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魔眼は夢をみる  作者: 聖堂 天音
第一章 異世界に生まれ落ちて
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第18話 二人の叔父さん(2)

 昼過ぎ、荷物を片付け終わった父さんと母さんは王都に住んでいる知り合いに会うために出掛けていった。

 そしてバーツ公爵も夜会の打ち合わせでもあるのか、王城に用事があるらしく同じタイミングで出掛けてしまった。


 屋敷に残されたのは俺と二人の叔父さんのみ。

 屋敷にいる使用人は仕事中なので、暇を持て余す俺の相手などできるはずがない。


 なので居間の三人掛け用のふかふかソファーに仲良く座り、二人の叔父さんから面白そうな話を聞き出すことにしよう。


 オリヴァー叔父さんはディジャスでかなり遊んできたらしく、有名な観光地や流行りの演劇の話など明るくて楽しい話題を喋り続けてくれた。どうやら皇都で皇国貴族と会うだけの日々は退屈で死にそうな気分になる状況だったらしく、積極的に楽しそうな場所を見つけては、遊びに出掛けたんだとか。

 ヴォルフ叔父さんは母校であるエルシール魔導学園に関する質問にぽつりぽつりといった感じで静かに答えてくれた。

 当たり障りのない質問をぶつけまくって一通り聞き出した後、俺はあることを思い出して、オリヴァー叔父さんにたずねた。


「そういえば、オリヴァー叔父さんの武器、すっごくかっこよかった! パンッパンッパンって!」


 叔父さんたちに怪しまれないよう、小さな子供っぽい感じの口調に変えてるんだけど、これ、けっこう疲れるな。

 あ、でも、叔父さんたちには既にバレてるかもね。

 だって叔父さんたちの俺にする説明の仕方は小さい子向けじゃないしさ……。


「あぁ、あれは『魔法銃』と呼ばれる武器だよ。弓と違って体内の魔力量が多い者しか扱えない難物でね。魔力を一つの石の塊のようにまとめ上げ、単純に前方方向に打ち出して攻撃する魔法は知っているかい? あの魔法の威力と命中の精度を高めるために作られた補助道具なんだ。弓と違い、矢の補充の手間が要らず、魔力がある間は何回でも攻撃できる点が良いのだけれど一回の射出で必要となる魔力の消費がなかなか多くてね。保有する魔力が高い、一部の亜人しか扱えない物になってしまったのだよ」

 

「じゃあ魔力量が大事なら俺でも使える? 魔眼持ちって普通よりたくさん魔力を持ってるんだよね?」

 

 持ってる魔力は多いほうがいい、という部分が気になり、思わず素で質問をしてしまった。

 オリヴァー叔父さんは口調の変化に気づいてないのか、難しい顔でうなりながら尻尾を振って悩み始める。


「……どうなんだろうね? 魔眼持ちはかなり特殊だからね……。それに魔眼の魔法を使って国のために頑張ることが一番大事だから、無理に変わった戦い方をしようとしなくてもいいのだよ?」

 

「じゃあ、なんでオリヴァー叔父さんは魔法銃を選んだの?」

 

「それはね、私は国のために戦うにしても工夫が必要だからだよ。竜族が得意とする魔法は『精霊魔法』と呼ばれる少々変わった魔法でね。通常の精霊種から力を借りて、それを元に魔法を発動するのだよ。ヒト族もかなり頑張れば習得可能な魔法なのだけれど竜族は誰かに教わる必要もなく、皆が当たり前のように幼い頃に簡単に習得している。ただ、私はヒト族の血が強く混ざっているせいで、いまだに習得できない。でも魔力量は竜族を名乗るのに相応しいほど高いのだよ。だからあえて扱いの難しい魔法銃を選んだのだよ」

 

「ヒトの血が混ざる?」

 

「ふむ、そこの説明が必要か。そうだな……。たとえばカレンの娘、ヘルミーネちゃんは魔眼持ちじゃないけれど、精神操作、身体に異常を与える系統の魔眼の影響を受けない、と聞いたことはないかい?」

 

「……そういえばそんな話を聞いたことがあるかも……?」

 

