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チートってのも悪くないね。  作者: 葉月 コウ
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任されたよ・・・

 マナは高三なのでこの話題ですが、センター試験が近づいてきました。因みにマナはテストでも模試でも、適当に勉強して、適当に一喜一憂して終わりです。

 それでは続読お願いします。

 「えっと、じゃあ部隊編成を組み直してマナさんに今より後衛に回ってもらいリンさんの横にいてもらうとして。そうなるとラインにはもう少し前に出てもらいますか。」


イーヴァさんは私たちのお願いを聞き入れるために突入部隊の編成を考え直してくれている。出来る女の鏡だなぁ、と考えながら見ていると、イーヴァさんは、ふと思い出したかのように私とリンの方を振り向き、訊いてきた。


「そういえばさっきも言いましたが今日は教会に行くって言ってませんでしたか?」


「・・・あ。」


忘れてた。リンも忘れていたようで、あっ、という様な顔をしていた。


「とりあえず、行こっか。帰りになんか買っていこう?私もだけどリンも欲しいものあるでしょ。」


「はーい。」


大変元気でかわいいお返事です。思わずキュッと抱きしめる。リンは私の腕の中であわあわしていた。一通り抱きしめ終わると準備をして(特にないけど)町へ出た。


 教会はギルドの近くにあった。どうやら教会にいる孤児の子の中に有望そうな子がいればギルド、又は騎士団にスカウトするためらしい。男の子なら騎士、女の子だと文官などが多いらしい。確かにどっちにとっても得な話だよね。


「リンはスカウトされなかったの?回復魔法使えるのに。」


「私が回復魔法を使えると知っているのは教会の中ではシスターだけで、知っている人がいなかったから。ただ最近友達がケガしちゃった事があったんだけど、その時に回復魔法を使ったのを誰かに見られて、っていうオチで捕まったの。」


なるほど、そんな経緯があったのか。というかこっちの世界来てから、なるほどって思う回数が何倍にもなっている気がするなぁ。


「あっ、あれだよお姉ちゃん。」


「ほー。教会ってやっぱりキリストなんだ。こっちの世界でもステンドガラスってきれいなんだね。」


と呟く視線の先にあるのは結構大きいサイズの教会。ちゃんとてっぺんに十字がある。そういえば昔友達から、プレゼントだよって渡されたキーホルダーが逆十字だったんだけど、どういう意味だったんだろう、あれ。まあ、文芸部の友達からだからなんとなく理由は察しがつくけど。


 思い出している間にリンがドアをノックしていたらしい。教会の中から足音が聞こえてくる。


「はい、どなたでしょうか?」


透き通るようなきれいな声。リンが鈴のような声なら、この人は川のせせらぎの様な声だ。


「先生、私です。リンです。」


といい終わるか終らないかのタイミングでドアが勢いよく開く。


「リン!心配していたのよ。ケガはない?痛いところは?」


と中から出てきたシスターさんがリンを抱きしめる。


リンはシスターさんに抱きしめられて苦しそうだったが、心配をかけてしまったが故に言えないらしく、黙ってされるがままになっていた。


 そんな微笑ましい状況で何を私が考えていたかというと・・・(この人胸大きいなー。)ということだった。リンがその谷間に埋もれていた。抱きしめられること約十秒。


「あのー、そろそろ離してあげてくれませんか?リンが窒息してしまうので・・・。」


「あ、ごめんねリン。」


「い、いえ。心配かけてすみませんでした。」


私の一言でシスターさんは我に返ってリンを離した。リンは息切れしていた。苦しかっただろうなーあれ。でも、気持ちよさそうだったな、女の私から見てもちょっと羨ましかった。女の魅力は胸じゃないっていうけど・・・やっぱり胸も大事だと思う。


