10話 最悪の刺客
そこは賑わう酒場。
アルデミラン王国、首都ラプソル西部にある、冒険者がよく集まる酒場だ。
この酒場に来る冒険者はガラが悪く、毎日のように暴力沙汰が起こる、冒険者以外からは忌み嫌われるところである。
そんな冒険者の怒声と暴力が飛び交う酒場で、7人の男たちが木でできた、大きな四角いテーブルを囲って座り、静かに酒を飲むものがいた。
見た目は全体的に周りのガラの悪いものたちと同じような見た目をしている。二人を除いて。
その中で一番ガラが悪く見える、スキンヘッドで頬に大きな切り傷が目立つ男が、いきなり酒のグラスをバンと置いて急に叫びだす。
「で、主様よー。計画はとん挫したけどこれからどぅすんだよ!?」
「そんな事はわかっている。僕だってここまで予想外な事が起きるとは思わなかったんだ!」
主様と呼ばれた男、それはオルト・ロウランである。
いつもニコニコした表情が消えて、今は深刻層な表情をして、頭を抱えている。
「俺らがあのジャガイモ商売をやれば、奴らは必ず商談の復縁をお願いしてくるって計画っだッたじゃねーか。それが商談どころかあっちは手を引いちまって計画が崩れちまったんじゃ、どうしようもねーだろ。」
ロウランは男の言う事に何も返せない。
今、テーブルを囲んでいる七人の男たちはオルト・ロウランを除いて、全員が元冒険者で今はオルトの護衛廉荒行専門で雇われている。
そんな男たちはオルトに儲け話があるから手伝ってくれと言われて、手伝ったのはいいものの計画がとん挫し、採算が合わなくなり、オルトに怒りをぶつけている。
「ジャガイモ商売だって儲けられねえじゃねーか。あのジャガイモ売りを妨害するために、あんだけ大量に生えていたジャガイモを2日でとってきたんだあ。それもわざわざ人手が足んねーからって、下級冒険者を雇ってまでだ。あんな使い物にならない連中でも20人も雇えば相当な金額になっちまう。まだ、売れ残っているジャガイモを売ったって赤字だよ!」
オルトたちはジャガイモを収穫する時、わざわざハルトたちが行く収穫場に跡を付けていき、ハルトたちが去った後、下級冒険者を雇い、そこに生えているジャガイモを急ピッチで掻っ攫っていた。
全てはハルトたちの商売を妨害し、商談を成立させるためだ。
だが、計画はとん挫した。
このスキンヘッドの男が言った通り、このままだと赤字まっしぐらである。どうにかしなればいけない。
そこで、オルトは苦しそうに口を開けた。
「やはり強行的な手段を使うしかないね・・・」
言った瞬間、全員が難しそうな顔を浮かべた。
「まさか俺らに誘拐しろって言うんじゃないだろうな?」
「そのまさかだよ。もう手段を選んでる暇はないんだよ。」
「今までの誘拐とはわけが違うんだぞ?いつも相手が契約を破った事を理由付けして、担保として誘拐をやってきたが、今回はあっちとは契約した仲じゃねー。商談相手のいざこざに王国の騎士は滅多に介入してこないが、今回はうちが一方的に付きまとってる形だ。王国騎士にチクられた一発で終わりだぞ」
そう、オルトは何度かこの雇っている男たちに誘拐を指示したことがある。だが、それは契約相手への払えない代わりの担保として誘拐したと理由を付けている。
そのやり方に他のものたちが黙っているか、というとそうでもないが商談相手同士のいざこざに、わざわざ介入するものはほとんどいない。王国騎士を含めてだ。
理由は単純に厄介ごとに巻き込まれたくないからだ。何も知らないものたちが頭を突っ込んだところで面倒事が増えるだけである。
だが、誘拐した相手が商談相手でもなく、一方的に付き纏ってやった行為ならば別だ。
王国騎士に知られれば、直ぐに正義の鉄槌が下されるだろう。
