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第8話 これからのこと、お金のこと

「さて、と。

 これからの話をしましょう。」


エミリアさんが何事もなかったかのように話し始める。

すでにエミリアさんとアメリアさんがシロをかわいがるのは終了しており、今はギルド1階の受付に座って今後の説明を受けるところだ。

なお、シロは僕の足元で丸くなっている。


「まず、先ほどの召喚についてですが……。

 魔法紙が2,000リフ、魔法インクが3,000リフ、魔石が1つあたり2,500リフで合わせて15,000リフ、合計20,000リフになります。

 これについては、当ギルドからマナさんへお貸ししているお金ということになります。」


「えっ?」


告げられた言葉に驚き、僕はエミリアさんの顔を見つめる。

だが、エミリアさんは僕の視線に気付いても少し微笑んだだけで、そのまま気にせずに続ける。


「次に当ギルド、冒険者ギルドへの登録料が100リフ、希望者のみのものではありますが初心者講習受講料が1,000リフです。

 まあ、これは漂流者は無料と王国で定められていますので、マナさんの場合は無料になりますね。

 他に冒険者としてやっていくために必要となる武器、防具が30,000リフほど、冒険者として必要なアイテムがマジックバッグを含めて32,000リフほど、衣服などの日常に必要なものが8,000リフほど、他に保険としてもろもろ必要になる費用を考えて10,000リフほどでしょうか。

 召喚の費用と合わせて合計100,000リフですね。」


「えっと、いったい何を……。」


「もちろん、これから必要になるお金の話よ。

 でも、マナさんが元の世界へ帰ることを希望せず、この町で暮らすことを選択するのであれば日常に必要な10,000リフほどかしら。

 その場合だと合計で30,000リフくらいになるわね。」


突然のことにエミリアさんが何を言っているのか分からない。

いや、本当は分かっているはずなんだけど、頭が理解するのを拒んでいる感じだ。

だって、召喚魔法はエミリアさんに請われてやったものだ。

それなのに後から費用を請求されるなんて……。


「まあ、どちらを選ぶにしても当ギルドからマナさんへお貸ししている20,000リフについては返済してもらわないといけません。

 というわけで、マナさんにはしばらくの間、当ギルドで雑用係として働いてもらいます。」


「……。」


あまりの事態に言葉も出ない。

冒険者ギルドにやってきて、ギルドの人の言うことを聞いていたら、いつの間にか雑用係になっていた。

どうしてこうなったんだろうか。

いや、いきなり奴隷にされるよりはマシなのか?

なんだか、さっきから頭が良く回らない。


「いやー、よかったわ。

 今、この町はちょっと人が減っていて、ちょうど人手が欲しかったのよね。

 お金についてもマナさんは良く分からないでしょうから、そこから説明していくわね――。」


呆然としたままの僕をよそに、エミリアさんがこの世界のお金についての説明を始める。


それによると、この世界の通貨は各国共通で“リフ”というそうだ。

貨幣は鉄貨、銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、白金貨、聖金貨があり、鉄貨1枚が1リフだ。

鉄貨10枚で銅貨1枚となり、以降は金貨まで10枚ごとに上がっていく。

白金貨からは下位貨幣が100枚で次の貨幣へと上がるらしい。

つまり、金貨100枚で白金貨1枚、白金貨100枚で聖金貨1枚だ。

ただ、聖金貨については国家間の取引のような金額が大きくなるような特殊なケースでしか使われることがないそうで、見ることはないだろうとのことだ。

正直、その下の白金貨ですら見ることはないんじゃないかと思わなくもないんだけど、高位の冒険者になると目にする機会が出てくるらしい。


で、金銭価値についてなんだけど、食事1食あたりが質素に済ませると20リフくらいで、ふつうに食べると50リフくらい。

まあ、食事なんかは高いものを求めだすと際限がなくなるんだろうけど、一般的にはそれくらいらしい。

宿なんかは一般的なところで朝食が付いて1泊500リフくらい。

ただ寝るだけでかつ雑魚寝のところだと1泊100リフくらいで泊まれるらしいけど、こういう宿は防犯面でかなり危険らしい。

なので、普通に生活しようとすると1日に600リフくらい必要になるわけだ。


それで気になるのが1日あたりにどれくらい稼げるかなんだけど、都市部だと大人1人が1日で1,000リフ程度を稼いでるらしい。

ただ、僕みたいな大して能力を持っていないような子供は職人や商人の下働きとなることが多いらしい。

その場合は衣食住を雇い主が用意するかわりに給料は月に小遣い程度の金額をもらうくらいで、何年かの下働き期間を経て正式な従業員になるか、独立するかを選択するそうだ。


それ以外の選択肢として冒険者があるんだけど、これに関しては才能や実力しだいでピンキリらしい。

低位の冒険者だと1日の稼ぎが1,000リフを下回るのはザラで、高位の冒険者になっても装備に大金がかかったり、怪我をして稼ぎがなくなったりしてお金に困るような人もいるみたいだ。

仮に僕が冒険者になった場合、おそらく最初のうちは1日に500リフも稼げればいいほうだろうと言われてしまった。

というか、500リフじゃ普通の生活を送るために必要な金額に足りないんですけど……。


それなのに既に20,000リフが借金として確定してしまっている。

シロを召喚した結果、魔方陣と魔石は消えてしまったので返品は不可能だし、魔法インクは半分くらい残っているけど、それでどうこうできるとも思えない。

1泊100リフという危険な宿を利用すれば、1日あたり200リフくらいに切り詰められそうだけど、そんな生活に耐えられるかどうか……。


どうしよう、この世界でやっていける気がまったくしない。

不安しかない。



「まあ、借金というのは建前のようなものだ。

 どうせお前さんも行くあてなんてないだろうし、出来ることもないだろう?

 それをしばらくの間、うちのギルドで面倒を見て、いろいろと仕込んでやろうという話だ。」


借金やこれからの生活に不安を感じていると、ギルドマスターがそうフォローを入れてくれた。


「えっ、そうなんですかっ!?」


エミリアさんの話を聞いているうちにうつむいていた顔を上げ、僕はギルドマスターの顔を見つめる。

はじめて見たときと同じ強面だったが、冗談ひとつ言いそうにないその顔は今の僕にはとても頼もしく見えた。


「それならそうと言ってください。

 びっくりしたじゃないですか。」


ギルドマスターの言葉に嘘はなさそうだと判断した僕はホッと胸をなでおろす。


「あら、お父さんの言葉はその通りですけど、お金のことも本当のことよ。

 当ギルドの経理を預かる者として不明瞭なお金を出すわけにはいけませんから、お貸ししている20,000リフはキッチリと返済してもらいます。

 それに、元の世界へ帰りたいのであれば、その方法を探す必要があるでしょうから、やっぱり最初に言った100,000リフ程度の金額は必要だと思いますよ。」


が、続いてエミリアさんから告げられた言葉に、僕は微妙な気分になってしまった。


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