 シスターさんは私の方を見ると丁寧に自己紹介をしてくれた。


「私の名前はベルといいます。この教会でシスターをしている者です。貴女がリンを助けてくれたという、マナさんですか?」


「いえ、違います。」


私ははっきりと否定した。その言葉にベルさんとリンが、私を、えっ?という顔で見る。私はリンに、にこっと笑いかけるとベルさんの顔をしっかりと見て、言った。


「はぐれてしまった妹を探して、見つけた、ただのお姉ちゃんです。」


それを聞いたベルさんは一瞬で全てを把握したらしく、感極まった顔をして今度は優しく、リンを抱きしめた。


「あなたにも見つかったのね、大事な家族が。」


リンはその言葉を噛みしめ、腕の中で頷いた。そして、私は、再び会話の機会を失ったのでした。

まあ、二人ともいい感じだし、しばらくいいかなと思い、一人で空を見上げた。

 

 その空はとても、とても青かった。




 「先程は失礼しました。改めまして、この教会でシスターを務めております、ベルと申します。」


「ご丁寧にありがとうございます。リンの姉になりましたマナです。リンは本当にいい子でかわいくて、」


「お姉ちゃん!そこはいいから。」


 リンは恥ずかしそうに私の口を塞ぎにかかる。だがそんな姿もかわいいだけなのでむしろ私に抱きしめられる形になってしまった。しまった、という顔をして暴れるが、私が強く抱きしめると、諦めたようで私の膝の間にちょこんと挟まる。諦めの良い子で大変嬉しくかわいいです。


 ベルさんが微笑ましそうにこのやり取りを見ていた。そんなベルさんを視線の端で確認したリンの体から力が抜けたようだった。なんだかんだ言って自分が良い人と出会えたってことを見せたかっただけなんだね。自分で言うのもなんだけど。


ベルさんは微笑ましそうにしていた顔を少し引き締めるとリンに


「リン、他の皆にも無事だったことは私から伝えてあるけど顔をみせてあげてきなさい。」


と促した。促されたリンは


「はい、先生。じゃあいってきます。」


とドアから出て行った。しばらくした後、耳をすませると遠くから


「リン!無事だったのか!良かった、みんな心配してたんだぞ。」


という男の子の声や、


「よかった、リンちゃんが何もなくて。ごめんね、私がケガなんてしたせいで。」


という女の子の声がする。


「ケガ?何の関係が?」


「い、いや。何でもないよ?」


「何故に疑問形?ま、いっか。リンが無事だったんだからな。」


聞いてるこっちが一安心だよ。ちょっと危なかったな、あの女の子。


「みんなにも伝えに行こうぜ、外に出てるやつもいるからよ。」


「うん!」


パタパタとかけていく足音が聞こえた。みんなに愛されているんだなぁ、リン。マナ、御年十七歳、こん

なに感慨深い気持ちになるとは思いませんでした。


 私と同じく微笑ましそうに聞こえてくる会話を聞いていたベルさんは、先生、というよりは孤児院を預かる、管理人の顔をして、私に向き合った。私も背筋を伸ばす。


 「それではマナさん、今回はリンの家族になって頂けるというだけではないのでしょう?」


「分かりましたか?勘の鋭い方が多いですね、この町は。」


「いえ、リンの雰囲気が嬉しいと言うだけでなくてどこか、強い意志を持っている風に変わっていましたから、何か他に理由があるのかなと思っただけです。」


なるほ・・・また言うところだった。


「単刀直入に言います。私は王国騎士団団長から魔王討伐の命を受けているのですが、リンをその魔王討伐の旅に同行させたいのです。」


「いいんじゃないのでしょうか。」


「そこを何とか・・・っていいんですか?」


・・・わざとじゃないよ?本当に断られると思ったんだよ?


