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魔眼は夢をみる  作者: 聖堂 天音
第一章 異世界に生まれ落ちて
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第1話 魔眼の少女(1)

 こんにちは。俺の名はアオイ。

 剣とか魔法が普通にある世界に転生した、元日本人。

 こんな始まり方はテンプレートすぎるんで、ある程度は割愛する。

 まぁ、要は前世の記憶を受け継いだまま、異世界で生まれ変わってしまった。しかも、右目に特殊な魔法を扱える者の証、魔眼(まがん)を持って…。


 「なんだ、転生チート物か」と笑う奴は今すぐ出てこい。

 魔眼持ち自体はこの世界では珍しくはないからな?

 この世界には、魔眼持ちで生まれてくることが普通だという少数民族がいる、と言えば理解するかな?

 要はそんなに珍しい能力でも、神様から与えられる特別な力でもないってことだね。

 転生特典、と言われてるにありがたいものじゃない。


 魔眼に関する世間の認識というか、誰もが知っている事実を知ったのは、4歳の時だ。

 俺が世話になっている施設の職員に、『魔眼とは結局なんなの?』と質問した時だ。


 そう。俺にこの世界の親がいない。

 あ、いや、普通にこの世界のヒトの子供として生まれてきたことは覚えているから正しくは、生まれてすぐに捨てられたと言うべきかな?


 なので、親と呼べる人間はおらず、孤児院の職員が親代わりだった。

 ちなみに、まっとうな常識があれば、魔眼持ちで生まれてきた子を捨てることはない。

 魔眼は珍しくはないとしても、少々特殊な魔法を扱えるから、魔法の研究をする機関からは大事にされるし、農民の家に魔眼持ちが生まれたと聞いて、下級貴族の家の人が養子として迎え入れて、有事の際の国の戦力にしてしまうからだ。


 つまり、ちょっとばかし、高収入が期待できる仕事に就きやすいというわけ。魔眼を持つ俺を捨てた、あの親は金の卵を生む鶏を捨てたと同じなのだ。


 国や貴族とは無縁の生活をしている農民や平民でも、魔眼持ちの価値を正しく把握しているのが普通らしいので、俺を保護した町の警備の人間はドン引きした。


 なんで魔眼持ちを捨てるの?


 そんな気持ちだったらしい。



 そして俺を預かることになった孤児院では、徐々に魔眼持ちの俺を持て余すようになっていった。

 魔眼持ちは持っている魔力の量が平均より高いため、魔眼の子を育てるノウハウがない施設では扱いに困っていた。


 魔眼持ちの子供は、かんしゃくを起こして無意識に魔眼に宿っている魔法を発動させてしまうことがある。

 それを『魔眼の暴走』と呼んでおり、事故を防ぐ意味でも、魔眼持ちの貴族の養子になるのだが、5歳になった今も俺を養子にしたいという話が来なかった。


 そもそも前世で日本人として、平和を愛し、静かに生きてきた記憶があるせいか、子供特有のかんしゃくを起こす気になれない。


 いや、だって、悪いのは魔眼持ちの価値を知らずに捨てた、あの親が悪いんだし?


 親がいないストレスなんて無いし、それを親代わりの職員にぶつけるわけないよ?


 ……ということを、氏名不詳、身分不詳(たぶんかなり偉い貴族)の若い夫婦に説明してみた。


 彼らは5年前に奥さんが妊娠したけど流産してしまい、その後、子宝に恵まれず、養子を取ることにしたらしい。子供が欲しくて欲しくて仕方ないんだとか。


 この世界は産業革命真っ只中のヨーロッパみたいな時代を迎えてるらしく、魔法で動く列車や室内を明るく照らす電灯に近いものが生まれていた。


 古い迷信の類いが忘れ去られ、新たな時代を迎えている最中。

 そして、子宝に恵まれるために、妊娠しやすい周期を知り、その時期に夫婦で頑張るという知識がまだ存在しない、医学方面はまだ未熟な時代。


 難しいことはできない。

 その一言に尽きる時代。


 この若い夫婦は養子に迎えるに相応しい子を探しているうちに、引き取り手が居ない魔眼持ちの子供がいるという噂を耳にし、俺がいる施設にやってきた。


 現在、俺は5歳。

 同年代の他の子に比べ、ハキハキと答える俺の姿に、若い夫婦は口を開けっぱなしだ。


 やがて衝撃から立ち直ったっぽい、まだ二十代前半に見える旦那さんが俺に笑顔を見せた。


「君の名前は?」


 既に知っているだろうに、わざわざ聞いてくる。


「アオイ」


 これは前世の俺の名だ。

 保護され、孤児院に着いた時にどういうわけか、同じ名前をつけられてしまった。


「アオイか……。いい名前だ。将来の夢はあるかな? あるなら、聞かせてくれないかい?」


 その質問には戸惑った。


 この世界が産業革命真っ只中のヨーロッパみたいだと感じた時から抱いていた感想をぶつけてみようかな?