「チクられなければいいのさ。同時に二人誘拐すれば話は済むよ。二人が同時に消えればどこかの町に移動したと周りも思うだろうさ。そうすれば無駄に詮索されることもないだろ。」
「簡単に言ってくれるぜ。だが、それじゃあ割に合わねえ。下手したら俺らの首が飛ばされちまう。俺にはあんな男がそんな価値があるとは思えない」
「僕にはあるんだよ。利益的にもだが、何より僕をここまでコケにした男を野放しにするつもりはない。報酬はいつもの2倍弾むよ。君たちも今更怖気づくこともないだろ誘拐くらい。僕は雇い主だ、命令に従ってもらうよ」
スキンヘッドの男は一瞬真剣な顔で考え込んだ。そして、不満げに言う。
「チッ。わあったよ主様よー。報酬を弾むなら話は別だ。ここは2.5倍にするんだったら、この話を受けてやる」
「いいだろう。その代り失敗は許されない。計画は念密に考えるとしよう」
やっと話が纏まったと思い、みんなで誘拐の計画について考え始める。
だが、ここで一人の男から予想外の言葉が出てくる。
「や、やっぱり・・誘拐はやめた方がいいんじゃないのかなー・・・」
このテーブルでの中でオルト以外の唯一ガラの悪そうな見た目をしていない気弱そうな男は言った。
「バルテ、てめえ今更何言ってやがる。偽善者みてーな事を言うんじゃねー。冒険者崩れの俺たちにはもう仕事がねんだぞ。それともまだ冒険者に未練があるのか!?いつまでも冒険者証明書のタグを首から下げやがって」
スキンヘッドの男に罵られた男の名前はバルテ。見た目はうす暗い緑色のローブを身に纏い、首からは穴の開いた冒険者タグがぶら下がっている格好をしている。小柄でおかっぱ頭をしていて、いかにも気が弱そうな男だ。
「いや、そういうわけではないけど・・・」
「なら黙ってろ!」
バルテと呼ばれた男はスキンヘッドの男に罵られ、委縮してしまった。
バルテは元Cランク冒険者だった。ちなみにここにいるメンツはバルテ以外元Dランク冒険者だ。
冒険者時代はここにいるメンツとは別のパーティーで活動していた。
4人で構成されるCランクパーティでバルテは魔術師で後衛担当をしていた。
駆け出しの頃からの付き合いでとても仲のいいパーティーで、冒険者という職業を謳歌し、本当に冒険者になってよかったと毎日のように思う日々を過ごしていた。
そんなある日に悲劇が起きた。
いつものように討伐をクエストを受けて、いつものようにモンスターを狩りに出かけた。
その行く道でいつも通り直ぐにモンスターを狩って帰ろうと仲間たちと話していた。
だが、その日はいつもとは違った。
狩り馴れていたオークを狩ろうといつものように森に入っていったら、そこには予想外の魔物がいた。
森の蛮族王、ジュラ。
森でもっとも強いとされている魔物だ。見た目は人型で、木でできた仮面を被り、茶色に焦げた肌を持つ。体長は2メートルを軽く超え、丸太のような筋肉でできた、手足を持っている。
そのモンスターの難易度はSランクパーティーで戦える相手。
つまり竜種に匹敵する魔物だ。ジュラにとってのCランクパーティーなどもはや虫けらでしかない。
最強の魔物が2本の足で立ち、バルテたちパーティーを見つめている。
そして、誰かが逃げろと言った。
その声で全員で一斉に走り出す。バルテも無我夢中で走る。
だが、走ってる途中、何度か悲鳴が聞こえた。仲間たちの悲鳴だとわかっていても彼は走り続ける。
そして、やっとのことで森を抜けきった。そのまま足早に街に戻っていく。
あれから3日経った。バルテ以外は誰も帰ってこなかった。
死んだのだ。彼は確信した。亡骸は見つからなかったがもう死んでいるだろうと。
彼は泣いた。何日も何日も毎日泣いていた。
そして、1か月程経って心の整理がつき、冒険者ギルドの酒場に顔を出すことにした。
そこでとある男に出会った。スキンヘッドの男だ。
名前はダルバス。
