10・1 役立たずと今後
ヴァンの魔力とネーシャの解呪でここカオンの信徒は、ほぼほぼ制圧出来た。
まぁ途中からオレが全く役に立ってないのは仕方ない、魔力も底を尽きたし信徒に効く有効な手段も持っていないのだから。
ただうさ耳が揺れるのを愛で、ただかわいい悪魔の尻尾が跳ねるのを凝視する、オレ的には大満足だから文句はない。
だが、この間にひとつ発見もあった、いや、うさ耳や尻尾についてではない、ヴァンの魔力の質みたいなものが急激に上昇してる事。
元々魔力量については魔力暴発を使ったオレよりも上な事は分かっていたが、魔力自体の何というのだろう、濃縮度合いというか、力強さと言うのか、そういうものが格段に上がっている。
そして、よくよく見るとヴァンは一回り大きくなっていた。
竜が単純に経年で成長するわけではなさそうなのは長年築き上げたゲーム脳で知っていたが、相手を倒していないにも関わらず成長しているということは、この世界に来たオレもそうだが自分の力を解放する度に経験値が得られる仕組みなのだろう。
オレも暇を持て余して自分のステータスを久しぶりに確認してみたが、魔力暴発を連発していたお陰か既にレベルは10になっていて、MPは6600以上とそこら辺の魔族を優に超えてるのではないかと思う。
なのに役立たずなのは元魔王のこいつがオレに与えた力が死のなんたらシリーズと物騒なものばかりなのが問題だろう、ちなみに一度死の絶叫で信徒たちを気絶させようと試みたが軽くエリンとネーシャが気を失いそうになってやめた。
つまりあれだ、やっぱり暇だ。
そして、この世界に来て初めて今後のことについて考えていた。
異世界から来たオレ、そして元の世界では既に死亡してるオレ。
この戦いでもし生き抜けたとして、オレはそれから何を目的として生きていくのか。
確かに獣耳アソシエーションの設立という大任は背負っていることは分かってる、だがそれ以前にオレはこの世界の貨幣価値や金の稼ぎ方すら知らない。
エリンと子供を二人授かるとして、家族四人で食べていくにはどんな仕事をしなければならないのか、体力仕事は勘弁してほしい。
そしてこの戦いが終わるとネーシャはオレの側を離れてしまうのか。
隷属の契約がどういったものかも分からない、その契約がいつか破棄できるのかも不明だ。
もし今後もオレに付いてくると言われた時にオレはエリンとネーシャのいずれかを選ばなければならないのだろうか、いや、二人が喧嘩をしないのであれば二人とも居てくれていい、やぶさかではない。
バシンっ!
たぶん、とてもいやらしい顔をしていたのだろう、ネーシャの強烈なビンタがオレの頬にクリティカルヒットした。
「殺す気か!」
自分で言った直後に「そうナリヨ」と脳内再生されたが今は関係ない。
「大体片付いたぞ、トリニアに移動するんだろ」
「あー三人で行ってきてもいいよ、どーせオレ役に立ってないし」
バシンっ!
うん、これは痛恨の一撃。
「確かに今は役に立ってないが、お前の力が必要な時が来る」
「いつだよ、それ」
ネーシャは少し黙った後に言い放つ。
「知ってるのとお前に話すとでは別問題だ」
ちょっと何を言ってるかは分からなかったが、まぁ必要だと言われるのは悪い気はしない。
「分かったよ、じゃぁ騎士団に馬を2頭借りてくるからエリンとネーシャでどっちがオレを乗せるか喧嘩せずに決めといてくれ」
「うむ、確かに押し付け合いは見苦しいからな、エリンは嫌がるだろうからあたしが乗せてやろう」
「うん、そういう意味では言ってないけど、まぁいいや、ツンデレってやつだろ」
「そんな魔法は聞いたことがない」
だろうよ、そんな魔法があるなら生涯懸けて習得したいよオレが。
ドドドドドドっ!
ロステリアの方面から地響きが聞こえてくる。
「手遅れだったか……?」
ネーシャの顔が曇る。
「キャッスルイーターってやつ?」
「そうでない事を祈るが……」
騎士団に馬を借りようと話しかけるが今の地響きでパニックになっていてそれどころではなさそうだったので緊急事態だからと自分に言い訳しながら馬を2頭黙って拝借した。
そしてオレ達はロステリアを気にしつつも急いでその隣町トリニアへと向かった。
・ ・ ・
ゴラグリュース、カイン、シフォンの三人はロステリア王と対面していた。
「国王陛下、ゴラグリュース様よりキャッスルイーターの封印が解かれる可能性があるという話を聞き馳せ参じました」
カインがそう伝えると国王は一瞬驚きの顔を浮かべた。
「余が殺されると言うことか、ゴラグリュース」
他の二人とは違い跪くことも頭を下げることもなく立つゴラグリュース。
「うーん、ちょっと違うのよ」
「どういう事だ」
「封印が解かれるというより、キャッスルイーターに、より強大な力を与えて封印を破らせようとしてる奴がいるんじゃないかなって」
「ほう、してそいつは何者だ」
「うーん、まだ分かんないんだけど、とりあえず王妃とその侍女に会わせてもらえないかしら」
怒りと驚きを混ぜたような表情を浮かべるロステリア王。
「剣聖と呼ばれる其方でも踏み込むことが許されぬ理があるのではないか?」
ギロリと睨むその王の威厳にも一切怯むことなく応えるゴラグリュース。
「もー、そんな怖い顔しないで、王妃というより会いたいのはその侍女のほうだから、ね?」
「キャスパーか、よかろう」
そういうと王は傍らに控えていた大臣に王妃と侍女を連れてくるように伝える。
部屋の中に四人だけになると王は立ち上がりゴラグリュースに歩み寄る。
「確かにナミアの様子が最近おかしいのは確かだ、その真意見極めてくれるか」
ゴラグリュースは答えず、ただ頷いた。




