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伴天連追放

 秀吉は九州一円に神社仏閣廃却と異国への人身売買、そして異国に領地を貸し出す事を禁止するふれを出すことにした。

 民の奴隷化や領地の貸し出しを止めたかった三成の目的は成就した。


「北政所様。

 此度の事、ありがとうございました。

 最早、お力添えは不要ゆえ、大坂にお戻りいただければよろしいかと」


 私の宿所にその後の事を報告に来た三成が言った。


「用が無くなれば、さっさと帰れと言うことですね。

 さすがは三成」

「北政所様はお忙しい身ゆえ、そう申し上げたまでなのですが」

「まあ、いいでしょう。

 近日中に私は大坂に発ちます」

「道中、お気をつけて。

 私は忙しい身ゆえ、これにて失礼いたします」


 どちらかと言うと男尊女卑、そして自分だけが正しい的な考えと思しき三成は、そう言い残すとあっさりと私の前から去って行った。

 そんな三成に続きこの部屋を出ようと、私が部屋の障子を開いて、廊下に出た時だった。

 侍姿の男たちが、身を潜めていたと思われる庭の植栽の陰から、姿を現わした。

 庭の左側に一人、中央に一人、右側に一人。

 なに?

 警護の者と言った感じじゃない。

 て言うか、その瞳には殺気を宿している。

 静々と近づいてきて、私を包囲しながら間合いに入ろうとしてきている。

 やがて、一人の男が刀を抜き去ると、他の二人も刀を抜いた。

 三人の侍たちはさっきまでのゆっくりとした動作とは違い、一気に私に襲い掛かって来た。

 仕方ない。あの力を使うかと思った時だった。

 仁助の手の者と思われる忍び装束の男たちが現れ、私と侍たちの間に割って入って、侍たちと戦い始めた。

 侍たちも手練れのようで、さくっと決着はつかず、仁助の手の者たちと混戦状態だったが、一人、二人と侍たちは斬り捨てられていった。


「殺さないで、捕まえて!」


 私の命で、最後に残った一人の侍は捕らえられた。

 そして、男が捕らえられた頃には、騒ぎを聞きつけた大勢の者たちが集まっていた。


「あなたの主は誰?」


 庭に引き据えられている侍に、廊下の上からたずねた。

 侍は横を向いて、何も言わない。


「私を狙ったんだよね?」


 これにも何も答えない。

 今、私を狙う者……?


「その男の胸を調べてくれない?

 キリシタンなら、ロザリオを首にかけているんじゃないかな?」


 私の言葉に仁助の手の者が、男の胸に手を入れ、首からかけられたロザリオを取り出した。


「やはり、キリシタンでしたか」


 私がそう言った時、離れた場所で声がした。


「この男は北政所様のお命を狙ったのですか?」


 その男は大村である。

 怒りの表情を浮かべ、ゆっくりと取り押さえられた侍の前に近づくと、その侍に向かって、声を張り上げた。


「北政所様に刃を向けるとは、不届きしごく」


 そして、そう言い終えると、素早くその侍の胸を刀で貫いた。


「北政所様。

 不逞の輩、この大村が成敗いたしました」


 大村はその場で片膝立ちで、侍を斬った刀を背に回して、そう言った。


「口封じですか?」

「滅相もございませぬ。

 北政所様に歯向かった不届き者に対し、怒りを抑えきれず、体が動いてしまったまで」

「その者はあなたの家臣なのではないのですか?」

「滅相もございませぬ。

 見知らぬ男でございます」

「女王様」


 そう割って入って来たのはコエリョだ。

 これまた離れた所から現れた。


「コエリョさん。あなたもいたのですか?」

「その者がロザリオをかけていたとしても、キリシタンとはかぎりません。

 なにゆえ、我らが女王様のお命を狙う必要がございましょうや。

 これは何者かがわれらに罪をなすりつけようとしたわなに相違ありますまい」

「いいえ。

 あなたたちが北政所様を排除しようとしていた事は確かにこの耳で聞きました」


 そう言って現れたのは仁助だ。


「大村殿の口より、直接聞かせていただきましょうか?」


 仁助が大村にそう言うと、大村は背に回していた刀を首にあてがい、一気に自分の首を斬った。


 仁助の話では、私を排除したいコエリョがキリシタン大名の大村に命じ、大村が自身の家臣を使って私を襲わせたと言う事らしかったが、証人となりえる侍たちも、大村も命を落としているため、知らぬ存ぜぬととぼけるコエリョを追い詰める決定的な証拠が無かった事や、キリシタン大名の動揺を避けるためなどの配慮がなされ、官兵衛と三成が秀吉に薦めたのはコエリョの処断ではなく、バテレンたちの追放だった。

 そして、大村純忠は病死扱いとし、領地はその嫡男が継ぐと言う穏便な処置となった。

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