いた。


「そうみたいね」


「ご存知でしたか」


「ええ街道で会ったわ。

 馬に乗って逃げていたので、処罰しました」


 逃亡は重罪だから消し炭にしてやった。


「...私達を助けるつもりなんか最初から無い癖に...女達を」


「そんなもんよ」


 奴等は威張り、女達を奪うしか能が無い。

 今さらだけど王国は根本から腐っている。


「...アァァア」

 

 呻き声を上げる三人の男、まだ息のある奴が居たのか。


「...どうするカリーナ?」


 そう聞くけどアンナ、三人は王国の兵士だよ、助ける価値があるかしら?


「随分と好き勝手やってたみたいです。

 街の女達に乱暴していた証言が取れてます」


 マリアも三人を助けるつもりは無いか。


「...魔獣が街に迫っているので要請したのに、派遣されて来たコイツらは、役目を果たすどころか...私の妻や娘達までを...」


 男は涙を溢す。

 兵士にしてみたら、命を賭けるつもりなんか最初から無かった。

 魔獣が来るまで街で好き勝手にやり、迫って来たら一番に逃げ出す算段だったのだ。


 計算外だったのは、魔獣の進行が予想より早かったのと、私達が派遣されて来た事かな...


「処分して」


「...当然だ」


「報いは平等に」


 同じ考えのアンナ、そしてマリアも。


「...楽には逝かせない」


 アンナの手から放たれる火炎。

 先ほど魔獣を倒したのと違う、火の温度、勢い、これでは直ぐに死ぬ事は出来まい。


「あらあら、これじゃ苦しいでしょうね」


 マリアが治癒魔法を掛けると、兵士達の叫び声が上がり始めた。

 治る傷と火炎による激しい苦しみ。

 奴等の着ていた鎧が赤黒く焼け、兵士の身体を焦がし続ける。


「そろそろ良いわ」


「...だな」


「ええ」


 火炎の勢いが増し、兵士の身体が勢い良く燃え始める。

 マリアが治癒魔法を止めた事で断末魔は直ぐに聞こえなくなった。


「行くか」


「...そうだな」


「帰りましょ」


 街に戻り、生き残りの関係者から依頼完了のサインを貰う。

 ついでに兵士が全て亡くなっていたので火葬した一文も加えた。


「「「ありがとう...ございました」」」


「いいえ、奴等から受けた傷は癒せませんがどうか絶望なさらぬ様」


「「「はい...」」」


 若い女達が涙を溢す。

 彼女等は私達が兵士を燃やしていた間中、憎悪の眼差しを向けていた。


 翌朝、私達は街を出た。

 早く王都に戻り、報告を済ませて彼に会うの。


「あの街も終わりね」


「...当然だ」


 マリアとアンナの言葉に頷く。

 近いうちに生き残った人々はあの街を捨てるだろう。

 畑は荒らされ、家も滅茶苦茶に壊されたんだ。

 それでも王国は彼等に税を強制に徴収するだろう、そうなったら逃げるしか選択肢は無い。


「また弱体化しますね」


 小さく微笑みを浮かべるマリア。

 私もだが、みんな王国に対する忠誠心なんか、とっくに捨てている。


「私が滅ぼしたいくらいだ」


「...私も」


「私もですわ」


 心は一つ、本当はそうしたいが出来ない。


 その力はあるのだ。

 国内の兵士が束になっても敗けはしない自信もある。

 しかし愛しいあの人...彼が奴隷として王国の運営する娼館に囚われている限り、私達は逆らう事は出来ない。

 反旗を翻したら、忽ち彼は殺されてしまう。


 五年前に神託された勇者と賢者、そして大魔術師それが私達。


 ...それは名誉だけの名ばかりなのだ。

 各地の争乱地域に無理矢理派遣され、使い潰されるだけの存在。


 それだけでは無い。

 身体を貴族達に(けがさ)れ薬漬けにされていた。

 三年前に薬物中毒とセックス依存で廃人寸前だった私達を救ってくれたのが彼なのだ。


「早く...」


「...そうだな、やっとあの方に会える」


「楽しみです」


 私達はあの方が居る王都へと急いだ。

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