バルテと同じ冒険者ギルドに所属する5人組のDランクパーティーのリーダーだ。
バルテを見ると落ち込んでいたのを励まそうと彼は飲みに誘ってきた。
バルテは前々から顔なじみだったダルバスの誘いにもちろん了承した。
その日は飲み明かした。バルテは今まで抱えていた不満や、後悔をダルバスとそのパーティーメンバーに打ち明けた。
そうすると全員が親身な顔をしてバルテを励ますように声をかけてくれた。
その飲みの席でダルバスに言われた。
「お前がもしよかったら、俺らとパーティーを組まないか?」
正直バルテはまだあの恐怖から克服できなかったが、だからといって、いつまでも停滞しているわけもいかないと思い、その話に乗った。
この人たちとなら、また信頼できる。また、あの時のように冒険者ができると。
ダルバスたちパーティーが主に受注しているクエストはゴブリンの群れの討伐だ。
ゴブリンは一般的に弱い魔物という認識だが、群れになると連携的な行動をするようになり厄介な魔物である。
ゴブリンはジュラと合った森に基本生息しない。理由は簡単で彼らは森では弱すぎるのだ。これでもうジュラに合うことはない。ジュラは森からでない習性を持っている。ゴブリンは動物が多く住む森に集落に立てて暮らしている。
そのため、Dランク冒険者のダルバスたちでもミスをしなければ仲間が死ぬことは皆無であろう。
前と同じ思いをしたくないと思っている、バルテにはぴったりだった。
そして、ダルバスパーティーと共にクエストを受ける日々が始まった。
ダルバスパーティーとクエストを受ける日々は物凄く順調だった。毎日のようにゴブリンを狩り、その金で毎日のように酒場でバカ騒ぎをする。
バルテは思った。また自分に居場所ができたと。
この人たちとパーティーが組めてよかったと。おかげで昔のように楽しく過ごせている。
それから約半年が経ったある日、バルテは体調を崩した。
高熱がでて、全く動けない状態だった。
だが、仲間たちはいつものようにゴブリンを討伐をするとバルテを置いて、出て行った。
バルテは妙な胸騒ぎがした。
自分がいない間に仲間たちを失ってしまうんではないか?と。
あの時とは違ったが、一人の心細さにそんな事を思ってしまった。
だが、結果はバルテの考えは予想外の方向に進んだ。
ダルバスパーティーは帰ってきた。だが、その表情は重苦しいものだった。
無事帰ってきた事にバルテは安堵したが、ダルバスたちの表情を見て、どうしたのか聞いてみた。
そして彼らは話した。
ダルバスたちはいつものようにゴブリン討伐のクエストを受けようと冒険者ギルドにやってきた。
そして、いつものように掲示板に張り出されているクエストを受けようと受付嬢と手続きを済ませて外に出ようとしたところ、いきなり若い少年たちで構成されたEランクパーティー冒険者3人にいちゃもんを付けられた。
いきなりやってきて、それは自分らが受けようとしたんだとか、だから今すぐそのクエストを寄越せと言ってきた。
勿論ダルバスは断った。
だが、ダルバスが断ると駆け出し冒険者は、
「なら勝負だ。早いもの勝ちだ!」
そそくさと勝手に出て行った。
ダルバスはイライラしながらもその勝負に応じてやろうと仲間たちと話した。
そして、狩場へと向かう。そこはゴブリンの集落だ。
近くまで寄ってみると先程いちゃもんを付けてきた、冒険者たちを見つけた。
彼らはゴブリンたちを尻目に草陰に隠れて、作戦会議をしている様子だった。
ダルバスはそれを見るといい事を考えたと言って仲間たちとある提案をした。
その提案とは、先程の鬱憤を晴らすためには自分らが勝つだけじゃ面白くないと言い、ゴブリンを使い陽動して、彼らに奇襲を掻けさせて最後は横取りをすると提案した。
仲間たちは悪そうな笑みを浮かべて、その話を了承した。
