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『堕羽』 より
私もただ、羽根が降る空を見上げていた。
街には、闇のような黒色の、夥しい数のその羽根が、しんしんと舞い落ちてくる。
その光景は街の営みを遮って、次第に空気を仄暗く染めた。
つい先刻までは、いつもの空で、いつもの空気で、いつもの日常であった。
しかし、それはすっかり様子を変えて、非日常がそこには広がっている。
立ち止まる人々の頭上を、立ち止まる建物同士の間を、黒がだんだんと埋めていく。
悍しく、それでいて、神々しい。
おそろしく、それでいて、うつくしい。
生まれて初めて得たこの感情が、降るそれと同じようにして、黒く静かに積もっていった。
ひらひらと、ふわふわと。