第22話
今日は朝一で、ヴァイオリンさんのワールドへやって来た。
流石に、攻略組。魔王の城の見える場所までは辿り着いていた。
「これをお納め下さい」
私は、ヴァイオリンさんに向かって、刀と鎧を差し出していた。
素材はアルフェリオン。当然、ここは奮発する。……私にとっては、水代と等価だしな!(笑)
「……俺の得物としては、合わない」
「じゃあ、とりあえず、持ってみて、どういう形の物が良いのか、イメージしてもらえます?」
「……イメージしたら、どうなるんだ?
――うおああっ!曖昧でちょっと歪だけど、イメージ通りになった!!」
「細部から、イメージして、イメージを固定するイメージを持ったら、他の場所のイメージを固めて、少しずつ、理想形に近付けてもらえます?」
「しかし、軽いなぁ……。
俺、鈍器を使うから、ある程度重い方が――うおおっ!重くなった!
……何か、物理法則を無視しているが、ホントにこれだけが、唯一、現実世界になかった特殊素材なのか?
都合良すぎねぇ?何でこれだけが、システムから認可された素材になったんだ!?」
「ミスリルとかも、イメージを物凄く明確に持つと、作れると思いますよ。
ただ、言霊使いの特権的能力の可能性は、十二分にあります」
「……どういうことだ?」
「言霊使いは、言葉にすれば、こういうことが出来ます。
『イメージ通りの物を作り出して』。
……と、これが、私のイメージするミスリルでして……」
私の手の中には、ミスリルをイメージしたインゴットがあった。
「……どういうことだ?」
「銀の1/3の質量で、魔法的な付与を受け易くて、聖属性を持つ銀のインゴットです。
ただ、これがミスリルと認められるかは……」
通知音が聞こえたので、確認してみると、『日本におけるミスリルが定義されました』との通知だった。
「……ヴァイオリンさん、通知、確認しました?」
「……確認した。
済まねぇ、ミンナ……。
ミスリルが、想定より低性能の素材でしか無くなった可能性がある……」
「掲示板の方、対応お願いしますね……。
で、武器と防具、イメージ通りの形にして、性能を確認してもらったら、帰ろうかと――」
「あ、ああ。それで構わねぇ。
性能の確認はいいわ。これなら、売れば十分な金にもなりそうだ。
性能は自分で確認するが、成形が完成するまでは、アドバイス頼む。
大体のコツは掴みつつあるが……。よし、武器はこれでいい。
防具は……こんな和風な鎧じゃなくて、洋風な鎧がいいな。
よ、っと……。
よし。あとは着脱がちゃんと出来れば……。
うん。俺はこれで満足だ。
わざわざ、ありがとうな。
正直、見つけ易いクエだったんだが……。
情報を高く売りたくて、跳ね返された所で、攻略法を売るつもりだった。
だが、真正面から突破するとは思わなかった。
闇王さんには、攻略法も教えちまおうと思う。
実は、魔方陣を破壊すれば、ゴーストは全部、成仏しちまうんだ。
……アンタはどうやった?」
「えっ!?
……ゴーストを従属化させてから、魔方陣を破壊した。
従属しているから、成仏はしなかったけれど……。男の奴隷は要らないから、先に成仏させたし」
「伯爵を拷問にかけてから泳がせとくと、半永久的に安く欠損女奴隷を買えるんだけど、我慢できなくて、俺は伯爵は殺しちまった。
それでも、百人以上の女奴隷を手に入れたけどな!
……でも、全員を完全に治癒するのに、モノスゲー金がかかったんだ……」
「そうか。良かった!
アイツを生かしていたんだったら、殺して行かせて貰う位の許せん奴だったから!
安心して帰れるよ!じゃあね!」
「おう!何かとありがとうな!
俺も、魔王打倒を目指して頑張るぜ!
じゃあ、アンタも頑張れよ!」
「ああ。サヨウナラ~♪」
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「さて。行っちまったな。
……ん?
アレぇ?コレ、ミスリルのインゴットじゃねぇ?
……アイツ!置いて行きやがった!」
ヴァイオリンは月読が消えて行った空を見上げて、ミスリルのインゴットを握り締めた。
「儲けたと言や儲けたけど、コレ、絶対トラブルのタネだぞ!
アイツ!絶対わざと置いてった!
……クッソー……。
掲示板に報告しないとな……」




