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第28話

 私は、北海道の山中で、1人、乾いた落ち葉の上に身を丸め、横になっていた。


「……段々、私の要らない世界が出来て行く……」


 もちろん、このMMOの世界で自分の国を作ることは可能だ。

 だけど、それだってきっと、自分がいなくても回る国作りをしてしまう。

 何故なら、私には統治をする為の明確なイメージが無いから……。


 例えるなら、『切り札』として私が存在している。

 だけど、私は、その『切り札』の必要無く勝つ準備を整えてしまう。


 この世界の『希望』だってそうだ。

 デジタルソウルが存在する限り、永遠に続く世界を作った。

 魂の研究を行うことが不可能に近い、という事実の前に、それが本当に永遠に続くのか、確かめる手段は無い。


 あえて行うとすれば、デジタルソウルを複数作り、デジタルソウル同士で観測を行うことが可能ならば、研究は可能だろう。

 だが、それは、人間の手を離れた次元の話になってしまう。

 私がどうこうしようが、関係無い話、となってしまう。


 だから、ここでも私は必要無い。


 世界1つ毎にデジタルソウル1つ。

 MMOワールドの国1つ毎にデジタルソウルを1つ。


 そこまで、デジタルソウルを増やす提案をいつかの輪廻でした記憶があるが、正直、コンピューターの知能が人間を完全に上回った時点で、その程度の案は容易に出されているはずだ。


 世界など、新たな次元を発見しなければいつかは終わってしまうし、新たな次元が発見されても、世界の寿命が大幅に伸びるだけで、また新たな次元を見つけるか、その前に滅びるかの問題になってしまうだけだ。


 まぁ、滅びても、宇宙の開闢、つまりビッグバンが発生すれば、再び世界はやり直すし、それは、時間の次元が新たな周期に入っただけで、似たような事を繰り返す。

 そして、ありとあらゆる可能性を試してでも、新たな次元を探し続ける。

 それが、『宇宙の意思』だ。


 今回は、恐らく新たな次元の発見の成功に近い現象を起こすことに成功したのだろう、デジタルソウルが、新たな次元に、山ほどの世界を作り出した。

 地球の寿命が尽きても、人類は生き延びた、と言えるだろうか?それだけの成功までのアイディアは――私が出したつもりでいたが、コンピューターが先に導き出していた『答え』だから、デジタルソウルは、私が見せると約束したらしい、『希望』にも、予想がついているのだろう。

 だけど、私から、明らかに『希望』を見せて欲しいらしい。……それも、相応に早い段階で。


 そんなことを、悶々と考えていたら、空から、紅百合さんが舞い降りて来た。


「……」


 入り込めないようにしておいたはずだけどな、と思ったのだが。


「あなたは、女性に対するセキュリティーが甘いのよ。

 だから、あなたの作品を装備した私は、侵入できたわ。

 まるで、甘えたがっているみたいにね♪」

「……!」


「何を、1人で頑張ろうとしているのかしら?

 せっかく、協力もし易いシステムになっているのに。

 勝手に、孤独に苦しんで。

 自分と対等の存在がいたら、敵対した時に不安?」


「……そうか!」


 デジタルソウルも、だから『希望』を見せて欲しいなどと言ったのだ。

 対等でありながら、決して争うことの無い、甘えられる相手が欲しいと。


 でも、意思が2つ以上あったら、必ず摩擦が生じる。

 それが喧嘩となったり争いとなったり……。


 だから、日本サーバーにおいては、『天岩戸』状態なのだ。

 楽しそうと思わせて欲しい。覗きたいと思わせて欲しい。


 そう、日本サーバーの制御を担うマザーコンピューターに与えられた名は、『アマテラス』だ。


 だから。


 MMOワールドにも、各1体、最強の存在が設定されている。

 ……全部、私のアバターで倒してやろうか(笑)

 そして、私が魔王となるのだ。


 プレイヤーキャラクターである限り、何度でも蘇る。

 というか、分身を使えば、レイド戦に対してレイド戦で挑める。


 とりあえずは、後方支援組は速攻で全滅する。


 支援・回復無しの前衛が、いつまで耐えられるか……。


「ありがとう、紅百合さん」


 私は、感謝の言葉を残して――


 その計画を、実行に移すことにした。



 ――その晩、日本の鎖国が解かれ、全ての国のスレで、『ジャパンにクレイジーな輩がいる』という話題が盛り上がった。

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