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第11話 初心者講習1日目 ‐午後‐

食堂の手伝いを終え、まかないとして用意された昼食を食べ終わった僕は再び訓練場へと向かった。


訓練場に入ると、またしてもギルドマスターが先に訓練場で待ち構えていた。

その手に木でできた大剣を持ち、まわりにも同様に木でできた長剣や短剣、槍などの訓練用の武器を用意して準備万端といった感じだ。

午前の訓練で希望した弓以外の武器が用意されていることに疑問を感じつつ、ギルドマスターへとあいさつする。


「こんにちは。

 午後もよろしくお願いします。」


「おう、任せろ。

 朝以上にビシビシいってやるからな。」


「いや、お手柔らかにお願いします。

 それより、なんで剣や槍が用意されているんですか?

 弓を使いたいと言ったと思うんですが。」


ギルドマスターのやる気に満ちた言葉にひきつつ、気になったことを質問する。


「それはもちろん訓練に使うからに決まっているだろ。

 自分が弓を使うからといって剣や槍なんかの使い方を知らなくてもいいということにはならんからな。

 それにまだ弓を使えると決まったわけでもないだろう?

 だったら、いろんな武器を使ってみてから本当に自分に合っていると思う武器を選んだ方がいい。

 というわけで、まずは剣からいってみろ。」


そんなことを言って、ギルドマスターが僕に向かって木でできた長剣を投げ渡してくる。

いきなりのことに慌てつつもしっかりとキャッチし、手に持ったその長剣サイズの木剣を眺める。

見たところ、特に装飾などのないまさに訓練用の木剣といった感じだ。

剣の長さも漠然とイメージしていたファンタジーの剣と同じくらいの長さだった。


僕が木剣の確認を終えるとギルドマスターから剣の構え方や振り方、身体の動かし方についての指導が始まる。

それが一通り終わるとギルドマスターと軽く打ち合いを行って、実際の使い勝手を確かめる。


午前中のしごきを思い出してひそかに身構えていたが、あっさりと長剣の訓練は終了となり、次の武器である短剣が渡される。

拍子抜けしつつも、短剣について同様に構え方や振り方、身体の動かし方の指導を受け、最後に軽い打ち合いを行う。

その後も大剣や槍、斧、片手斧といった他の武器について、同様に訓練を続けていった。



「最後はお前さんが希望していた弓だな。」


ギルドマスターのその言葉とともに、最後に希望していた弓の訓練が始まった。

弓についても基本は他の武器と同じだった。

最初に構え方や矢のつがえ方などの基本的なことを教わり、それが一通り終わったところで軽い打ち合いの代わりに試射という流れだ。


ギルドマスターに促され、訓練場の壁際に用意された的へと向き合う。

距離としては20mほどだろうか。


教わったとおりに弓を構えて矢をつがえる。

慎重に的を狙い、矢を放つ。


が、矢は的の右に外れ、後ろの壁に当たって弾かれた。


「くっ。」


的を外したことを悔しく思いながらも、ギルドマスターのほうを見る。

ギルドマスターはあごをしゃくって2射目を促してきたので、その指示に従うことにする。


2本目の矢をつがえ、的を狙う。

先ほどよりもやや左を意識して放った矢は、かろうじて的の端をとらえることができた。


「ほう、2射目で的に当てるか。

 これは素質があるかもしれんな。」


後ろからギルドマスターのそんなこと言葉が聞こえてくる。

その言葉にうれしくなり、残りの矢を射る許可を貰うと次々に矢を射っていった。


結局、用意されていた20本の内16本を的に当てるという初心者としては上々の結果を残して弓の初訓練は終わった。



「ふむ。20本中16本を当てるか。これなら近いうちに“弓”のスキルを覚えることができるかもしれんな。」


「本当ですかっ!?」


「ああ。

 ところで、弓のサブ武器はどうする?

 弓をメインに使うのであれば近接戦闘のためにサブ武器を用意する必要があるぞ。

 まあ、しっくりくるものがなければ無手でどうにかするという方法もあるが。」


“弓”のスキルを覚えることができるかもしれないという言葉に喜ぶ僕を気にすることなく、用意していた訓練用の武器を前にギルドマスターが問いかけてくる。


「そうですね。

 ……それだと短剣が一番使いやすかったと思います。

 弓を使うときにも邪魔になりにくいと思いますし。」


ギルドマスターからの問いかけに水をさされつつ、少し考えてから答える。


「短剣か。

 弓使いにとってはオーソドックスなサブ武器だな。

 じゃあ、それを踏まえて訓練を始めるか。」


そう言うとギルドマスターは、木の短剣を投げ渡してくる。

訓練を始めるという言葉に疑問を覚えつつ、僕は短剣を受け取った。




数分後。


「うぅぅ。」


僕は呻きをあげて地面に倒れていた。


「ほれ、早く立て。

 そんな調子では立派な冒険者にはなれんぞ。」


その言葉に力を振り絞って体を起こし、短剣を構える。

先ほどの訓練を始めるという宣言以降、武器の扱いを確認するための軽い打ち合いとは異なる容赦のない打ち込みが僕を襲っていた。

短剣で受けることができるのは最初の数合といったところで、それ以降の打ち込みを何度も身体に受けて地面に倒れていたのである。


再び立ち上がって短剣を構えた僕を見て、口元を凶悪に歪めながらギルドマスターが再び木の大剣を使って打ち込んでくる。

僕は上段からの打ち込みを短剣を両手で持って必死に受け止める。

しかし、打ち下ろし、打ち上げられるギルドマスターの剛剣に押され、僕の短剣は弾かれ始める。

さらに1合、2合と進むうちに僕の防御は遅れ始め、その容赦のない打ち込みを身体で受けることになった。


「ぐぅっ。」


ギルドマスターの大剣を左肩に受け、呻き声を上げながら肩を押さえる。

しかし、ギルドマスターはそんな僕に容赦なく告げる。


「さっさと構えろ。

 モンスターはいちいち待ってはくれんぞ。」


その言葉に再び短剣を構えるが、ギルドマスターの打ち込みの前にすぐに倒れ伏す。

するとギルドマスターは回復ポーションをふりかけて僕の体力を回復させる。


その後もギルドマスターからの大剣を使った打ち込みや、無手からの打撃や蹴りによって打ちのめされる。

そのたびに回復ポーションによって体力や痛みを強制的に回復させられ、そのしごきは夕食の準備が始まる時間まで続けられた。






「……厨房で皿洗いだな。」


訓練終了後、ディナータイムの準備のために食堂に向かった僕はブルーノさんから当然のようにそう告げられるのであった。




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