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INTERLUDE

「…なるほど」


 ソファの袖に頬杖をついた管理人は、しみじみした口調で言った。


「お前って、ほんっとうに不運だねえ」


 目の前では「その瞬間」の映像が凍り付いていた。止めてくれたのはありがたいが、どうせなら消して欲しい、と倉瀬は思う。

 「歪み」の原因を調べるべく、管理人は倉瀬の所属していた世界と時間を選り分け、彼の関連するところだけを器用に抜き出した。そしてそれは、よいしょ、というかけ声で彼の見知ったものに変わった。…ビデオテープ。

 気が付くと、管理人はカウチポテトよろしく、ソファに足を投げ出した姿勢で、これまた唐突に現れたビデオデッキにそれを差し込んだ。その手にはリモコンが握られていた。

 お前が「歪み」と会った時点からな、と前置きすると、管理人はリモコンのスイッチをONにした。早回しする。倉瀬の目の前で、生まれてから中学に入るあたりまでの光景が、凄まじい早さで駆け抜けて行った。


「…ああ、ここいらだ」


 管理人はスピードを緩めた。倉瀬がトモミと会った日だった。当の彼すら既に正確に覚えていない光景が、鮮明に映し出されていた。

 それから延々、彼は自分の過去を見せつけられた。早回しの過去は、時々速度を落とされる。そこには必ず、トモミと一緒の彼の姿があった。そしてその映像は、あの場面で終わる。自分はあの事故で死んでしまったのだ。

 彼にとって、どうしようも無い事実だった。


「不運だよ。不運さ。判ってるよ、管理人」

「ずいぶんと素直じゃない。どうしたよ」

「でも歪みの原因として呼び出されたってことは、俺にはまだ、しなくちゃいけないことが残ってるってことだろ?」


 ぴんぽーん、と管理人は人差し指を立てた。


「何だよ、それは」

「さて」


 管理人はリモコンをソファの上に投げ出すと、テープを引き抜いた。それはチューブの上に落とされ、ゆっくりと沈んで行く。

 そしてまた、管理人は別のテープを引き抜き、セットする。ただ違うのは、今度は初めから再生を始めたことだった。

 ぼんやりと明るい光景が、倉瀬の視界に入って来る。それは彼にとって、何処よりも見覚えのある場所だった。


「…俺の… 俺達の部屋だ」


 管理人はうなづく。

 部屋の中に、誰かが居る。ぺたんと座っていたと思うと、かの身体はゆっくりと横に傾いでいった。


「―――トモミ…」


 彼は思わず、その情景に駆け寄っていた。

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