10.解釈と進路
爆発の煙が晴れていく。
「どうだ、、」
凝視するヘデラ―。
そこに宙を見上げた姿勢の
"静躯鮫"の巨大な体躯が露わになる。
その真ん中には、ぽっかりと二つの穴が開いている。
「やりましたわ、! 」
口をだらんと広げ白目を剥いて
マイルドたちの方に倒れ込んでくる。
ドシィインン!!
横たわり痙攣している。
「危機一髪だったな、、」
「マイルドちゃんの"カード"がなければやられていましたわ」
「"静寂を破る者"とか言ってたか、、? 」
「光った瞬間に
"静躯鮫"の体表が崩れ始めておりましたわ」
「よくわからないですけど使えそうだったので
使ってみたんです!このテントウムシちゃんのおかげですっ!」
「"静躯鮫"の体表があんなに脆くなるなんてな。
こんな伏兵がいたとは。
運がわるいのは"静躯鮫"の方だったかもしれねえ」
「謎の多いモンスターでしたから、、
倒せてよかったですわ。」
三人はホッとため息をつきながら
互いを褒めあって危機を乗り越えたことを喜び合った。
「マイルドちゃんはこれからどこかへ向かうのかしら?
わたしたちはもうホームに戻ろうと思うのだけれど、、」
トゥアイビーは装備をまとめて出発の準備をしながらそう聞いた。
「まだまだ探索したいので
もうすこし奥までいってみようとおもいますっ」
まだ高揚感が抜けないのか、
無邪気な笑顔でマイルドはそう答えた。
「駆け出したらとまらないって感じだな」
「奥まで進んでも"静躯鮫"ほどの
モンスターはいないと思うわ」
最序盤のフィールドである"静森"はある程度攻略が進められている。
二人の情報は真実だろう。
「ありがとうございますっ!
それにテントウムシちゃんもついてるのできっとだいじょうぶですっ」
「あぁそうみたいだなっ
興味本位で近づいたらこんなことになるなんて、、
まったくこの世界はオモシロい」
「またどこかで会ったらそのときはよろしくお願いしますわね!」
「こちらこそよろしくお願いしますっ」
──────────
森が深くなってきた。
ヘデラ―とトゥアイビーという二人組のプレイヤーと別れてから少し経つ。
あてはないが歩いてきて
マイルドはいまここにいる。
出会いから驚きの連続であまり意識していなかったが
二人とも中級レベル以上の実力者であったのだろう。
ヘデラーが胴体に装着していた鋼製の鎧はなかなか高価そうであったし、
背中に背負っていた楯はモンスターが大きすぎたために使うことはなかったが印象に残った。
トゥアイビーにしても薄緑の衣装は戦闘においての身軽さを与え
なによりスラリと綺麗な彼女のシルエットを美しくみせていたのだ。
どこで手に入れたのだろうか?ショップがあるのだろうか?
つくったのか?つくってもらったのだろうか?
ダンの装備も格好良かった。
まだまだ初心者丸出しな恰好の自分をみて
はやく彼ら彼女らのように
つよく美しい恰好を手に入れようと心に誓ったのであった。
"静森"というだけあって
奥まで進んでも音のない空間が広がるばかりだ。
本来はそういうフィールドなのだ。
そうしてさらにしばらく歩いていると
いつの間にか足元に水が静かにもちょろちょろと流れ始めていた。
小川のように先へ延びるその水の流れに
マイルドはわくわくを加速させた。
「静かな森一面もそろそろ退屈してたし、、」
この水が流れる先に何があるのか
興味の方向が見つかったところで
マイルドの進路は定まった。
肩には白に赤が映えるテントウムシちゃんが
ちょこんと乗って揺れている。