置き去られているイベント
「木下殿。
冬の寒い日に信長様が出かけようとする。
そして、草履番として木下殿が外におられる。
としたら、木下殿は信長様のために何ができますか?」
「うーん。お市様であったなら、外に出てきた時にわしがぎゅっとして温めてやるとか、わしの上着を肩からかけてやるとかできるんじゃがのう」
「いや、たぶんだけど、そんな事したら、あんた命なくなるから。
どうして、お市様が木下殿にギュッとされたい訳?」
「寒いからじゃ」
「寒くてもいらないから。
それに話は信長様だから。
信長様にぎゅっとする?」
「悪いが、わしは男にぎゅっとする趣味はない」
「やっぱ、あんたお市様が女子だから、ぎゅっとしたいんじゃない」
「いや、それは違うぞ、ねね。
その話から行けば、わしはねねにもぎゅっとしたいと言う事になるが、わしはそのような事を考えたことはない」
と言いながら、藤吉郎の視線は私の胸のあたりをさまよっている。
「胸が無くて、悪かったわね。
お市様だって、私と年が変わらないんだから、胸もそんなに大きくないでしょ」
「何を言うか。
きっとこんな感じじゃ」
そう言って、地面の上に藤吉郎が妄想するお市様の胸を描いた。12歳程度の子に、それはないだろ! と言うくらいの巨乳。
「それに、もしこんなに大きくなくとも、お市様は美しいではないか」
「はい、はい。すみませんね。私はそんな美しくなくて。
ていうか、だから信長様なんだってば!
木下殿とこんな不毛な話をしていると頭が痛くなるから、答えを言うから、必ずするのよ?
信長様の草履を自分の胸元に入れて、温めるの。
そして、信長様が現れるとさっと出すの。
すると、おお! 温かいではないかと、信長様は思うでしょ。
で、次に思うのは、こいつ尻に敷いておったな! ってこと」
「それでは信長様の怒りを買ってしまうではないか」
「だから、そこで、懐に入れて温めておりましたって言って、懐を見せるの。
すると、草履の土で汚れているから、その話は本当だって分かるの。
で、信長様がかわいいやつめと思って、さらにかわいがられるって話。
分かった?」
「ねね。分かったわい。
結局は、信長様に胸を見せて、かわいいやつめと思われろって事じゃな」
「なんでやねん!
あんたの胸はかわいいやつめと思えるような胸かよ!」
とりあえず、私が知っているイベントの対応方法は藤吉郎に教えた。これで、このイベントはその内、起きるはず。
しかし、他にどんなイベントがあったのか、私は知らない。
藤吉郎を前に腕組みして考えてみる。でも、知らないものは知らないのだ。
まあ、私の頭の中にあるカンペに書いてある範囲でカバーするしかない。
一人、そう納得して頷いた時だった。
「ねね。お、藤吉郎もおったか!」
そう言ったのは前田殿だ。すでにあかめさんを諦め、おまつさんと結婚し、赤ちゃんがいる。
「とんでもない事になってしもうたわ。
信長様ご寵愛の捨阿弥とちょっとあってなぁ」
「キターーーーーー」
つい叫んでしまった。
このイベントは私の頭の中にある。
「な、な、なんじゃ?」
「気にしないでください。
知ってます。斬っちゃったんですよね?」
「おう。そうじゃ。
もうねねにまで、知れ渡っておったのか!
それで、信長様の逆鱗に触れてしもうて、今から逃げるので、何かあればおまつを助けてやってくれぬか」
「分かりました。
おまつさんに困ったことがあったら、私の方で。
あと、前田殿は桶狭間の合戦とか」
「なんじゃ、その桶狭間の合戦とは?
いつ桶狭間で、誰が誰と合戦したのじゃ?」
「ごめんなさい。
今川義元との戦いとかあったら、勝手に参戦して敵の首を上げて、信長様に報告をしてください。
いつか、許して帰参かないますから」
「まことか?」
「はい。功を立てていけば、いつか必ず」
「分かった。
では、ねね、頼んだぞ。
藤吉郎も、頼んだぞ」
そう言い残して、前田殿は去っていった。
ともかく、桶狭間の合戦を前に、私が知っているイベントは着実に実行されて行っているようだった。
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次話から桶狭間の戦いに話は進んで行きます。楽しんでいただけるよう頑張りますので、これからもよろしくお願いいたします。




