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翌日は、気持ち悪いほどの快晴だった。雲が一つもなく、ただ水色の絵の具で塗りつぶしたような空だった。
学校は、いつも通り行った。授業も普通に受けた。ショッキングな出来事があったことは、決して学業をおろそかにしても良い理由にはならないと思っているからだ。今までも、これほどではなかったけれど、悲しいことはあったから、対処のアルゴリズムは僕の中にしっかりと埋め込まれている。そのシステムは正常なまま残っていたようで、体は自分の意思に反抗することなく動いた。無情な人間だと思うだろうか、なんとでも言えばいい。
しかし、一つだけ対応できなかったことがあった。つい、いつもの癖で、あの駐車場に来てしまったのだ。あれが嘘だった証拠があるのではないかと、僅かな希望を探して、無意識にこの場所を訪れていた。なんて僕らしくないのだろう。まあ、それも虚しく、僕は現実を受け入れざるを得なくなったのだが。ここに来て、僕の日常の欠片が一つ壊れてしまったことを、嫌でも理解させられることとなった。
目を閉じると、昨日の光景が目の前に広がる。ぐったりと横たわった体。水が滴る毛並み。開かない目。黒く変わっていく血の色。こんなにも鮮明に浮かんで、ひどく頭にこびりついているはずなのに、涙一つ出てこない。やっぱり僕は、ずっと変わっていなかった。まだ生まれていなかった。
もう帰ろうかと思い始めたとき、控えめな革靴の音が聞こえた。いつからいたのだろうか、彼女が眉尻を下げて笑っている。
「あ、えーと、ごめんね、昨日は」
困ったようにそう言うから、僕は「別に」としか返せなかった。彼女は、また「えへへ」とわざとらしく笑う。
彼女はいったい何に対して謝ったのだろう。泣いてしまったことか、それとも強引に僕を連れ出したことか。
一瞬の沈黙で、彼女の表情は悲しみに覆われた。だがそれは、今まで見たこともない色をしていた。青やら黒やら赤やら、様々な色が繊細に混じり合ったような色だった。しかしまた、無理矢理な笑顔が表れる。
「まさかあんなことになるとは」
「うん」
「【 】くんと出会うきっかけだったね」
「そうだね」
悲しみを必死に取り繕うような、中身の無い会話が飛び交う。そして、止まった。僕は不器用だから、どうしたら良いのかわからない。すると、彼女は言った。
「みゃーこ、死んじゃったね」
そして、笑顔のまま、涙をポロポロとこぼし始めた。溢れ出た涙は、太陽の光を受けて宝石のように美しく輝いた。