第1話
外出しても、別に変な目で見られたりはしない。
当然だ。私以外は、NPCなのだから。
患者の精神を考え、一般人は、必要以上に干渉して来ない。但し、最低限の配慮以外は、リアリティを追求したゲームであることも自慢としているらしい。
NPCが、子供相手に、変に商売っ気を出して声をかけて来る事も無い。
冒険者ギルドでは、新規登録担当の若い女性が簡単な説明をしてくれた。
登録料金も、ゼロである。――義務である辺りが関係しているのかも知れない。
名前として『月読』として登録した他、オススメの依頼を受けないかと聞かれたが、無用と断り、依頼の張り出しを見た。
恐らく、薬草採取等を勧められただろうが、私はとりあえず、戦闘をしてみたい。
難易度を見て、ゴブリン、コボルト、グラスウルフとあるが、最低でも3体単位で出て来るコイツラが最低難易度の敵というのが、どうも納得がいかない。
だが、どうでもいい。とりあえず、依頼書にタッチして”受注”とすると、早速、街の外の草原へと向けて歩き出したのだった。
……どうしてだろう。ゴブリン・コボルト・グラスウルフ、全てと同時に遭遇した。各、3体以上である。
愛剣『如意剣』をスピードと攻撃範囲重視の双剣『ゼファー・モード』にしてから、突撃して無双した。最初は、気持ち良く切り裂き魔と化していた。
だが、奴らは次々に仲間を呼び……。
徐々に疲れた私は、手を止めて、「死ねば良いのに」と呟いた。
それが、悪魔の言葉だと知ったのは、直後の事だった。
全てのゴブリン・コボルト・グラスウルフが全滅した。
通知有りの信号を、どうせ依頼達成の通知だろうと、一括で非表示にした。
その後、次の街まで、ゴブリン・コボルト・グラスウルフとは遭遇しなかった。
代わりに、レッドバニーとかいうウサギを狩って、インベントリに収納されたレッドバニーの肉が、調理したら美味そうだなと思いながら、次々と狩って、たまにコイツに蹴られてスゲー痛い思いをしたが、順調に日が沈む頃に次の街へと着いた。
あっ、盗賊もそこそこ出て来て、狩りながら塒を漁って、金品は十分に稼ぎました。
それは良いのだが。
依頼の達成料と、盗賊の討伐の報酬として、何故、私は、約6億マナクルという金額を支払われたのだろうか……。
NPC故、おかしな対応は取られなかったが、とりあえず、街で最上級の宿で食事を済ませてから最上級の部屋を借り、冒険者掲示板というものを期待して覗くことにした。