3.処刑
3.処刑
城下町からは大きく離れた山間の小さな農村。間もなく陽が山の尾根の向こうに消えてしまいそうな、夕暮れ時の空の下。一人の少年の刑が執行されようとしていた。
少年は後ろ手で縄によって縛られ、二人の大男に体を掴まれつつ処刑台へと歩を進まさせられている。処刑台までの道の周りには多くの村人が集まっており、少年に向かって罵詈雑言を浴びせていた。
少年は顔を上げる。目線の先にあるのは、木で作られた高台。上から太い縄がぶら下がっており、その先端にはちょうど人の頭が通り抜けられそうな輪が作られていた。その高台に続く階段は、少年の目の前まで延びている。
少年は両隣の大男に促される形で階段に足をかけ、一段、また一段と死へと続く階段を昇っていく。その足取りは、若干の震えはあるものの、一切の迷いが存在していなかった。
頂上までたどり着いた少年は、大男によって首に縄をかけられ、四角い板の上に立たされ、綿でできた布で目を覆われる。
「サーレン。何か、言い残すことはあるか?」
役人らしき男が少年に告げる。サーレンと呼ばれた少年は、しばらく何も言わずに黙っていたが、やがて口を開く。
「どうか、メイファンと同じ墓に、それができなくてもせめて隣の墓に入れてもらうことはできませんか」
それを聞いた役人は、別の役人と少しばかり言葉を交わす。そして「ダメだ。罪人は決められた場所に埋葬する決まりになっている。あの少女と近い墓を用意することはできない」と告げた。
「そう、ですよね。僕みたいな大罪人が、あの子と同じ墓に入れてほしいだなんて、身勝手にもほどがありますよね」
少年はぼそりとつぶやくが、その言葉は誰の耳にも入らなかった。
「サーレン。言いたいことはそれだけか?」
少年は黙ってうなずき、役人は手を振り上げ合図を出す。
足元の板が下向きに開き、足場を失った少年の体は地に向かって落下を始めた。