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11話 ちょっとした勇気

(アイシャ視点)


私は今、東地区の街中を一人で歩いている。


ハルトさんは今日は一般人が利用できる東部にある図書館に籠ると言って朝早くに出て行った。


色んな本を読んでこの世界の知識を付けたいとか。


ハルトさんはとても勉学に前向きに取り組んでいる。


最近ハルトさんに仕事の合間、この世界の言葉の読み書きを教えていたが3週間程度でマスターしてしまった。


私はその学習する早さに驚き褒めると、


「危険物取扱者乙4の試験を一夜漬けで受かった俺を舐めるなよ!」


と、満足そうな顔で笑って言っていた。その後、実際そんなに凄いことではないけどね、と後から訂正していた。


私は危険物取扱者乙4?というものがどのくらい難しいものかは知らないけど、ハルトさんの事だし、とても難しい試験なんだと私は思う。



ハルトさんは異世界から来た人。最初は信じられなかったけどジャガイモやラーメンみたいなこの世界にない知識を聞いていると本当に異世界人なんだと思う。


だけど、ハルトさんは必要以上の異世界の話はしない。その他の文化や食事、そして自分の家族や友人の話も。

私が信頼されてないかもしれないけど、多分聞かれたくない事があるからと私は思う。だから私はそれ以上の事には踏み込まないようにしている。


正直深く聞き入って嫌われてくないという気持ちが強い。

だから私はこれ以上深く聞こうとしないようにしている。



今日はハルトさんから息抜きがてらに買い物に行って来れば?と言われて銀貨10枚と大金を渡され、街を歩いている。


少し厄介払いされてる気がするけど、気にしないようにしよう。


私は何に使おうか考える。


んー思いつかない。



私もやっぱり一緒に図書館で本を読もうかな。

そう思い歩いていた方向から真逆の方向に振り変える。


怪しげな人影が見えた。二人組の男が私が振り向いた瞬間、路地裏に入り隠れていくのが見えた。

偶然?いや、私への復讐者かもしれない。

警戒した方がいいかも。周りには他に今、人が見当たらない。

周り道をしてもいいから人がいる大通りにでたほうがいいかも。


そう思い、また体を180°回転させて元の向きに変えようとする。

その瞬間、


「ふぐっ!?」


いきなり口をゴツイ手で抑えられた。

そうすると路地にいた二人組の男がこちらに歩いてきた。


まさか3人いたなんて・・・・


男の一人が私に近づき、頭に被っているフードを取る。


「おう、当たりだ。金髪の髪に蒼い瞳。12、13歳くらいの幼い少女だろ、こいつに間違いない」


「ふぐうっ、ふん!」


抵抗しようとするが、体を抱き付かれる形に固定され、男ががっちりと口の周りをホールドしている。このままだと息をするのも辛くなってくる。

魔法を使おうとするが口と手が使えない状態じゃ魔法は使えない。


「よう、嬢ちゃん悪いな。ちょいと眠ってもらうぞ」


そう男が言った瞬間、もう一人の男が木でできた1メートルほどの長さの杖を構え呪文を唱える。


「生宿るものよ静かに眠りたまえ、ドルミーレ」


私の瞼がどんどん重くなり、やがて意識が消えた。





起きるとアイシャは建物の中にいた。


部屋の中はうす暗く、埃が所々散っていて大きく息を吸うと咽る。

目の前に扉があるが勿論、鍵がかかって開かない。


木でできた床にねっころがる形で、口に布を噛まされ、縄で体をぐるぐる巻きにされていて、腕と足には鉄でできた手錠をさせられている。

手錠は魔封石でできた手錠で一定量の魔力まで、吸収することができる。

アイシャの魔力なら壊せない事もないが、体がけだるい。

多分寝ている間に魔力を吸われたかもしれない。いつもの3分の1程度の魔力しか残っていないようだ。

これでは魔法を使えない。


現状は絶望的。自力の脱出は不可能。

そう思った瞬間、ハルトが助けてくれるかもと考えたが今日は一日中図書館にいると言っていたので希望は薄い。


帰って宿に私が居なければ気づくかもしれないが、それでも見つけられるかわからない。

ここが王都内でなければ、発見は不可能だろう。


こんなことだったら一緒に図書館にいるべきだった。

でも、後悔しても遅い。


アイシャは覚悟した。自分は死ぬんだと。

復讐者の手によって殺されるんだと。


楽しい事よりも辛い事のほうが、多い人生だったが、でも、ここ1か月間くらいはハルトと一緒にやるジャガイモ売りは新鮮で楽しかった。

