第15話 エミリアさんとの相談と対策
冒険者としての初日を依頼未達成という不本意な結果で終えた翌日。
僕はエミリアさんに対してランチタイムの手伝いを免除してもらえないか相談していた。
「うーん、そうねえ。
確かにまだマナ君の実力では3時間で効率よく依頼をこなすのは難しかったわね。
……まあ、ランチタイムであればまだお客さんも少ないし、どうにかなるかしら?
マナ君が来るまではそれで回していたのだし。
うん、ランチタイムの手伝いの免除を認めます。」
「本当ですかっ、ありがとうございます。」
エミリアさんが口にした許可の言葉に、身を乗り出すようにお礼を言う。
そんな僕に対して、エミリアさんはたしなめるように言葉を付け加える。
「この措置は食堂の手伝いよりも依頼の達成を重視しているということだから、依頼の方はよろしく頼むわよ。
後、ブルーノさんとタバサさんに連絡できていないから、ランチタイムの手伝いの免除は明日からね。
今日は予定通りランチタイムも手伝いをお願いするわ。」
「はいっ。」
その後、エミリアさんと昨日の依頼の状況について少しだけ話をした。
まあ、薬草がほとんど見つからなかったと伝えただけなんだけど。
それでも、一応のアドバイスというか参考となる情報はもらえた。
やっぱり薬草は森の中に多く生えているらしい。
そして、人の住むような場所の近くでは薬草が生えにくくなるということだった。
ワイルドラビットについても教えてもらったけれど、町の近くではほとんど見かけないとのとのことだ。
別に草原に居ないというわけではなく、もっと町から離れないと見かけないということらしい。
つまり、依頼を達成するにしてもワイルドラビットを狩るにしても、もっと行動範囲を広げないといけないということだ。
「調子はどうだい?」
その日の夜、食堂の片付けを行っているとタバサさんから声をかけられた。
テーブルを拭く手を止めて僕は答える。
「そうですね、今日は昨日よりも遠くへ足を伸ばしたので少しマシになりました。
でも、やはり短い時間だとそこまで遠くまでは行けないので、申し訳ありませんが明日からはランチタイムの手伝いから外れさせてください。」
「ああ、その話はエミリアから聞いてるよ。
こっちの方は人が多くなるディナータイムさえ手伝ってもらえれば、ランチタイムの方はどうにかなるからそんなに気にすることはないよ。
それに、この町のギルドにはろくな依頼が出てないけど、それでも薬草採集なんかの最低限の依頼はやってもらわないと困るからね。
あんたはそっちをしっかりやっといで。」
僕が申し訳なく思いつつ明日からランチタイムを手伝えないことを伝えると、タバサさんはまるで気にすることなく僕の背中を豪快に叩いてくる。
「でも、町から離れると危険も増えるからね。
安全には十分に気を付けるんだよ。」
タバサさんは最後にそう付け加えると残っている片付けの作業に戻っていった。
その姿を見送りつつ、今日のことを思い出す。
タバサさんに答えたように、今日は昨日よりも距離も伸ばし、より町から遠いところまで移動してみた。
その結果、13本の薬草を採集することが出来て、薬草採集の依頼を1件達成することができた。
ただ、今日もモンスターとの遭遇はなかった。
やはり、昨日よりも距離を伸ばしたといっても、まだまだ町に近い場所だったからだと思う。
けれど明日以降、昼に町に戻る必要がなくなれば、より町から離れた場所まで移動することが出来る。
そうすれば、採集できる薬草の数も増え、モンスターと遭遇することもあるかもしれない。
モンスターに遭遇すれば、討伐して魔石などで収入を増やせる可能性が出るけれど、同時に身の危険も出てくる。
タバサさんに言われたとおり、安全には十分に注意しなければいけないだろう。
僕は明日からの予定に期待と不安を覚えつつ、食堂の片付けを再開した。