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5話 調査

食事を終えた俺たちは飲食店を出た。


時間は午後3時くらいであろうか?太陽が徐々に沈み始めている。


いつもジャガイモを売る日は大体昼間には売切れてしまうので、午後は暇を持て余す。

だから2日に一回、半休をとれる感じだ。


正直な話を言うともっと休みたいがジャガイモの収穫時期も限られているので今は休めないのでいる。


あらかじめ今植えてあるジャガイモをすべて収穫しておいて、好きな時に売れたらいいが、保管場所が今のところ宿屋しかない。


あの狭い宿屋にとてもじゃないがそんな膨大な量のじゃがいもを置いてはおけない。


しかも、連日ジャガイモ運びをしたら俺の体力が完全に持たない。


しばらくこの状況は打破できなさそうだ。


俺らは宿屋に戻り、オルトからもらった果物類をとりあえず部屋の隅に置いておく。


果物は俺が見たことのないものばかりで赤やら黄色、緑と派手な色な果物ばかりだ。


アイシャはこの中の果物は甘く美味しいものばかりだからと言って喜んでいた。


これで俺らの晩飯にメニューが増えたのだ。


そんな事をしていたら外は日が沈み夜になっていた。


そして、俺はアイシャを宿に置いて外に出た。


行く場所は西部地区の酒場だ。アイシャには帰りが遅くなるかもしれないから適当に寝ていてくれとい言っておいた。


酒場へ行く目的はオルト・ロウランの調査だ。


彼が本当に信頼できる人間か調べにいく。決してお酒が飲みたいからではないのだ。


そう久しぶりに贅沢をしたいとかそういう気持ちはない。本当はこの世界の酒がどんものかか楽しみにしているのは秘密である。


オルトについては商人との交流がありそうなので、商人がよく集まるという酒場で情報収集をすることにした。


そうして歩いていき、酒場に着いた。中に入るといくつかにわかれた丸テーブルを人が囲い酒を飲んでる。


大声を上げたと思ったら、勢いよく酒を飲むもの。椅子に座って静かに酒を飲むもの、泣きながら人と話しながら酒を飲むものと様々である。


客の中には剣を腰から下げている冒険者らしきものいる。


俺は酒場の中を進んでいきカウンターで、適当に酒を頼む。


そして、ちょいと味見。


うっ。かなり度数が強いらしい。

飲むと口の中が若干ヒリヒリする。

ウィスキーに近い感じだ。

あまりガバガバ飲めそうな酒ではない。


とりあえず俺は当たりを見回してみた。


すると目立つ会話をするものを発見した。


「最近俺ん家の売り物が全然売れねえんだ!」


「まあ、今の時期じゃ売れないよ」


大声でいかにも商人ぽい会話をしている、二人組みののテーブルと俺は向う。


太った中年の男とひょろっとした体系の眼鏡をかけた中年の男が酒を飲みながら大声を上げて話しをしている。既にもうかなり出来上がっているらしい。


そして、俺は男らに近づいて言った。


「ご一緒させてもらってもいいですか?」


「んあ?兄ちゃん俺らみたいな貧乏商人と酒飲んだってなんもでねーぜ」


「君と一緒にしないでくれ!」


太った中年が俺に返事をすると、眼鏡の男がツッコミを入れる。


まずは本題からじゃなく会話に参加する事にした。


「お二方は商人とお見受けしますが、もしよかったらなんですが、私は最近商人になったもので何かご教授してもらえないかと・・・」


「なんだ兄ちゃんも商人か。俺に話しかけてくるなんていい目してんじゃねーか。そんなら俺がひとつ商人とはどういものか教えてやろうじゃねーか!」


「こいつに商人について聞いても、破産するのがオチだよ」


「うるせーぞザック!」


そう言って太った中年商人がザックと呼ばれた眼鏡を掛けた商人を睨みつける。

ザックはそんな中年商人を無視して俺に話しかける。


「しょうがないから僕が教えてあげよう。僕はザックだ。で、そこの太ったやつはガジルだ。あんた名前は?それと今何の商売してんだい?」


「ハルトです。今やっているのはジャガイモ売りです。」


「君があの東部の市場で今、話題になっているなジャガイモ売りか」


「ほー」


やはり俺のジャガイモ売りはこの西部地区の商人たちの中でも話題になっているらしい。

ガジルは俺がジャガイモ売りだとわかった瞬間、興味深そうに不適な笑みを浮かべる。


「そんな今話題のジャガイモ売りが僕らに聞くことは無いんじゃないのかい?」


「いえいえ、そんなことはないですよ。まだ自分は日が浅く商人としてはまだ未熟な人間です。」


「随分謙虚だね。ガジルも彼を見習ったほうがいいんじゃないのかい?」


「ふん。余計なお節介だ!なら教えてやろう商人の心構えってものをよ」


そして、俺、ザック、ガジルの3人での会話が始まる。



会話を始めてから1時間くらい経った。酒が入っているせいか説教じみていて愚痴のような話が多いがこれはこれでためになる。


だがいつまでも本題に入らないわけにはいかないので俺は聞いてみた。


「ところである人について聞きたいのですが・・・」


「ある人?それは商人かい?」


「ええ、まあ」


「兄ちゃん。商人について教授してほしいって言ってたがそっちが本題かい?」


「いえ、それもありますが、今までの話もためになりました。」


