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「それは、その、ごめんなさい」
「こっちこそごめんね、こんな話を期待してたわけじゃなかっただろうに」
踏み込みすぎたことをまずいと思ったのか、はっと息を呑んだ様子で、彼女たちはばらばらに目を逸らした。話すと決めたのは僕なのだから、彼女たちは気負うことなんて何もないのに。
「死んでいる、なんて言ったけど、まだ死んだわけじゃないんだ。彼女がそういう言い回しをしていたから、そういう言い方をしただけで」
そこまで言うと、今度は僕が言葉に詰まってしまった。ああ、なんと惨めなことか。
「ええと、ちゃんと説明しないとね。彼女はとある事件に巻き込まれて、意識不明の状態なんだ。あのー、そう、植物状態ってやつ」
もう何を言っても情けない言い訳にしか聞こえなくなってしまうのだから困る。続けるべき言葉が見つからなくて、僕は頭を掻いた。すると、右端の子が、こう声をかけてくれた。
「さっき、自分にとって大きな存在だっておっしゃってましたよね。今もそう思ってもらえているなら、その方も嬉しいんじゃないでしょうか。私は、そういう想いって当たり前に見えるけど大事なことだし、素敵なことだと思います」
その言葉が、やけにすっと胸にしみた。僕の心は完全に諭されてしまったようだ。気がつけば、「そう言ってもらえるとありがたいよ」なんて、自然と口にしていた。
「すみません、ちょっと話が脱線しすぎたので、形式的なものに戻らせてください。ほら、司会役が頑張ってくれないとうちらのワークシート埋まらないよ?」
「え、待って、それはまじでやばい」
急に話をふられた進行役の女の子は、あわてて手元にある紙をぺらぺらと捲り始めた。
「えーっと、そう、ここからだ。では、カメラマンの仕事をしていて大変だったことがあれば教えて下さい」
「はい、大変だったことはね、――――」
その後のインタビューに関しては、驚くほどスムーズに進んだ。今どきの高校生はなんて対応力が高いのだろうと、思わず感心してしまった。その一方で、なぜだかわからないけれど、右端の少女の存在がちらちらと頭から離れなかった。