「はい。何か不都合がありましたでしょうか?」


「いえ、てっきり危ないから駄目です、と断られるとばかり。」


「まあ、リンが来なくて貴女だけであればそうだったかもしれませんが。では一つだけ質問を。」


さーて、こういうやり取りは得意分野ではあるんだけど。ここではどんなにマイナス印象を持たれようとも心からの言葉を言うべきだね。


「貴女があの子を旅に連れて行きたいというのはあの子の回復魔法の為でしょうか?」


「はい、そうです。」


そう答えた瞬間、ベルさんの目から光が消えたような気がした。だろうね。でも、間違ったことは言ってないから。


「そうですか、貴女も他の人と同じで・・・」


「私の心の回復用です!」


「はい?」


私の言っている意味が分からず、ベルさんは困惑している。それでも私は言葉を続ける。


「リンは私にとっての心のオアシスなので近くに居てもらわないと困るんです。リンの存在そのものが私に対しての最高の回復魔法なので!」


思いっきり言い切った。それを聞いたベルさんはきょとんとしていた。やっぱダメかなーと思っていたら、突然ベルさんが笑い始めた。どうしたんだろう?今度はこっちが困惑するんだけど。なんか変なこと言ったかな、私。


 ひとしきり笑ったベルさんは背筋を伸ばして私の顔を、いや、目をしっかりとした意志をもって見てきた。思わず私も背筋を伸ばした。


「少し、昔話を聞いてもらえませんか?」


突然のことに戸惑った。よくもわからずに頷く。




「昔、一人の女の子がいました。その女の子は特に裕福な家庭に生まれた訳でもありませんでしたが、優しい両親の手によって元気に育ちました。しかし、その子には一つ他の子とは違うところがありました。

他の皆が使えないような力を使う事が出来たのです。両親はその事を特に気にもせずに大切に大切に、その子を育てました。


「しかし、そんな幸せは長くは続きませんでした。ある晴れた日、その家族は町の外にあるきれいな桜の木がある場所で花見をしていました。みんな楽しそうにしていました。けれど突然、桜の木の裏から一体の凶暴な魔物が出てきたのです。両親は女の子を庇いながら必死に逃げましたがその甲斐なく、二人とも魔物に襲われ帰らぬ人となりました。


「女の子はたまたま近くを通りかかった兵士に救われて、傷つく事なく逃げられました。しかし、女の子は心に深い傷を負ってしまい、誰にも心を開くことはありませんでした。


「そして両親の葬儀が終わると親戚一同が女の子は自分が引き取るという言い争いをしていました。その親戚たちは女の子の特別な力が目当てだったのです。女の子は誰についていくか問われた時、一言もしゃべろうとはしませんでした。それほどまでに女の子は心を閉ざしてしまっていたのです。


「やがて親戚一同はその女の子の親権を諦め、とある教会に放り込みました。しかし、その教会の中でも女の子はほとんどしゃべろうとはしませんでした。


「けれども女の子が教会に来てからしばらくしたある日、突然、一言二言ずつですが話すようになったのです。教会の人は理由を聞きましたが女の子は首を振るだけで何も教えようとはしませんでした。しかし、女の子は確実に明るくなっていき、一年たったころには他の子と遜色ない程に元気になったということです。



「いかがでしたか、この昔話は?」


うん、きれいだね。


「哀しいけれど、それでいてとても美しい話ですね。いつか、その女の子と会ってみたいものです。」


「そうでしょう。」


そう言って二人して笑った。


 それから三分ほどたった時、ベルさんは再び私の目を見て、言ってくれた。


「マナさん、あの子を、リンをよろしくお願いいたします。」


そうお願いしてくれた。彼女が私にこの昔話をしてくれた理由はいくら性格と察しの悪い私でも察しがついた。そして、その昔話のモデルも。私は強く、強く頷いて言った。


「もちろんです。任せてください。」


そして私たちは堅く握手した。ベルさんはお願いするように、私は責任を受け取るように。

窓の外では大きな笑い声があがっていた。



 私とベルさんは教会の広場に出てきた。そこではリンを含めた二十人前後の子供たちがサッカーをしていた。楽しそうだなーと見ていると、リンが気づいてこっちに駆け寄ってきて、


「お姉ちゃんもやろうよ。」


と誘ってくれたので私はニヤッと笑って


「お、言ったな?後悔するなよ、小娘。」


といって皆の中に入れさせてもらった。リンにはああいったものの、チームはリンと同じチームで現在一‐三で二点のビハインド。私にとってはいいハンデかな。さーて、妹のために一肌脱ぎますか。