「ほう、でそれは誰なんだい?」


「オルト・ロウランって人を知っていますか?実は商談の話がありまして。」


俺がそう名前を言うと二人は急に黙り、難しい顔をし始めた。


そしてザックが暗い雰囲気を出しながら口を開いた。


「また、やっかいなのに目をつけられたねー」


そう言われ、今俺はやっぱりやばい奴だったのかと思った。


「よしわかった。兄ちゃん今日は俺らが兄ちゃんに有益な情報をオルト・ロウランの事も含めて全部話してやる。その代わりここをおごってくれないか?」


ガジルが急にそう言ってきた。ガジルはオルト・ロウラン以外で俺に有益な情報を知っているらしい。

それが酒代のおごりで済むなら安いものだ。俺は快く了承する。


「ええ、ぜひお願いします。」


「おっ兄ちゃんわかってんじゃねーか!」


ガジルは酒の追加を始める。そして、頼んだ酒を勢いよく飲む。


俺はまずオルト・ロウランに持ちかけられた商談について話した。


そして、ガジルが彼について語り始める。


「オルト・ロウランはこのあたりでもそこそこ有名な商人だ。家は下級ながらも貴族の出でな。商人だけじゃなく貴族にもコネが効く野郎だ。それでいて今もかなり商売繁盛しているらしい。」


ここだけ聞いてみるとオルトが俺にもちかけてきた商談で、自分には力があると言っていたがそれも嘘ではないらしいと判断できる。


「だが奴の商売のやり口はタチが悪い!」


「タチが悪いというのは?」


「野郎が商談を持ちかけるのは大体あまり力を持たない商人や貧乏貴族、それと平民だ。奴は金になるものは何でも商談で出す野郎でかなり手広くやっている。奴はわざわざ自分より力を持たないような連中を相手にしてそいつらに美味い話を持ってくる。」


「それを聞くと凄い温厚で優しい人に思えるのですが・・・」


「待て。話はこっからだ。奴は力を持たない連中にいい商談を持ってくるがそれは最初に恩を売るためだ。

そうやって恩を売ったことを使い、奴は商談相手を越え太らせて永遠と金を巻き上げるのが手口だ。長期の契約を結ばせて条件もどんどんと厳しいものにしていくんだよ」


つまり長期的に相手をして利益を上げる戦法なのか?それは前の世界でもよくあることだ。条件を厳しくしていくというのは少し頂けないが。


そう思っていると隣のザックが急に話始めた。


「僕の商人仲間でオルト・ロウランの商談に乗ったものがいてね。彼は最初オルトの美味しい商談に大喜びしたんだけどねー、契約を結んで最初は上向きだったが、最初の恩を被せた事をいいことにオルトが提示してくる条件がどんどん厳しくなってさ。それから落ちる一方さ。最終的にはその商人仲間は彼との縁を切ろうとしたが家で雇ってるんだが、自分で個人で雇っているんだがわかんないけど、武闘派の人間を何人か連れて来て脅されたらしいんだ。」


「それだったらオルトとの最初の商談を恩を作らない状態にして、その後は契約条件の変更に首を振ればいいんじゃないんですか?」


「オルトは契約した相手を徹底的に調べて弱みを握るらしい、それで彼の連れる武闘派の人間を使って危害を加えてくるらしい。他の商人仲間は娘を人質にされかけたと」


オルト・ロウランという男はなんとタチが悪い男なんだ。もはや前の世界でよく見るドラマのヤクザとやっていることは変わらないじゃないか。


そうなると俺の場合はアイシャを人質に捕られるってことになるのか?ただでさえ命を狙われている彼女をこれ以上危険には合わせられない。実に危ない奴だ。


「つまり奴の商談のポイントは少し不利益が出てもいいから最初の契約を結ぶことだ。少なくとも奴は貴族だ。弱いものを相手にしているんだから優位にこちらを攻撃できる。それで後から好きなように相手から利益をぶん取れる。一度くっ付いたら血を根こそぎ吸っちまう寄生虫みたいな野郎だぜ」


ここで話が聞けてよかった。これでオルト・ロウランとの商談は完全に破談だ。俺の一生を台無しにされるところだったぜ。


俺はとりあえずお礼を言っておく。


「ありがとうございます。とてもいい事を聞かせてもらいました。」


「おうよ。あと兄ちゃん。兄ちゃんのとこでやっている商売を狙っているのはオルト・ロウランだけじゃねえんだぜ」


「そうなんですか?」


「そりゃあそうさ。今まで食材として見てこられなかったその辺に生えてる植物が食材になっちまったんだ。商人たちは既に兄ちゃんの噂を聞いて自分たちも商売を始めようと準備を始めてる。早い話オルトから持ちかけられた商談じゃないがそろそろ動いたほうがいいぞ」


最近、自分でも少し心配していたがやはり周りの商人たちは黙っていないらしい。これは早く商売のステップアップしたほうがいいかもしれない。


その後、ザックとガジルは自分らが持っている俺に関わりのある情報を次々と話し始めてくれる。

この二人に聞いたのはかなり当たりだったのかもしれない。


そして、俺らは時間が頃合になったので解散する事にした。

酒も入り若干いい気分だったがおごった会計を見た瞬間、俺の気分はどん底に落ちていった。


まあ、今日はよしとしよう。有益な情報が手に入った。あとはオルト・ロウランとの商談を断るだけだ。

そして、俺は宿に帰宅するのであった。





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