 ヘルミーネは魔眼の影響を受けにくいって話、ちょっと前に聞いたな。そのヘルミーネはエリュンの屋敷で留守番をしていて、この屋敷には居ない。

 夜会の開催目的が国内の魔眼持ちの顔合わせ的な物らしいから、特殊体質だが魔眼持ちではない彼女には参加義務が無かったんだよね。

 

「カレンの夫、デイヴィスは精神操作系統の魔眼を持っていて、しかも敵に同系統の魔眼持ちがいてもその影響を受けずに済むよう周囲の者を保護できる優れた魔眼でね。その魔眼の能力の高さをイステンス国王に気に入られて近衛に選ばれた、という経歴を持ってるのだよ。そんな彼の魔眼の性質の一部を受け継いで生まれたのがヘルミーネちゃんだ。ヘルミーネちゃんは生まれつき、そういう系統の魔眼に対して強い抵抗力を持っている。彼女のように親の能力や性質の一部を受け継ぎ、正確にはそういった者ではないけれど、能力や性質を一部獲得してる状態を、『血が混ざる』と言うんだよ」

 

 魔眼持ちじゃないのに、その影響を受けにくいって説明が最初よくわからなかったけど、親から力の一部を受け継ぐって感じなのか。なんか格好いいな。


 左右色違いの眼は強すぎる魔力が体に影響を与えた結果なわけだから、魔力の量によっては魔眼持ちの見た目にならないってことか……?

 それでも魔力の変質が起きて、魔眼の劣化版みたいな特殊体質者になると……?


「不思議な話だね」

 

「そうだね。この世界には不思議なことだらけだ」

 

「うん! あとね、叔父さんの魔法銃ってどこで手に入れたの? そこも気になる!」

 

「おやおや、これに興味が尽きないようだね? これはディジャスの知り合いから紹介されて、皇都で買ったんだよ。購入にはカール陛下の許可が必要でね。許可を貰うのが大変だったよ」

 

「オリヴァー兄さん、竜皇様にお会いになったんですか!?」


 ヴォルフ叔父さんが驚くってことはディジャスの最高権力者かな?

 そのカール陛下の異名が竜皇?

 ゲームのキャラみたいだなー。


「メルヴィ皇女殿下との婚約話がなかなか進まなくて、暇で暇で仕方ない時があってね。暇潰しに皇都郊外に出て軽く魔獣狩りをしたくなったのだよ。ちょうど厄介な魔物の集団を討伐する人手を募る話が皇都を賑やかにしていてね。カール陛下に手伝えることはないかと訊ねてみたのさ。ついでにアヴィールでは手に入らない魔法銃を買いたいとねだってみたのだよ!」

 

「この場にレギウス兄さんが居なくてよかった。絶対怒ったよ? 『何やってるんだ、あの馬鹿は!?』って怒ったよ」

 

「兄上は跡継ぎとしてかなり真面目に生きてるからね。怒らないほうが怖いさ」

 

「怒られないように生きようとは思わないの?」

 

「思わないね!」

 

 はっきりきっぱり言い切るオリヴァー叔父さんの姿はかっこいいけれど、ちょっとキレる寸前のヴォルフ叔父さんの顔が怖い。

 

「オ、オリヴァー叔父さん! 魔法銃はアヴィールでは買えないの!?」

 

「うん。なにしろ魔法銃の製造過程は国家機密だからね。理由は二つある。一つは普通なら大した威力が出ない魔法を殺傷力の高い魔法に変えてしまう道具だから。どこの国だって気になるじゃないか。欲しいと思ったら、絶対ディジャス皇国の上層部を通す必要がある。裏で流れてくる非正規品は使用者の魔力を威力のある魔力弾に変えて撃ち出す機構その物が無い紛い物が大半だね」


 俺は叔父さんの説明に感動しながら、頭の中で情報を整理した。


 使用者の魔力が高いこと、魔法銃はディジャス皇国がきちんと管理している点を踏まえると、魔法銃はこの世界独自の進化を遂げて作られた物で間違いない。

 ただ、なぜよく知っている、魔力を使わない物理攻撃タイプのノーマルな銃はどうなったんだ?

 魔改造の過程で消えたのか?

 ただ、そうなると獣人亜人が居ない世界は素晴らしい世界だと言い切り、彼らが居ない世界の知識で作られた、殺傷能力が高い武器や兵器を尊ぶ黎明の思想に反しないか?

