表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/12

3.処刑

 3.処刑



 城下町からは大きく離れた山間の小さな農村。間もなく陽が山の尾根の向こうに消えてしまいそうな、夕暮れ時の空の下。一人の少年の刑が執行されようとしていた。

 少年は後ろ手で縄によって縛られ、二人の大男に体を掴まれつつ処刑台へと歩を進まさせられている。処刑台までの道の周りには多くの村人が集まっており、少年に向かって罵詈雑言を浴びせていた。

 少年は顔を上げる。目線の先にあるのは、木で作られた高台。上から太い縄がぶら下がっており、その先端にはちょうど人の頭が通り抜けられそうな輪が作られていた。その高台に続く階段は、少年の目の前まで延びている。

 少年は両隣の大男に促される形で階段に足をかけ、一段、また一段と死へと続く階段を昇っていく。その足取りは、若干の震えはあるものの、一切の迷いが存在していなかった。

頂上までたどり着いた少年は、大男によって首に縄をかけられ、四角い板の上に立たされ、綿でできた布で目を覆われる。

「サーレン。何か、言い残すことはあるか?」

 役人らしき男が少年に告げる。サーレンと呼ばれた少年は、しばらく何も言わずに黙っていたが、やがて口を開く。

「どうか、メイファンと同じ墓に、それができなくてもせめて隣の墓に入れてもらうことはできませんか」

 それを聞いた役人は、別の役人と少しばかり言葉を交わす。そして「ダメだ。罪人は決められた場所に埋葬する決まりになっている。あの少女と近い墓を用意することはできない」と告げた。

「そう、ですよね。僕みたいな大罪人が、あの子と同じ墓に入れてほしいだなんて、身勝手にもほどがありますよね」

 少年はぼそりとつぶやくが、その言葉は誰の耳にも入らなかった。

「サーレン。言いたいことはそれだけか?」

 少年は黙ってうなずき、役人は手を振り上げ合図を出す。

 足元の板が下向きに開き、足場を失った少年の体は地に向かって落下を始めた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