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11.再会

11.再会



颯人はやと! 今日も面白いこと考えたわ!」

 朝の学校。少し肌寒くなってきた季節、朝日が差し込む教室で、自分の席につく一人の男子生徒の前に、二人の男女の生徒がにやにやと笑いながらやってくる。

りょう芽衣めい。また君たちか……」

 颯人と呼ばれた少年は頭痛を感じて思わず目頭を押さえる。彼は経験から知っていた。この二人が悪そうな笑顔で僕のところに来るときは決まって僕はろくでもないことに巻き込まれるのだ、と。

「なんで僕がやらなくちゃいけないの」

「お前は昨日帰ったろ。だから今日はなにがなんでも参加してもらうぞ」

「亮。それ、僕が参加しなくちゃいけない理由になってないよ」

「お前にも説明しておこう。担任の使っているカツラが特定できた。このタイプなら、額のほうから釣り針を入れて後ろから引っ張れば剥がせる」

 亮はスマートフォンを操作して、なにやらカツラを売っている通販サイトのページを見せてくる。どうやらこちらの話を聞く気はさらさらないらしい。

「その動画を撮影して、学校裏サイトにあげようってわけ。私が考えたのよ!」

「いや、芽衣もそんなこと自慢げに言わなくていいから」

 保健室に行きたい。精神的な理由による頭痛でも、薬を分けてもらえるのだろうか。

 そんな危うい会話をしていると、教室の扉が開き、担任教師が入ってくる。亮と芽衣もそれを見て自分の席へと戻った。

「今日は転校生が来るぞ」

「え! 先生! 女子ですか!? 女子ですか!?」

 あからさまなカツラ頭の担任教師に向かって、クラスのお調子者が大声で尋ねる。

「落ち着け田村。女子生徒だが、あまりがっつくんじゃないぞ」

 クラス中から笑い声が起こる。颯人も頬杖をつきながら少しばかりの笑い声をもらした。

 扉が再び開き、その転校生が教室に入ってくる。その容姿ははっきりと見なくてもわかるほど美しく、教室が驚嘆の渦に呑まれる。

 一方で、颯人はほかのクラスメイトとは違う意味で驚愕していた。

「颯人、どうしたの?」

 颯人の異変に気づいたのか、隣の席から芽衣が尋ねてくる。

「いや、あの子、なんだか会ったことある気がして……」

「はあ? どういうこと?」

「どういうことといわれても、説明のしようがないよ」

 それも、ただのデジャヴなどではない。

 もっと、何かずっと探していたものを見つけたような。

 かつて失ったものを見つけたような。

 そんな、気がした。

「――美帆です。よろしくお願いします!」

 苗字はよく聞こえなかったが、その名前ははっきりとわかった。

 美帆は教室を見回して、颯人と目が合う。

 一瞬だけ驚いたように目を見開いて、その後安堵が多分に混じった笑みを浮かべる。

 休憩時間になって、颯人はクラスメイトから詰め寄られる。

「おい、お前どういうことだよ。あの子と知り合いなのか? 事情を教えろ」

「説明しなさいよ!」

 女子生徒の芽衣までもが、颯人を糾弾するかのように詰め寄ってくる。

 美帆は颯人のほうを一瞬だけ見て、教室から出て行く。

「待って!」

 颯人は同級生たちを振り払って、美帆を追いかける。

 頭の中に飛び込んでくる多くの覚えのない情景。それに苦しさを覚えながらも、颯人は必死に美帆の後を追った。

 人気のない廊下。そこで二人になったところで、美帆は後ろを振り返る。

「やっと、見つけられた……」

 そう呟いた美帆を見て、颯人は目の前にいるのが、自分の魂が捜し求めていた相手であることを確信する。

「美帆……」

 颯人の言葉に、美帆はまたにっこりと笑った。

「ひさしぶり。それと……、はじめまして、颯人」

 

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