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13冊目 3ページ

 外へ出てまず、自転車に乗る。その直後に、行き先の検討をつけなければならないことを思い出し、スマホを手にした。そんなとき、段々と日が落ちる中、手をつないだ親子が幸せそうに歩いているのが僕の視界に写った。なんというか、その様子は僕の今の心境と真逆すぎて、別次元のことのように思える。まあ、僕の心の内なんて知る由もないし、仕方がないだろう。なんていったって、今日はクリスマスなのだから。

 その瞬間、脳みそのどこかの引き出しが、がらんと音を立てて開け放たれた。十二月二十五日。ああ、なぜ忘れていたのか。僕はすぐにスマホを起動し、インターネットで検索をかけた。

「そんな、まさか、ね」

 信じられないけれども、今はこれ以外に何も手がかりがない。もし、もし仮に僕の推測が当たっていたとしたら、それは僕にとって世界がひっくり返るような大問題だ。導き出された場所へ向かい、僕は力いっぱいペダルを踏み込んだ。

 あれは、みゃーこが死んでしまってしばらくたった日だったか。僕が、彼女の写真を取らせてほしいと頼んだ日。あの日、学校中を駆け回ってようやく見つけた彼女はいったい何をしていたか。僕は後で調べようなんて考えておきながら、忙しない日々に流されて、今の今まで忘れていた。あの時頭にメモしたキーワード三つを検索ボックスに打ち込めば、その記事はいとも容易く見つかった。

 今から十一年前の十二月二十五日。一ノ瀬朝陽という少年が、自宅から持ち出した包丁で女性を刺し、殺害した。当時、彼は十五歳という若さだった。自宅から凶器を持ち出していたことから、計画的犯行と見られている。しかし、被害者の女性と一ノ瀬朝陽との間には面識がなかった。その上、逮捕後の事情聴取での供述でも、事件と深い関連性のある情報は掴めなかった。その後、裁判で懲役十三年という判決が下された。

 名字が重なるなんて、それ自体はそんなに珍しいことでもないけれど、仮にこの少年が彼女の身内であるとすれば、何かしらの関連がある可能性は高いだろう。

 そして、この事件が起きた場所が、ここ。我が家から自転車で一時間ほどの距離にある、海沿いの公園だった。

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