「魔眼持ちだからと戦争に駆り出されて、死にたくないです」


「はっ?」


 若い夫婦と親代わりの職員が同時にびっくりしている。

 当然か。戦争になったら、剣とか魔法で戦うのが主体のこの世界では、魔眼持ちが国のために戦い、活躍するのは当たり前だし。


「近いうちに戦争のやり方が変わると思うんです。魔眼持ちに頼らない、もっと残酷無慈悲な高い火力を誇る兵器が作り出され、それか主体になるはずです。兵士が多い国による、数の暴力がとことん活かされます。大量の兵士を遠方に一気に移動させる手段があることに、まず危機感を抱いてください」


 列車の誕生はヨーロッパの戦争の歴史に大きな影響を与えたらしい。

 適当に漫画とか読んで得た知識だから間違ってるかも知れないけど、馬か徒歩移動から、列車はだいぶ違うと思うんだ。


 そこで問題になるのは有事の際に魔眼持ちの扱い。

 これまでは白兵戦っていうのかな?

 そういう形式が主流だったから、各国は強力な魔眼の魔法を使える人を、国の戦力としてどれだけ確保できるかが鍵だったと聞いている。


 しかし、これまで以上に大量に戦線に投入されるであろう、敵国のたくさんの兵士を少数の魔眼持ちとプラス一般兵で対処できるか?


 答えは無理。

 魔眼によって扱える魔法は通常では習得不可能ってだけでチートではない。ここ大事。


 数の暴力に訴えられ、援軍の到着が間に合う前に蹂躙(じゅうりん)される未来しか、想像できない。


 この国はまだ列車の活用が物資の長距離、大量輸送とか、一般市民の移動の足とか平和なことにしか使ってないから分かりにくいだろうけどさ。


 有事の際の兵士の輸送はきっちりとしたマニュアルを作り、実際に訓練で慣れさせないといけないので、開戦前の仕込みが大事。


 時代の流れに合わせ、国の上層部の意識か変わらなければ、のんびりとした気風がある、この国が時代の変化に対応できないだろう。


 そうなった場合、国の戦力として取り込まれた俺は戦場で死ぬ。確実に死ぬ。


 平和な時代をぬくぬくと生きた元日本人としての記憶があるから、国のために誰かを殺すとかやりたくないし、魔眼持ちだからという理由で、無駄に期待を背負って戦うのは無理。怖い。


 列車が出来たってことは、銃器あたりもありそうだよね?

 あれで蜂の巣とか嫌だ。


 魔眼持ちは普通の魔法は扱えない。銃器の類いの攻撃には無力だろう。

 国の上層部が古い時代の戦い方にこだわるタイプなら、俺は無駄死にする。


 戦死フラグが既に立ってる世界になんで生まれ変わってんの!?


 なので、身分が高そうなこの夫婦にその辺も語ってみた。

 二人は心当たりがあるのが始終苦い顔だ。


「あなた……」


「あぁ……これは想像以上だ」


 二人はやや顔色がよくないけど、目を合わせてうにずきあっている。


 うん、これで上層部の意識改革に期待しよう。


 俺は親の正体不明の捨て子だし、出来ることはこれぐらいか。

 養子を探している、とは言ったが二人が欲しいのは男子だろう。身分高そうだし。後継ぎが欲しいのかな?



 魔眼持ちだから引き合わされただけで、跡継ぎ候補が女子とかまずあり得ないって。

 養子縁組をするの、基本的に下級貴族の家って聞くし。


 ん?

 俺は女だ。前世でも一人称は「俺」だったけど、勘違いさせたならすまん。


 一人漫才じみたことをぼんやり考えていたら、奥さんが俺をいきなり抱き締めてきた。


「アオイ、うちにいらっしゃい」


「へっ!?」


「こんなに賢い子なら、たとえ女の子でもお義父様も納得するわ。私の祖国では女性の家督相続が法的に許されるようになった、と聞きますし。この国もいい加減変わるべきなのよね」


「ええと……?」


 混乱する俺に旦那さんが笑顔で告げた。


「私の名前はレギウス・バーツ。バーツ公爵家の次期当主だ。妻は遠方の国の元王女で、今は公爵家の一員だ」


 ……は? 公爵家!?

 あんたら、身分高すぎだ!

 そりゃ、子供が欲しいって必死になるはずだよ!


「アオイを我が家に迎える。そして、鈍感な馬鹿どもを駆逐して、国を変えるか」


 おい、さらっと国の上層部のヤバい内情をバラしてない?


「そうよね? こんな小さい子が危機感を抱くぐらいだもの! 変わらなければいけないわよね!」


 いや、話がわかるのは俺の精神年齢は高いせいです。

 だが、それはさすがに言えないか。


「あの連中が北の大国の動きに危機感を抱かないのが悪い。アウローラ、アオイ。一緒に頑張ろうな!」


 確定かよ!?

 俺があんたらの子供になるのは!


 嬉し泣きしてるっぽい夫婦に何も言えない。

 親代わりになってくれた職員は魔眼持ちの俺の引き取り手が現れたことに、ほっとしてるし。


 仕方ない。口にした責任は背負わんと。


「はい。よろしくお願いします」


 こうして、俺はなんだか訳有りっぽい夫婦の子となる。


 なんだか、波乱万丈な人生のスタートを切ってしまったかな?

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