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「やっばい、心臓めっちゃバクバクしてる」
「まさかアポとれるとは思ってなかったしね」
「ねぇ、ほんとにアカツキさん来るんだよね⁉」
「なんかちょっと緊張してきたー」
そんないかにも学生らしい声が聞こえた方へ、僕は歩みを進める。角を曲がると、四人組の女子生徒が待っていた。足音に気がついたのか、生徒たちはふっと顔を上げた。
「えっと、こんにちは。職業インタビューで来たんですけど」
そう声をかけると、生徒の一人が「あ、あってます! こっちです」と慌てたように返事をくれた。なんと初々しいことか。自分の高校時代とは正反対と言っても過言ではない声色に、僕はクスリと笑ってしまった。
ガラリと扉を開けて、空き教室に足を踏み入れる。少し懐かしさを感じて、机をするりと撫でながら、言われた席についた。
「この度は、職業インタビューに来ていただき、ありがとうございます。今日はよろしくお願いします」
代表の子だろうか。たどたどしく、少し早口でそう述べられた。あまりにも緊張しているようだから、できる限り穏やかな笑みを添えて、僕は言った。
「そんなにかしこまらなくてもいいよ。答えられることならなんでも答えるから、遠慮なく聞いてください」
それを聞いた生徒たちは、「ありがとうございます」と適度に緩んだ声で答えた。効果は抜群だ。
「まず、インタビューについて説明させてください」
一応事前に説明は聞いていたのだが、ここでもちゃんと説明してくれるらしい。最初の高い声を聞いたときは、「おじさん」なんて馬鹿にされたらどうしようかとちょっと緊張していたが、根は真面目でしっかりした子たちなのだろうと、招かれた僕のほうが安心してしまった。
僕は今、職業インタビューという名目で母校にやって来ている。招待してくれたのは、高校二年生の彼女たちだ。その職業というのは、カメラマンである。高校卒業後、僕は無事受験期を通過し、そこそこの大学へ進学した。その後、僕はバイトで経験を積みつつ、アマチュアのカメラマンとして活動しているのだ。