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13冊目 1ページ

 目が覚めて、窓を開ける。しんとした空気が胸にすっと染み渡る。朝が来たのか、なんてしょうもないことを考える自分がいるのは、なんだか不思議な感じだ。

 そんな典型的な良い朝を体験したにも関わらず、僕は二度寝をかましていた。朝早く起きて、一時間と少しを散歩に費やして、課題の確認をして。端的に言えば、やらなければならないことがもうなかったのだ。彼女と違って、長期休暇の課題は前半に終わらせるタイプの性格なのである。僕だって、たまには怠惰の境地を体験してみたい。そんなちっぽけな欲望は、僕の意識を引きずり込むには十分だったらしく、時計を見れば午後四時十五分。昨日の疲労が残っているからか、昼食後しばらくしてから爆睡してしまったようだ。まあ、休日だし、たまにはいいだろう。

 携帯の電源をいれたところで、新着メールがあることに気がつく。通知音で目が覚めないくらいには、僕は熟睡していたらしい。成長期の男子高校生たるもの、こうでなければ、なんて思って一人頷く。

 ロックを解除して、メールボックスを開いたところで、件名を目にした僕の動きは停止した。確かに目は覚めていて、脳も正常に働いているはずなのはわかっている、はずなのだが、それでも自分の目を疑った。微かに震える指先でそっと画面をタップする。

 だって、そんなことってありえるだろうか。ありえなかったら、僕の頭が寒さでやられてしまった、以外の答えはないのだが。なんだか心臓がバクバクして、背筋がソワソワして少し丸くなる。驚きのあまり、僕は口をはくはくと動かすしかなかった。

 そうだ、彼女に伝えなければ。きっと、たいそう喜ぶことだろう。なんたって、彼女がモデルなのだから。まあ、話せる相手が彼女しかいないというのも、あながち間違いではないのだけれど。でも、汗がじわじわ染み出してきて、どう体を動かしたらいいのかもわからず、握りしめた手の力すら信じられないような心理状態になっているのだけは確かだ。と、まあこんな感じで、いつもの思考の三倍くらいのスピードで喜びという感情が押し寄せる。こんなに喜びを感じたことが、今までの人生であっただろうか。

 要するに、僕としては、とても、大変、非常に、まあとにかく、珍しく浮かれていたのだ。

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