 「お、お姉さんって何者なの?」


「? 普通の一七歳の女の子だけど?」


そう相手チームの子に問われたのは十分後。点数はなんと、


「じゃあなんで一人で五点も取れるのさ!」


「う、うーん・・・なんでだろうね?」


 そう、現在の得点は六‐三。逆転後に三点追加した。因みに最初の一点以外の得点、五点には全て私が関わっていて、私はハットトリックに二アシストの活躍だった。


 実は私は、両親の影響で幼稚園の頃からサッカースクールに通っていて、全ポジションを務められるオールラウンドプレイヤーだった。いや、特別に上手いポジションが無かっただけなのだが。でもテクニックも関係ない、子供たちが相手ならば本気でやらなくとも十二分に戦える。


 そんな私に、横にいたリンがボソッと一言。


「お姉ちゃん、大人げない。」


ザクッ!かなーり深い傷が心に入ったのですが。審判、リンにイエローかレッドカードは出ないんですか?


まあ、味方だから出されても困るけど。仕方がない、下がりますか。


「ベルさーん、選手交代、おねがいしまーす。」


「この服でサッカーはちょっと・・・」


・・・確かに、シスター服はきついよね。


「すみませんでした。」


仕方がない、交代選手がいないのでキーパーでもやってよう。キーパーをやっていた子と交代してゴールを守る。因みにキーパーもしてましたが何か?


 その後、結構な数のシュートが飛んできたのだが、味方のディフェンダーがブラインドになって反応できなかったのを除けば全てセーブした。さらにリンが一点を追加したので、よってスコアは七‐四の大逆転勝利。もちろん相手チームの子からはブーイングを喰らった。だって負けるの嫌なんだもん。そしてリンから再び白い目で見られる。審判、カードは?けっこー心の傷深いよ?


 そんな心の進言が聞き入れられるわけもなくサッカーは終わった。その後、誘われるがままに女子グループではおままごとで母親役、全員では今度は野球をやった。因みに野球は五‐四でギリギリ勝利だった。



 夕暮れ時、そろそろ帰ろうかという時になると子供たちもなんとなく察したのか、私とリンを引きとめようとしてくるのが分かった。


「そりゃそうだよね、友達を連れて行こうとしているんだから。いや、この子達にとっては家族をか。」


「ん?何か言った、お姉ちゃん。」


そんな独り言に反応したリンは問い返してきた。


「いーや、なーんにも。」


と返した。流石にもう教会の時間的に夕食準備時だしと思って皆の方を向いていった。


「みんなー、ちょっとリンを連れてくけどまたいつか遊びに来るからさー。今日はもうおしまい。ベルさんを困らせちゃだめでしょ?」


「「「えーーー」」」


文句の合唱、きれいです。でも、


「いつになるかは分かんないけど絶対来るから待っててね。」


と言うと一番近くにいた女の子が私の袖を掴みながら上目づかいで


「絶対、だよ?」


かわいい・・・


「お姉ちゃん!帰ってきて!」


「ハッ!」


やばい、楽園から帰ってこれなくなるところだった。助かったー。イーヴァさん、これは反則だったわ。ごめんねー。


「うん、絶対。指切りする?」


そう言って小指を出すと女の子も小指を出してきた。


「「ゆーびきーりげーんまーん、嘘ついたら針千本のーます、指切った!」」


そして二人して笑いあった。


 「じゃーねー、みんなー。またいつかねー。」


「「「またねー!」」」


「リンの事、よろしくお願いしますね、マナさん。」


「はい、お任せください。」


皆に見送られて私たちは教会を出た。


「じゃ、改めて。よろしくね?お姉ちゃん。」


「ん、よろしく妹よ!」


「ふふふ・・・」


「あはは・・・」


笑いながら市場通りに向かっていった。


 今回のマナはものすごいぶっちゃけました。彼女は性格は悪いですが、ちゃんとTPOは見抜けます。でも文芸部の皆は笑うんですよね、マナの高校の先生相手の態度を見ると。あまりの違いに(笑)。

 あ、次の話は一瞬ですがあのイベントがありますね。

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