初日の出来事
とりあえず書いてみた。
「なんだ!?」
不思議と意識ははっきりしたまま、普段は絶対に通らない道を歩いていた時に衝撃を感じた。落雷?何か大きなものに突っ込まれた?なんて考えているうちに目の前がシャットダウンした。
「あー。こんなん小説やアニメで見たわ・・・」
実際に自身に起きると意外と自然に受け入れられた。そう、転生である。目の前に広がる明らかな異国。ただ、自分が見ていたのとは違い、スマホを使用している若者や高いビルもある。見たことのある車も走っている。
「うーん。転生ってか、転送かな。」
ガラスに映る自分を見ても変わりない。
40歳のおじさんが家を出たままのテニスウェアを着てラケットバッグを背負っている。
スマホも使える。
「場所は・・・グァム!?」
うん。意外と日本から近い。これ、自宅に戻ったりすることが出来るのか。いやいや、そうはうまくいかないだろうな・・・
幸いタモンビーチ側の大通りにいるようなので、すぐに旅行会社の店舗を訪ねた。
「日本ですね。チケットをお取りします」
うーん・・・スムーズに事が済んでいる。転送の意味とは・・・
あと、不思議と言葉は現地の人も共通の言語をつあっていることに気づいた。
続けて前髪のくるんと決まっているお姉さんが手のひらサイズの機械越しに私を見ながら言った。
姉「お支払いのLPが足りていないようです。」
自分「LP?円やドルでは無くて?」
姉「お客様、円やドルとは何でしょうか?」
自分「すいません。家に忘れてきてしまいまして・・・」
姉「お客様・・・御冗談はおやめ下さいませ。予約の件ですが、キャンセルをさせて頂きます。LPをお溜めになり、お越しくださいますでしょうか。」
自分「あ・・・分かりました・・・」
その場の空気に耐えられなくなり、すぐに店を出た。
幸い、元々暮らしていた世界と少し違うことがあると、すぐに腹落ちできた。ただ、何が違うのか、全部は分からず、これは困った。支払いのLP?なんだろう。
「短期のお仕事 日当6000LP(諸手当込み)」
店を出てすぐ隣のコンビニエンスストアに張り紙があった。
「うーん・・・ここで仕事をしてお金を稼ぐのもいいけど、そもそもどうやって来たかもわからない人間は雇われるのか・・・」
今までの自分の感覚だと、不法就労のような感じがあり、とてもこの地で仕事をできるとは思えない。どうしたものか・・・
そうこうしているうちに日も落ちてきた。宿を探さないとって思ったが、通貨?LP?が無い。
警察署に保護してもらう?いやいや、ここまで来た経緯を説明できないぞ。
野宿という言葉が頭を過った。幸い、グァム島のタモンビーチはホテル棟が多く、夜中も明るい。
しょうがない。ビーチで一晩過ごそう。5分ほど歩き、少し周りから陰になる大きな木の裏に陣取った。
「ここをキャンプ地とする」
なんて有名TV番組の冗談も言えたが、カラ元気もいいところだ。
自分には家族が育てていた家庭菜園の野菜たちしかない。仕事も個人経営でテニスショップをしていた。親族一同、幼いころから見たことがない。両親は駆け落ちで北海道から出てきて、山梨に越してきた。友人?いると思う?笑
少し休んで涼み、ふと今の持ち物を確認したいと考えた。
前の世界では丁度テニスサークルのお姉様にテニスを教えるために家を出たところで、近道の裏通りを通った際の出来事だ。着ている洋服以外はラケットバッグに入ったテニスラケット、テニスシューズ、タオルその他小物、以上。
うん。明日どこかに保護してもらおうと思い、木にもたれかかったまま意識が無くなった。