もうそれだけで満足しているわけではないが楽しい思い出もあった。

もうそれでいいかと。


最後に願いを叶えてくれるのなら、生きているかもしれない最後にアイシャを逃がしてくれた従兄に会いたい。

あの時助けてくれてありがとうと伝えたい。


あと、ハルトにもお礼を言っておきたい。今までありがとうと。


あとラーメンも、もう一度食べたい。あれほど美味しいものを今まで食べたことがない。あの味を味わいたい。


もはや、願いが一つでは足らなくなってしまった。まだしたいことが一杯ある。


それがもうできないと思うと気持ちが沈み悲しくなって涙が出てきた。


まだ死にたくない!強く心の中でそう思う。


そう思っていると突然ドアが開いた。


まさか!?ハルトが!?


そう思ったがドアを開けた主は違う人物だった。

おかっぱ頭の髪型の細い体のラインをした気の弱そうな男だった。

多分誘拐犯だろう。


男はアイシャに近づいてきた。だが、そこで予想外の行動に出た。


「静かにして動かないで。今全部外すから」


男はそう言って、アイシャに拘束している縄をほどいていく。


「あなたは誰?」


口に噛まされていた布を外された瞬間、男に問いかける。


「僕はバルテ。誘拐犯の奴たちと仲間なんだけど、訳があって君をここから逃がす」


「えっ。どうして?」


「僕の仲間は悪い奴に騙されているんだ。この誘拐だって本望じゃないはずだ。だからちょっと都合がいい話だけど、ここから逃がす代わりに今回の事を他言無用にしてくれないかい?そこそこの金額のお金を渡す。だから頼む」


「それはいいですけど、雇い主の名前だけでも教えてくれませんか?」


アイシャの拘束を解きながら質問にバルテは答える。


「ん、まあいいけど。オルト・ロウランさ。君も知ってるだろう?」


オルトの言葉を聞いた瞬間、ハッとアイシャは顔を驚かせた。

自分を誘拐したのは復讐者ではなかったのかと。

確かにオルトが誘拐をするという話を聞いてたが今回の件でそこまでされるとは思わなかった。

この様子ならハルトには迷惑を掛けてしまうのは心痛いが自分が死ぬ心配はなさそうだ。


アイシャは思わずホッと安心する。


だが、それはバルテの言葉で覆されてしまう。


「あと今回の件はやばい奴が関わっている。君を殺すとまで言っている奴だ」


「!?その人の名前は!?」


そう言って名前を聞き出そうとした瞬間、ドアの方向から声が聞こえてくる。


「おい。お前何してやがる?」


声の方向に目を向けると男が立っていた。

茶髪のオールバックの髪に獣が睨んでいるような黄色い瞳。体格は大柄で大きな銀の胸当てをしていて、赤いコートを羽織っている。

そして、刀身が太い大剣を背中に背負っている男。


「バイル・ウルフェン・オーリン・・・・」


その男はオルネット家に復讐の火を燃やし、何人ものアイシャの家族を葬った男の名前だ。


「よう。久しぶりだな、アイシャ・メイア・オルネット」


そして、その後ろからもう一人、スキンヘッドの頬に顔に大きな切り傷を持つ男が顔を出してきた。


「おいバルテ!てめえ何してやがるんだ!?今回は留守番してろって言っただろうが!?」


留守番を命じたはずのバルテの姿を目撃したダルバスは激怒して怒鳴り散らした。

だが、バイルはそんなダルバスを放っておき、アイシャの方に向かって歩き始める。


「まあいいだろう。この娘は俺が今斬る」


バイルがそういうとダルバスが慌てて、それを止めにかかる。


「おい、馬鹿!それは話が違うだろ。もう一人の奴を誘拐した後に無事を確認させてから殺すんだろ。今殺したら人質にした意味がなくなっちまうだろう。」


「そんなもの俺には関係ない。俺はこいつを殺せればいい」


そう言ってバイルは大剣を片手で抜いてアイシャに向かって構える。


「この子は僕が守る!」


バルテはバイルに対峙するようにアイシャの前に立つ。


「おい、バルテ!てめえ死にてえのか!?お前なんかじゃそいつなんかに敵うわけねえだろ!」


「そんな事はわかっているよ。でも、僕はダルバスさ・・・いや、ダルバスたちにこれ以上悪行の道に進んでほしくないんだよ!」


「おめえは馬鹿じゃねえか!?」


そんな言い合いをしているとバイルは一つため息を吐く。


「お前には別に用はないが、死にたいなら殺してやる。かかってこい!」




9話、10話ちょっと修正を入れました。

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