神の部屋
見渡す限りの白。
前を見ても、上を向いても、何処に目を向けても白・白・白。
まるでゲーム制作ツールの初期画面のような世界の中央には、白い髭をヘソの辺りまで伸ばした翁が座っていた。
「神様!今お時間よろしいですか?」
一体何処から現れたのか。
人間によく似ているが、デフォルメされたキャラクターのように2頭身の生物が、慌てた様子で翁の元へやってきた。
比較対象がなくてよく判らなかったが、2頭身の生物と比べると、翁は10倍以上の大きさであった。
並べてみると、犬と象くらいのサイズ感だ。
「どうしたそんなに慌てて。トイレに《《紙》》でも無かったのか?」
「神様!それどころではありません!」
アメリカンジョークならぬ神ジョークをかます翁だったが、期待していたような反応はなく、やや不満そうに耳を傾ける。
「『地球』のリリース日が迫っています!あとたったの108年しかありません。そろそろご決断を!!」
「もうそんな時期か。資料はあるか?」
「はい」
2頭身の生物が返事をするのと同時に、翁の前に二つの球体が出現した。
「どっちがどっちじゃったっけ?」
「神様から見て左が『ちきゅう』。右が『チキュウ』です」
「そうか。では、『チキュウ』の方から報告を頼む」
「かしこまりました」
仕組みは判らないが、2頭身の生物がまんまるの手で指を鳴らすと、限りなく人間に近い生物が現れた。
格好はサラリーマンのようなスーツ姿だ。
「主が派遣された者か?」
「はい。左様でございます」
「では頼む」
「かしこまりました」
人間にしか見えないその生物は、スーツの内ポケットから封筒を抜き取り、中に入っていた紙を朗読し始めた。