基本、冒険者同士の獲物の横取りというものは禁止だが、援護するという名目で加担するのは許可されている。
その場合は取り分の話合いは必要になるがダルバスはもはや先程の鬱憤が晴らせればいいと思っていた。
そして、一人の仲間がゴブリンの集落に石を投げつけ、Eランク冒険者パーティーの方に誘導する。
Eランク冒険者たちはゴブリンたちが近づいている事に全く気付かず話し込んでいる。
やっと気づいた時は、もう遅かった。数十匹のゴブリンの群れが自分たちに短刀を構え向かってくる。
それを彼らは慌てて飛ぶように驚きながら、武器を構えて迎撃を始める。
そんな彼らを見ながらダルバスパーティーは指を指して笑った。
彼らはゴブリンと戦いながら、恨めしそうにこちらを睨み付けていた。
「ざまあ、見やがれ!!」
ダルバスは上機嫌に言った。
だが次の瞬間、少し状況が変わった。
Eランク冒険者パーティーの一人がゴブリンの短刀を使った斬りつけを諸に食らっていた。
斬りつけられた腹から出血をし始め、口から血を吐いていた。
そう。所詮Eランク冒険者程度の実力の彼らにはゴブリンの奇襲はかなりの脅威だったのだ。
このままだと1分足らずに蹂躙される。
ダルバスたちは流石にそれはまずいと思い、ゴブリンたちを討伐しようと走る。
勢いをつけて、みなゴブリンの群れに飛び込み狩っていく。
20分後、ゴブリンを狩りつくした。
状況は非常にまずい。ダルバスパーティーは軽傷で済んでいるが、Eランクパーティーの方は二人は何か所か傷を負っているがどうにか歩ける程度レベル。
一人は完全重症。腹と口から大量に血が出て、ハアハアと肩を揺らして、息をしている。
ダルバスは急いでEランクパーティーメンバーを連れて街へ戻り、治癒術師の元へ連れて行った。
結果は全員助かった。
ダルバスパーティーは安堵した。
だが、その安堵は直ぐに消えた。
自分たちが罠に嵌めた冒険者パーティーは貴族の子だった。彼らは
「俺らを陥れた事を絶対後悔させてやる」
そう言い残し、その日は去っていった。
そして、今バルテに会いに戻ってきたところだ。
全員が申し訳なさそうにバルテを見つめる。
彼らは今回の件でパーティーメンバーであるバルテまで厄介事に巻き込まれるかもしれないと思い、申し訳なさそうにしているのだ。
「なら、大丈夫ですよ」
「おい、でも俺らの所為でお前に迷惑かけちまうかもしれないんだぞ!」
「みんな無事に帰って来れたならそれでいいんですよ。僕も責任取りますんで皆さん一緒にいさせてください」
そう言ってバルテは笑って見せる。もし、あの場にバルテがいたらこんな事にはならなかっただろう。
止めるべき自分があの場にいなかった。だから自分が悪いんだとバルテは思った。
自分は信頼できる仲間がいればそれでいいそんな気持ちだった。
それから3日程経って、冒険者ギルドに呼び出された。
処分の結果を出された。
結果は冒険者を永久はく奪。
そう言い渡された。貴族が関わってる割には軽いなと全員が思ったが、それはあのEランクパーティーについて色々と前からクレームを受けていて、冒険者ギルド困っていたらしい。
そのため、ギルドが貴族からある程度擁護をしてくれたらしい。
ちなみに、貴族のEランクパーティーは解散。子供をこれ以上危険な目に合わせられないと貴族の親が連れ戻したらしい。
冒険者ギルドとしては厄介払いができたと喜んでいるのだろう。
そして、パーティー全員が職を失った。これからどうやって食っていこう。そう思っていたときに出会ったのがオルト・ロウランだった。
もうあれから3年が経つ。
オルトにたまに悪行の片棒を被らされるが仕方がない、自分はこのメンバーと過ごせればいいとバルテは思う。
そう思ってオルトの命令を聞いてきた。だが少し異変に気付いた。
