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11・3 軽蔑と龍の背中

「聞いただろう、逃げも隠れもしないそうだ、魔王城に向かおう」

「え?今から?」


「当たり前だ、既に何をするにも遅すぎるくらいだ」


 騎士団長らしからぬ軽率さを見せるカイン。

 確かに両親が殺されたと聞いたばかりで冷静にというのも難しい話だが。

「わかったよ、ただ、向かいながらでいいんだが飯くらい食わせてくれよ、あと睡眠、あと少々の妄想タイムを……」


 オレの言葉の途中で「わかった」と返事をして準備のためか城の中に戻るカイン。


 オレの肩に優しく手を置くネーシャ。

「こんな時にもド変態を忘れないその精神力、見習いたいくらいだ」


 明らかに馬鹿にされてる。

「いや、ネーシャ、妄想でなくても何ならあの日の続きでも……」


「そうだな、この世界が消滅しなければな」

「……え?マジで?」


 俄然やる気が出てきた、どっちの意味でも! 忘れんなよ! 約束だからな! と見苦しく念を押すオレに背後から声が掛かる。


「そうなんですね、お二人は、そういう関係だったんですね」


 ……えっりーん!!


「ちが、そういうんじゃなくて、あの、あれです、特訓です、特訓の続きです!」

「特訓?」


「そう、特訓、オレの魔力量を伸ばすためにネーシャと特訓してる最中にこの騒ぎに巻き込まれちゃったんで、その続きをまたしようねって話です!」


「そうなんですね」

「そうです! な、ネーシャ」


「そうだったのか、てっきりあたしはあっちの方の続きだと勘違いしていたようだ」


 馬鹿、この鈍感オブ・ジ・イヤー、奇跡的な愛らしい悪魔の尻尾めっ!


「やっぱり……」

「いやエリン、ほんと違うから、オレの心は出会ったその日からエリンのうさ……エリンに捧げてるようなもんだから!」


「そうやって調子の良いことばっかり言って女の子を困らせたら駄目ですよ、ネーシャさんも気を付けて下さいね」

「ああ、そうさせてもらおう、別に私は困ってないが」


 エリンは優しい笑みに幾らかの軽蔑を浮かべながら去って行った。


「ネーシャ! なんで正直に言っちゃうんだよ、やきもちか、やきもちなのか?」

「嫉妬するほどこの身がお前に何かを感じてるとは思わないが、もし邪魔をしたなら済まない」


「いやそんな真っ正面から謝られても困る、そして真っ正面から興味ないと言われるのも困る」


「興味が無いとは言ってないだろ、嫉妬するほどではないだけだ」

「そうか、具体的にどうも」


 パーッパラッパッパパラー!


 突如、RPGのオープニングのようなファンファーレが鳴り響く。

 なんだなんだ、今までの下り全てがオープニングムービーでこれから冒険が始まるとかそんなオチはやめてくれよ?


 城のテラスから国王と王妃、そしてカインが現れる。


「ロステリアの民よ、今この世界は新しい魔王と、七百年前に我が祖先が封印した世界を喰らう魔物の復活が近付き建国以来の危機に瀕している」


「しかし、案ずることはない、ここに控える勇者と聖女の息子でありロステリア騎士団長のカインと我らが王族の血を引くスネーテの二人を中心にその仲間達が再びこの世界に平穏をもたらしてくれることだろう」


 その仲間達なのね、オレは。

 いや下手したらその仲間達にも入ってないかも……。


 いかんいかん、無駄に卑屈になってもしょうがない。


「そしてロステリアの民の皆で次の王にふさわしいのはどちらかを決めてほしい、この勇者の息子カインと王族の血を引くスネーテ、その家柄だけではない!この戦いで魔王と世界を喰らう蟲と果敢に挑み功を上げた者をロステリアの新しい王として迎えようではないか!」


 国王の呼び掛けに集ったロステリアの国民達がオーっ!と声を上げる。


 いつの間にか隣に下りてきていたオルタスがもの凄く苦い顔をしている。


「さっき裏で国民を鼓舞するための方便だと説明されたが、あれは本気だな」

 スネーテを国王にするつもりはないと再三言っていたオルタス、今の国王の演説にはだいぶ不満がありそうだ。。


ドドドドドドっ!ドドドドドドっ!


 蟲の動きが一段と激しくなる。

 どうやらカインの言うとおり何をするにも遅すぎる感じだ、蟲か魔王、どちらかに専念したいがそうもいかない雰囲気、オレ自身はあの新しい魔王を倒す協力をするためにヴァンに呼ばれたんだから、迷うことは無いけどな。


「タイト、エリン、ネーシャ殿、時間は無い行くぞ!」

 カインがそう叫びながら城のテラスから再度飛び降りてくる、なんだ頑丈なのかそれとも何か魔法なのか分からんが、普通に階段を使え。


「カイン様! 私もお供します!」

 シフォンが下りてきたカインに駆け寄る。


「いや、シフォン、お前はロステリアに残れ」

「何故ですか!? 足手まといだと言うのですか!」


「違う、今回ロステリアに残ることは後方支援でも安全でも無い、魔王城に行くもここに残るもどちらも戦いの最前線だ、オレが一方に行くならオレの一番信用している騎士はもう一方でオレと同じだけの仕事をしろ!」


「なんて合理的で有無を言わさない説明! この騎士団副長シフォンその任務必ずや全うして見せます」


 なんか二秒で説得されるシフォン。


「シフォン、この戦いから帰ったら……」

「カイン様……」


 手を握り見つめ合う二人、カインの次の言葉を遮りその手をチョップで引き離すオレ。


「やめろやめろ、フラグが立つ! いちゃつくのは帰ってきてからにしてくれ」

「貴様! 自分がエリン殿に嫌われたからといって人の邪魔をするでない!」


 せっかくの良いシーンを邪魔されオレに毒吐くシフォン。

 どこで覗いてたんだよ、オレがエリンに軽蔑される様子を。

 エリンの軽蔑を含む目つきを思い出して改めてダメージを受けるオレ。


「これこそ嫉妬ってやつだな」

 ネーシャがオレの耳元で呟く。

 くそ、覚えてろ、いつかこの主であることの特権をフル活用してあれこれしてやるからな。


「ほら、タイトいじけてないで頑張って行ってきなさい、ここは私とオルタスとシフォンちゃんに任せときなさい」

「オネエ様……絶対魔王倒してくるんで、あ、カインがですが、死なずに持ちこたえて下さいね」

「やぁねぇ、死ぬわけないじゃん、タイトにはお仕置きが一つ残ってるんだから」


 忘れてた、エリンを気絶させちゃった時にそんな事言われたわ確か。


「えっと、魔王を倒したら、あ、カインがですが、お仕置きは無しってのはどうですかね」

「うーん、一番易しめな道具で勘弁してあげるわ」


 だからなんだよお仕置きの道具って!


「まぁ何を譲歩されたのか検討も付かないんですが、とりあえずいってきます!」

「いってらっしゃい!」


「よっし、ヴァンお前の望みが叶う時がきたぜ!」


 がうううぅぅぅ!


 ヴァンはあれから力の解放を繰り返し自らの成長を加速させて今やちょいと小さめの龍くらいの大きさになっている。

 やっぱ異世界に転生したなら龍の背中ぐらい乗らないとな!


 オレ、エリン、ネーシャ、カインの四人はヴァンの背中に乗り、魔王城へと飛び立った。


 ロステリアの国民の歓声に見送られながら。

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