SCP-062-jp 『生存権』
「えー、君たちは新しくここのエージェントとなった。世界の命運を握る重要な役目を持っている。」
私の名前は...面倒だしT、T博士と呼んでくれるとありがたい。今日は新しく入ってきたエージェントどもにSCPの説明などをしろと上から言われた。まったく、そういうのは他のエージェントに任せとけというのに...。
「えー、まずこの資料を見てくれ。これがSafe、言うなれば暴発も何もしない完全に制御された核爆弾だ。次に、これがEuclid、シュレディンガーの猫の核爆弾バージョンだ。そして、Keter。一番危険で、ランダムにテレポートして常時爆発しているようなものだ。ここで重要なのは爆発するかどうかじゃない。収容できるかどうかが大事なんだ。油断をしていたら首を掻っ切られる、だけじゃすまない可能性が高い。気を付けてくれよ。最後に紹介するのが、Neutralized。無力化されたオブジェクト達だ。実際、これは財団の不手際によるもので、目指すものではない。少なくとも原則は確保・収容・保護だ。ただ、682は別な。殺せそうなものを見つめたら即座に報告してくれ。即座に実施する。まぁ、話は逸れたが...これからエージェントとなる君たちに私の勇士を最後に見せようと思う。それがこれSCP-062-JPだ。これは元Keter、現Neutralizedだ。」
そう告げるとエージェントたちがざわざわとしだす。
「Neutralizedって目指すもんじゃないんだろ?」
「あの博士財団の意を無視したのか!?」
バンッ!と机を叩く。するとエージェントたちが静かになる。
「私だってねぇ、最初はあんなので無力化されるなんて思わないじゃないか!言いくるめただけで無力されるとか、他のKeterと比べてもあっけない終わりなんだからさ。」
いけない、私としたことがムキになりすぎてしまった。落ち着かないと...。
「おっほん、話を戻そう。まず、俺が先立つ前に一次と二次の派遣隊がいた。内部から攻撃するのと外部から攻撃するという二つだ。まず、このSCPの外見だが、鉄塔だ。その上に街みたいなものがあり、そこに裁判所がある。そして、その周りに文字が入るものがあればキャリアとして判決内容が入る。まぁ、いったん話を戻して、鉄塔だが、壊せないというのがわかっている。どうしてそう考えるか、3つの例をあげよう。」
1.重機による解体:何一つ傷もつけられず失敗。
2.爆破による解体:同じく傷はつかなかった。少し離れたところで爆破が発生。
3.土台ごとの移動:破壊,破損は不可能
「まぁ、馬鹿みたいに固いんだ。これは、よくあること。日常茶飯事と言っても変わりない。そして、このSCPだが1番の面倒なことがこれ。裁判だ。」
あれは本当に怖かった。今思い出してもちびっちまいそうだ。
「あいつらは、あることないこと、常識がずれているんだ。だから、あいつらは肉体の生存権の侵害と言い処刑することがほとんどだった。あと、進行の妨げをすると法廷侮辱罪と言われ肉体を消される。まぁ、この人生を送っていればよくあることさ。」
あんな化け物と隣り合わせの生活を送ってたら否が応でもなれるってものだ。まったく、嫌なこともあるもんだ。
「俺は、その次の第3次派遣隊として、たった3人で行くことになったんだ。俺と、隊員2名だけだ。バカみたいな話だろうが、ここでは当たり前みたいなもんだ。あのO5の野郎がぁ!クソっ、クソっ、クソォォォオ!」
―――[関係ない話なのでO5-■■の権限で検閲されました]―――
「すまない...。熱くなりすぎた。話を戻そう。端的に言えばあのSCPの野郎が言うことが気に入らなかったから、私がどうして生にしがみつくか、長ったらしく、そして、合理的に説明し続けた。とても驚いていて、今思えばとても良い娯楽だよ。そして最後、人殺しをし続けた奴らを訴えたんだ。
【上告します】ってね。
そしたら、一次二次の奴が一気に来たんだ。非常に驚いたよ。裁判官や書記などの職であるであろうあいつらが、一瞬で血の海さ。その後、その街が霧の様に消えてったんだ。さすがの俺も死ぬと思ったよ。全速力で逃げた。入口である鉄塔までね。そこからは、鉄塔にかけられた梯子を下りてったんだ。その途中で、蓋を閉じた。攻撃が鉄塔の外まで行かないようにね。蓋を閉じ忘れたらここも絨毯爆撃みたいになってるかもな。もし、この鉄塔を見たいのならこのサイトの中心に行くといい。ここは、あいつのせいで買収してしまった実に忌々しい場所だ。ここの中心にあるから今日の間なら見に行ってもいいぞ。じゃあ、これで終わり!あとはチームごとに分かれてそれぞれ博士と共にサイトを見回ってくれ。俺はこれから寝るから。楽しい財団生活を新人エージェント君。」
報告書より一部抜粋
SCP-062-JP 【生存権】
オブジェクトクラス: Keter → Neutralized
説明: SCP-062-JPは、広域に及ぶ致死性の認識災害です。
収容手順
SCP-062-JPはその大規模な影響範囲から、完全な封じ込めは困難であり、影響範囲から一般市民を遠ざけることに重点が置かれています。主な対応策として、キャリアの多発地帯であるSCP-062-JP-1周辺の土地を、財団傘下の企業に可能な限り買い取らせます。買い取った土地には、高層マンションなどの大型施設の建造を理由に、可能な限り騒音を発生させ、近隣住民の退去を促します。また、当該地域の送電施設を抑え、定期的に1時間から2時間の停電を行います。これにより電子機器の使用頻度を下げるとともに、当該地域からの退去を促します。同時に、SCP-062-JP-1を中心とした公共の文字案内には、外国語の併記などで可能な限り空白を減らします。SCP-062-JPによるキャリアの死亡は現在のところ防ぐことができないため、周辺の病院施設に財団所属の医師を送り、その事後処理を担当させます。
T博士が属した第3次派遣以降、SCP-062-JP-1上部の雲が晴れ、5年以上に渡って新たなSCP-062-JPキャリアの発生が確認されていません。第3次派遣を持って、SCP-062-JPは無力化されたと判断し、当該オブジェクトをNeutralizedに再分類します。
http://scp-jp.wikidot.com/scp-062-jp