プロローグ
今、空はいつものような青天ではなく、くすんだ灰色をしている。
(やれやれ、雨が降らないといいんだが・・・)
そう心の中でつぶやきながら、俺はRPG(対戦車ミサイル)を足元のミリタリーバッグから取り出した。
標的は約二百メートル先の軽装甲車。あの中に抹消すべき魔がいる。
スコープに目を当て、ガンサイトの中心を標的にあわせる。
そして、そのままトリガーを引いた。
バシュッ!
ミサイルがその推進音を響かせ、軽装甲車に迫っていく。
ドン!という爆発音とともに軽装甲車が爆散した。
しかし、
「・・・いきなりミサイルを放つとは、君は礼儀を知らないのかね?」
煙を上げている軽装甲車だったものから、一人の男が出てきた。
・・・この男こそが今回の標的、『吸血鬼 セネガル』
二ヶ月ほど前からこの地域に来て、すでに83人もの人間を亡き者にした。
「君、何とか言ったらどうかね?この高貴な私に血を流させたのだ。それ相応の対価を・・・」
「黙れ、くされ吸血鬼。そのよく回る舌を燃やしてやろうか?」
「・・・なるほど、君はヴァチカンの」
「悪いな、俺は無神論者なんだ。あんなカトリックどもと一緒にするな」
ヴァチカンとは、キリスト教が持つ武力保持組織で悪魔や吸血鬼、大罪を犯した犯罪者を討伐するための・・・まあ、派手なドンパチ好きの連中である。
「・・・ふむ、まあ良い。どちらにしろ君は私の手で切り裂かせてもらう。トランクの中にあった処女の血1000CCを燃した罪は重いぞ?」
「御託はいらねえ。さっさと始めようか、銀と朱の交わりを」
そうして俺は懐から銀製のAE弾(アクションエキスプレス弾)が込められた50AEを、消え去るべき魔にその銃口を向けた。