パーティーメンバーの素行が段々悪くなってくる。
彼らは昔から素行はいいとは言えたものではなかったが犯罪や他人に大きく迷惑をかける事は全くなかった。
本当に彼らが悪さをしたのは、冒険者を首になった、あの一件くらいだ。
だが、今となっては軽犯罪は勿論、オルトに頼まれる悪行、飲み屋では最近よく喧嘩をおっぱじめる始末だ。
これはオルトの仕事をして、犯罪を犯すことに手慣れてきたんじゃないのかとバルテは最近思うのだった。
そこで、バルテはダルバスと話し合った。
「オルト・ロウランは信用できません。今直ぐ手を切りましょう!」
「うるせえ。他に仕事がねーのにどうやって生活するんだ。手前は黙ってろ!」
ダルバスは全く聞く耳を持たなかった。
ダルバスたちのバルテへの態度も変わった。昔は優しく、自分と楽しそうに話してくれたみんなが、今では悪態を付いて、バルテを邪嫌に扱ってくる。
もうあの時のような彼らに戻らないのか。そんな不満が湧き出てくる。
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そんな彼は、だからこそ自分の仲間たちにこれ以上悪行を働いてほしくないのだ。
「ダルバスさん考え直してくれ。誘拐はやめてくれ!俺はあなたたちにそこまでやってほしくない!」
「ならバルテ。これ以上やり方に文句あるなら、てめえ俺らのパーティーから抜けろよ」
バルテは固まった。
今まで信じてきた仲間からそんな事を言われた。
今までにないくらい心に突き刺さる言葉だった。自然と目頭が段々熱くなってくる。
バルテは下を向きながら再び黙り込んでしまった。
「仲間内での喧嘩はやめようじゃないか」
オルト手をパンッパンッと叩いてそんな事を言ってきた。
「あと確認だけどダルバスさん本当に話に乗ってくれるんですね」
「ああ、もう決定した」
「なら、よかった。じゃあ、話は戻って計画についてだ。目標はハルト・ヴァンデリオンという男とアイシャとか言う娘だね」
「あん?確か娘はレオナとかいう奴じゃなかったか?」
「それが情報を探ってみたところ違うようだったんだ。それは偽名だったし、彼らも兄妹じゃなさげだよ。
ハルトという男はここ最近で見かけるようになったって話で、アイシャって娘は4,5年前にここのスラブ街に住み着いたらしいよ」
「ほう、最初から警戒されてたんだな」
「そうみたいだね。最近小耳に挟んだんだけど、ハルトが酒場に出入りして僕の事を嗅ぎまわっていたらしいよ。全くやられたよ。多分聞いた奴から色々と僕の事をひどい風に言われたんだろうね。」
「それをわかってんなら、最初から交渉なんて成立しなかったんじゃねーか」
「僕も最近聞いた話だったんだよ。まあこれで彼らが僕の話に乗らない理由がわかったけどね。僕が彼らに言ってた事を思い出すと赤っ恥をかいてたのだと今後悔してるよ」
「チッ。全くくたびれ損だよ。でだ、誘拐するのはいいがアイシャという娘はいつもフードしてて、見た目の特徴を知らねえ。ちょいとそれを教えてほしい。間違えた奴を誘拐したくねーしな」
「その辺もちゃんと聞き入れたよ。見た目は金髪で蒼い瞳を持つ可愛い子らしい。歳は12、13だって話だよ」
「んー、まあそんだけわかればいいか・・・」
「おいちょっといいか」
オルトとダルバスが話していると急にある男に話しかけられた。
茶髪のオールバックの髪に獣が睨んでいるような黄色い瞳。体格は大柄で大きな銀の胸当てをしていて、赤いコートを羽織っている。
そして、刀身が太い大剣を背中に背負っている。
オルトは誰だこいつはと思ったが冷静に話しかける。
「あのー。どちらさまで?」
「アイシャっていう娘に用がある」
「いえいえ、そんな事よりあなたは誰ですか?」
「アイシャ・メイア・オルネットを殺すものだ」