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「――以上が今回のインタビューの説明となります。では、改めてよろしくお願いします」
進行役を担ってくれている女子生徒がぺこりとお辞儀をすると、あとの三人もつられたように頭を下げた。いけない、懐かしさに浸りすぎてしまったようだ。僕も少し遅れてお辞儀を返す。
「まず、カメラマンという仕事に就こうと思ったきっかけを教えて下さい」
「きっかけかぁ。えっと、僕のは他の方みたいに立派なものじゃないんだ、子供の頃からカメラが好きだったとか、そういうやつじゃなくて。ただ、強いて言うなら、ある賞をいただいて、それが初めての出来事で特別嬉しかったものだから、もっと夢中になってもいいんじゃないかって思えたのがきっかけかな」
僕がそう答えると、なぜだか彼女たちは目を輝かせた。
「それって、あの、うちの高校の近くで撮影されたやつですよね」
「夕日がバックで、女の人が笑ってるやつ!」
若者の勢いはすごいものだ。僕は少し押されながら「ああ」とか「ええ」とかそんな言葉を発した。
「まさか知られているなんて思いもしなかったよ。ちゃんと事前に調べてくれてたなんて、嬉しいです」
「いえいえ、そんな! 私たち前からファンで、ずっとSNSとかで作品見てたんです。どの写真もすごくグッとくるから、だから、感極まるっていうか、ああ、もうなんて言ったらいいのかな……」
司会役の子があまりにも興奮した様子でそう言うので、周りの子が彼女をなだめ始めた。なんとも微笑ましい光景だ。もちろん、僕だってファンだと公言してくれたことに浮かれていないわけではないけれど。
「え、えっと、聞きたいことがあるんですけど」
僕が女子高生たちにほんわかしていると、いや、決して変態とかそういうのじゃないけど、少し落ち着いた様子の別の子がとんでもない爆弾を落としてきた。
「あの女の人って、もしかして彼女さんですか?」
その言葉に、僕は言葉が詰まる。こんなこと、この子達に伝えてもいいのだろうか。いや、話したくないわけではないが、こう、重たいというかなんというか。
「あー、彼女ではないけど、一応、僕にとって大きな存在ではあるかな」
不自然な間のあと、言葉を濁しつつ、そう答えた。