something hot
「好きです」
真っ黒なディスプレイに向かって言った。
そこには鈍く自分の姿が写っている。
なんてバカらしいんだろう。
たった一人で自分ではないなにかに向き合っている私。
なんてかわいそう。なんてかわいそうなんだろう。
目の前に佇む画面から自分の知らない自分が動き出す。歪んで写っていた自分の像さえ消えてしまった。
そこに私はいないから。
どれだけ言ってもムダ。
大して高望みをしてるわけではなく、なにか温かい物が欲しいだけだった。
画面が光ってる間は歪んだ自分も歪んで見える自分も忘れられるけど。映像が写ってる時間なんてそこまで長くない。画面の向こうの人はいいわね。ずっと光のなかにいられるし。
……なんて。
見てる世界が全てではないと気づいて欲しいのはこちらの方なのに。
なにか温かい物が欲しいというのは、高望みだとあとから気づいた。
そして、酸っぱいブドウを嫌っているうちになにもかも腐って消えた。