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逆臣 半蔵??

「ねねっ!」


 秀吉の叫ぶ声が聞こえた。

 時間を止めて、音がした方向に目を向ける。

 天井板が外され、黒装束の男が抜いた刀を構えて飛び降りてきている。

 時間の解放と停止を繰り返すと、この世の出来事はコマ送りで進む。

 忍びだ。狙いは私と秀吉である事は間違いない。

 刀を取り上げる事はできる。だけど、忍びだけに、その後も命がけで使命を果たそうとしてくるに違いない。したくはないけど、致命的なダメージを与えるか、逃げるかしかない。

 まずはコマ送りの世界で、私と秀吉に向けられた男の攻撃を何度かかわすと、手にしていた家康の刀で男の利き腕を斬り落とし、血しぶきを浴びたくないので遠くに蹴り飛ばすと、完全に時間を解放する。


「半蔵!」


 家康の声が轟いた。

 家康の侍たちはと言うと、半蔵の攻撃をかわし、その腕を斬り落とした私の戦闘力に驚き、固まってしまっている。


「ち、ち、ち、父上ぇぇぇっ!」


 そう叫んだのはさっきまで、家康に刃を向けていた秀吉が連れて来ていた茶々の小者と言われていた男である。


「へぇぇ。面白い展開ですね。

 あれが半蔵ですか。

 半蔵と言えば、徳川殿が使っている忍びで、その者が私達を襲ってきましたですね。

 そして、さっきまで徳川殿に刀を向けていたのはその半蔵の子供でしたか。

 これはどう言うことですかね?」


 私が言った。


「ねねっ!

 お前、半蔵より強かったのか?

 この力は何じゃ?」


 横で驚いている秀吉は無視して、家康に視線を戻した。


「おのれぇ!」


 そう言って怒気を発して、今にも私たちに向かってきそうなのは、半蔵の息子である。


「待て!」


 そう言って、半蔵の息子の手を掴んで止めたのは家康だ。


「さて、全てが露見しましたですね?」

「皆の者。この男と半蔵を縛り上げろ!」


 私の言葉に答えず、家康が家臣たちに命じた。

 意外な命令に一瞬戸惑いを見せたけど、家康の真意をくみ取り、家康の家臣たちは部屋の片隅で血まみれになって呻いている半蔵と、家康に腕を掴まれた半蔵の息子を縛り上げ始めた。

 それを横目に、家康は私たちの前に平伏した。


「関白殿下、北政所様。

 どうやら、私に誤解があったようです。

 あの者たちは殿下に命じられ、私の命を狙っていたのではなく、殿下や私の命令ではなく、おそらく何者かの命令により、殿下の命と私の命を狙っていたようです。

 それに気づかず、ご無礼の段、平にご容赦くださりませ」

「まだ、白を切るおつもりですか?」

「滅相もございませぬ。

 私も謀られた側。

 その証拠をお見せいたします」


 そう言うと、家康は立ち上がり、家臣たちに捕らえられている半蔵とその息子の下に行き、脇差で二人の首を掻き切った。


「この者たちは私にとっても、逆臣。

 これにて、ご理解いただけたのではないでしょうか?」


「白々しい」


 私がそう言う前に利休の声がした。


「お見事!

 徳川殿が関白殿下と徳川殿を狙った逆臣をお討ちになられた。

 徳川殿のお働き、この利休、しかと見ましたぞ!

 ですよね、殿下?」

「おうよ」


 利休。家康と元々組んでいたのか、それとも呼ばれていただけで、今は機転をきかし、家康に恩を売っているだけなのか分からないけど、その言葉を秀吉が受けてしまった以上、この話は終わりである。


「あり難きお言葉。

 二度とこのような逆臣が出ぬよう、力を尽くす所存」


 家康はそう言うと、再び私たちの前に平伏した。

 そして、今度は家康の家臣たちもみな平伏した。


「うむ」


 私の横で、秀吉が満足げにそう言った。


「この件は、これで終わりと言うのは分かったけど、殿下はここに何をしに来られたのですか?」

「おう。お茶々が明日、徳川殿が大坂城の広間で、皆の前でわしに忠節を誓う事を約束させておいた方がよいと言うのでな。その話をしに来たのじゃ」

「関白殿下。

 そのような事。

 われらは殿下に臣従するために参ったのです。当初より、そのつもりです」

「おお。そうであったか。

 ありがたい。

 なら、一つ、協力してくれぬか?」

「何なりと」

「左様か。

 明日、わしは陣羽織を羽織り、大柄な態度で家康殿に接する故、わしの陣羽織を所望してもらえぬか?」

「それはかまいませぬが?」

「そして、わしがそれを渋る故、こう申してくれぬか?

 『もはや、殿下に陣羽織は不要。

  戦は代わって私がつかまつりまする』と」

「委細承知いたしました。

 その言葉、私の真意でもありまする」


 そう言って、平伏する家康を満足げに秀吉は眺めていた。

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