抑え込む二人
探求心とは、欲望なのだろうか。
答えはYESだ。
「三大欲求を知ってるかしら?」
顎に手をあて、その仕草で紫にシアンを少し混ぜたぐらいの髪色の長い髪が腕に引っかかっては重力に従って戻ろうとし、胸にひとしきり引っかかって、また落ちては戻った。
「食欲、睡眠欲。…そして性欲!」
「性欲を強調するな」
即答で冷静に突っ込まれてしまった。俺の渾身の性欲アピールは空しく虚へ消えた。
「探求心とは、食欲と性欲のどちらにも働きかける欲求であることぐらいは分かるかしら?」
よく分からないが、とりあえず分かった風に首を縦に振ってうなずく。
「欲望は抑え込めば抑え込むほどいびつになる。だから、私はあなたの行動を咎めたりはしない」
「ならパンツ見せてよ!」
「黙れ、性欲丸出し、三擦り半以下め」
その言葉が表情を変えず、流れるように出てくるところらへんが僕は…好きだ。
「さすがに三擦り半はちょっと言いすぎじゃ。四擦りぐらいいけるよ」
視線が変わった。この視線を俺は知ってる。小学校の時、一学年下が学級崩壊した時に先生が、生徒が黒板に落書きをしていても朝礼を始めた時の視線だ。
「性欲とは、大概を自分で発散して周りへ向ける性欲のウェイトは案外少ないものなの。けど、兄貴のように私がいくら足で頭を踏みつけても怒りの感情がわいてこない様な自分に対しての気持ちが希薄な人はその性欲を自分に向けることができずに他人に押し付けてしまう」
俺は今、彼女の足に顔を踏まれそして地べたに仰向けに寝そべっていた。
正直彼女が何を言っているのか半分ぐらい分からないけど
「その通りです。アリスちゃん」
全力で肯定しておいた。
彼女の名は、スーパーアルティメットプリティーマイシスターアリス。顔を踏まれて兄貴の面目も糞もないが彼女は間違いなく俺の妹だ。
玄関から数歩でリビングに行ける大きくもないマンションの一部屋に住む僕らは普通の家族だ。
リビングに入るところで俺は寝そべりアリスが帰って来るのを待ち、ずっとそこに居たわけだ。仰向けで。当然、制服姿で帰ってくるアリスはスカートを履いているわけだ。自ずからして導き出される答えは勝利への方程式以外何もない。はず。。
「自分への性的欲求の処理として最たる例が、自分を着飾ること。自分を可愛くしたり、カッコよくしたり、それを人に見せびらかしたりすることで性的処理を人間は無自覚にやっているのよ」
「うんうん」
「黙れ。チンパンジー以下の脳みそで、今の言葉が理解できたのか?どうせ寝そべってフローリングにいちもつを擦りつけながら待っていたんだろう」
俺は仰向けだ。擦り付けられない。
「俺はただ今日のアリスちゃんの、パンツの色と柄を知りたくてだな」
「その探求心が性欲だとさっきから説明してるだろ。屑が。」
毎回罵詈雑言を吐くたびにアリスの足に力が入る。特に親指がこめかみにフィットして案外気持ちがいい。だが顔が横につぶれて面長になってしまいそうだ。
ふと、そこで疑問が浮かんだ。
「ん?そういえばなんでアリスちゃん裸足なの?」
玄関から来たというのなら靴下ぐらいはまだ履いているはず。だが俺のこめかみにはその生足の親指がフィットして堪らない。
「てか、アリスちゃんって普段静かだし性欲抑えてそうだし、それこそいびつな性欲って奴に…」
視線が変わった。痛いところを突かれて言い返せなくなったのか。足の踏む力も少し弱まってさっきとは違う雰囲気を醸している。
次の瞬間、足は顔からどかして、学校帰りで制服姿だったスカートに手を当てて
「そうなのー!見て見て!兄貴見て見てー!兄貴に生足パンツを見てもらうためにさっき靴下脱いで来たのー!」
そう言って、アリスはスカートを全力で上に挙げてひらひらとさせる。
「ねぇねぇ触る?ねぇ触ってぇー!」
「否、見る!!」
興奮するアリスとは別に俺はしっかりと曇りなき眼でパンツを見る。
ストライプだ。
「なんでよ!触って触って!」
「見る!」
地団太を踏んで一歩間違えれば顔を踏みつぶされそうだが、俺は一ミリも動かずにパンツを見続けた……
「ボーダーがよかった?」
ふと、止まって質問された。
「そうだな、縦より横派だな俺は」
これはいつもの室町家の兄妹の日常風景。少し変わった性癖を持つ二人の平和(?)な日常である。
久しぶりに書いたからなんか、全然だめだ…
全く先が思いつかない。昔の自分の作品とは全く違っている。
まぁ兄妹の日常シリーズは作者のおふざけシリーズだし許してください。