 うーん、わからん。もう一つの理由を聞けばわかるかな?

 

「ねぇねぇ、オリヴァー叔父さん、魔力を使わない銃は無いの?」

 

「魔力を使わない銃? 魔力を使わないでどうやって敵を倒すのだい?」

 

「無いの?」

 

「うーん、魔力の代わりになるものねぇ……。たしかに魔力を使わず、弾を物理的な物に切り替えられるなら、亜人ではない者も扱える道具になり、使い勝手が良くなるだろうけど単純な射出系の物理攻撃は大抵、結界を突破できないから意味がないと思うよ?」

 

「あっ!」


 そうだった!

 この世界は結界の魔法があるんだから銃器の類いは脅威じゃないのか!?


 結界の魔法は魔眼持ちじゃなくても魔法を学べる環境にあればとても習得が容易で扱いやすい魔法の代表格だった。

 たしかに普通の銃は意味がない。

 魔力を使わない、普通の銃が知られてないのはどんなに頑張っても結界に邪魔されて攻撃が届かない、という悲しい事態が過去に起きたせいなのかも。


「あー……結界かぁ……。それ、忘れてたよ……」

 

 魔眼とか転生のことに気を取られてすっかり忘れていた。ため息をついていると、ずっと無口だったヴォルフ叔父さんがいきなり口を開いた。


「アオイ、魔眼の種類によっては結界を壊せないこともあるから通常の魔法に関する知識も大事だよ。《塔》から送られてくる報告書が学園の図書館にまとめられているから読んでみるといい」


「《塔》?」

 

「エルシール魔導学園のような特別な学校がイステンスにもある。それが《塔》。イステンス建国よりさらに古い歴史を持つ上に、魔法に関するあらゆる研究の最先端がそこだ。イステンス王室が最先端の知識を独占することを防ぐために、《塔》の理事長は国境を越えて活動している魔術師組合の理事会を通して選ばれる、とても特殊な学校だ」

 

「イステンスにもすごい学校があるんだ!?」

 

「ああ、《塔》は本当にすごい。この世界に関する大抵の疑問の答えはそこから発表されるんだよ」


「私も《塔》から出た魔法銃に関する論文を読んだのだが、なかなか刺激的な言葉が並んでいたね。『魔法銃は詠唱破棄された魔法を撃つことに特化した、世界を変えた新技術の結晶である』とか」


「ああ、たしかに。兄さんとさっきやってみて実感しましたが、詠唱時間がないというのはなかなか厄介でした」


「魔法を撃つにはどんな魔法を使いたいのか世界に誓願する祈りである、『詠唱』が必要不可欠だからね。これが強力な魔法であればあるほど詠唱に掛かる時間は長くなるし、詠唱を最後までやりきらなければ魔法は発動しない。つまり、言い換えれば詠唱を邪魔されれば不発に終わってしまうのだよ」


「何回も聞いていて飽きているかも知れないが魔眼持ちはその魔法が持つ問題点を『無いもの』とするから重宝される。だが、その利点を道具で生み出せるということは?」


「世界の常識を変える、とんでもない新技術……!」


「そう、それが二つ目の理由なのだよ。だから魔法銃はあえて使い勝手の悪いままになっているのだろうし、皇国の管理下に置かれているのだと思う。そして魔法銃の機密は世界中から狙われている。この技術を悪用されればどんな悲惨なことになるか」


 二人の叔父さんの話によって予想外に重い事実を知る羽目になってしまった。

 そりゃ、極悪転生者の皇帝や魔法銃みたいな物騒な物を作られたらウヅキたちは警戒するよ……。


 おい、銃を持ち込んだ転生者よ。

 気楽にファンタジー世界に銃を持ち込んだのかも知れないけど、この世界の常識をまるっと変えてしまった罪は重いぞ?


 『魔法には詠唱は付き物です』みたいなルールの世界にそんなものを作らないでよ。戦争がより悲惨になるフラグ作ってんじゃねーよ!!!!

お久しぶりです。更新は不定期になりますがキリのいいところまで話は続けたいと思います。相変わらず誤字脱字等は多いので気づいたら直してます。

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