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「――――これでインタビューを終わります。ありがとうございました」
「こちらこそありがとうございました」と僕が返事をすると、彼女たちは照れくさそうに微笑んだ。でも本当に、熱心に話を聞いてくれたことが素直に嬉しかったのだ。
そんな些細な喜びに浸りながら誘導されて教室を出ようとしたところ、後ろからつんつんと肩をつつかれた。
「少しだけ、いいですか」
振り返ってみれば、正体は不思議な存在感を僕の中に刻み込んだ、あの少女だった。
「あの、間違ってたらすみません。【 】さんですか?」
僕は目を見開いた。どうして知っているのだろう。こんな子、知り合いにいただろうか。いや、知り合いに女子高生なんて、と考えていると、すっと一つの封筒が差し出された。
「これ、どうぞ」
彼女の奇怪とも言える行動に、僕の頭はさらにはてなマークで埋め尽くされた。しかし、次の言葉で、僕はこの手紙を黙って受け取らざるを得ない状況になるのだった。
「一ノ瀬夕陽さんからだって言ったら、受け取ってもらえますか」
彼女の真っ直ぐな瞳に、僕は完全に射抜かれてしまった。恋に落ちたとか、そういうのじゃなくて。僕と彼女のことを知っていて、それでいてあの話を真っ直ぐに聞いてくれて、なんて強い子なのだろうと、そう思ったのだ。
「……君、名前は?」
「佐伯千鶴です」
佐伯、佐伯といえば、と記憶を辿っていくと、あの喫茶店のことが思い浮かんだ。
「もしかして、あそこの喫茶店の――」
「娘です。【 】さんとは直接お会いしたことはありませんが、夕陽さんからずっとお話を聞いていたので」
そこまで聞いてなるほど、と僕はようやく現状を理解したのだった。そうして、そんな巡り合わせがあるのかと感嘆した。
と、僕が一人うんうんと心の中で頷いていると、他の子がこちらに小走りで寄ってきた。しまった、少し引き止めすぎたかな。
「千鶴遅いよ。てか、何してたの?」
「もしかして告白? 初対面でやるねぇ」
「そんなわけないでしょ、もう」
「失礼します」と彼女は再び礼儀正しくペコリとこちらに向かってお辞儀をして、彼女は友人の中に混ざって真っ直ぐに廊下を歩いていった。