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なろうラジオ大賞4

今日の味噌汁の具材はおふだ

 我が家の味噌汁は毎日具が違う。


 シャキシャキのほうれん草。

 プルプルの豆腐。

 ふわっと香るねぎ。

 ナス、ごぼう、にんじん、だいこん。


 様々な具材が朝の味噌汁を彩る。

 出汁もカツオと煮干しと昆布からとっていて、味わい深い。


 こんなにも美味しい味噌汁を毎日飲めるなんて、俺はとっても幸せだ。


「今日の味噌汁はなんだー?」


 しりをぼりぼりとかきながらパジャマ姿でリビングへ行くと、すでに朝食が用意されていた。


 鮭の切り身に納豆、おひたし。

 そしていつものお味噌汁。


「見れば分かるでしょ」


 台所で洗い物をする妻はそっけない返事。

 まぁ……いつものことか。


 どれどれ?

 うむ。


 今日の味噌汁の具材はおふだ。


 ねぎとワカメも入っている。

 ふんわりと立ち上る湯気。

 味噌汁の良い匂い。


「ずずずずず……」


 味噌汁を一口すする。

 うむ、今日もうまい。


 俺は味噌汁にご飯を入れ、納豆を乗せてかき混ぜる。

 ぐちゃぐちゃにして食べるのが俺のスタイル。



 がつがつ、はむはむ、はふはふ。



 納豆のねばねばをまとった米に味噌汁の味がしみ込んでいてうまい。

 ずぞぞぞとすするように飲み込んでいく。


 食べては具材を足す。

 ごはんを入れつつ、鮭を少しのせ、おひたしも投入。

 ぐちゃぐちゃかき混ぜて、ずぞぞぞ。



 ずぞぞぞぞぞ。



「今日もうまかったよ、ごちそうさん」

「……はい」


 朝食を終えた俺は着替えを済ませ、元気に仕事へ。

 味噌汁のおかげで今日も元気いっぱいだ!




















 ようやく行ったか。


 夫が出て行ってから、ようやく私の食事の時間。

 ふぅと息を吐いて席に着く。


 私は鮭を少しずつほぐして、白いご飯に乗せて一緒に食べる。

 食材は一つずつ、少しずつ味わうべきだ。

 全部一緒に混ぜたらかわいそう。

 せっかくの命が無駄になる。


 味噌汁に何もかも入れてぐちゃぐちゃにかき混ぜる夫。

 その食べ方をやめてほしいと本気で注意したけど、逆切れされて何を言っても無駄だと気づいた。


 あの醜悪な食べ方を見ながら、一緒に食事なんてできない。

 出来立ての味噌汁じゃないとダメだといって怒るので、夫の起床時間に合わせて調理をする毎日。


 正直、もう我慢の限界だ。

 早くこの生活を終わらせたい。


 だから……夫を呪ってやることにした。


 ネットで出会った呪術師から購入した呪いのおふだ。

 でも、どう使えばいいか分からない。

 だから食べさせることにした。


 毎日少しずつ、小さくちぎって味噌汁に入れている。

 少しずつ、少しずつおふだの切れ端を食べる夫。


 何も知らずに、バカみたい。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 正直呪いのおふだでもこの旦那は効かないと思う。そう思うと妻がやってるのもささやかな反抗って感じで可愛く思いますよね。ホラーじゃないのでは?
[一言] 夫は作った妻に感謝を伝えている。妻もきちんとした朝食を毎日作っている。 結構幸せな家庭だと思うけどな。互いにもう少し配慮・寛容さを持てば仲直りできそう。
[良い点]  平仮名のままだと複数の意味に取れて遊べて、いじり甲斐がありますよね。  そのままお麩で通すのかと思っていたら……何の呪いなんでしょうねぇ、気になる。 [一言]  食事マナーの違いは絶縁レ…
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