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チートってのも悪くないね。  作者: 葉月 コウ
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女の子を助けたら・・・

 あけましておめでとうございます!年始ということで投稿しようと思います!風邪をひかないように、暖まりながら続読お願いします!

 シャー・・・


「早く起きてください。二日連続で朝御飯を抜くつもりですか。」


ああ、今日も朝日が眩しい・・・にしてもイーヴァさん、別に毎日起こしに来てくれなくてもいいんですよ。ていうか朝も昼も日差しが入ってくるってどんな立地条件ですか。


 なんやかんや文句を心の中で言いながらも今日は特に抵抗もせずにベッドから抜け出る。着替え、身だしなみ、朝御飯を済ませる(全ての料理を残してしまった)と町へ繰り出した。




 買い物に来たとはいっても、起き抜けにより、あまり頭働いていないのでテキトーにぶらつかせてもらう。ふらふらしていると暗い裏路地に人を見かけた。二人の男達が一人の女の子を連れて歩いていた、と思ったが。女の子の方が明らかに嫌がっている。これは・・・テンプレの展開なのかな?


「イーヴァさんちょっとごめんねー。」


と声をかけると彼女が何か言うのも聞かずに路地に向かって走る。


 その路地の中にいた男達は、女の子を連れていた、が。近づいてみるとやっぱり、明らかにその女の子は抵抗しているように見える。私は瞬時に頭の中で拘束系の魔法を探し当てると、落ち着いて声を掛けた。


「何やっているんですか、そこのおにーさん方?」


振り返った男達を見るとおにーさんではなく、どっちかっていうとおっさんの年だった。ますます怪しい。


「お前にはかんけ「助けて!」


はい、承りました!その言葉待ってたよ!


「『グラビディ』(重力加重の魔法)」


すると、女の子を除いた男二人が地面へと叩きつけられ、めり込む。自由になったと分かるや否や、私の胸に飛び込んでくる。私は百合には興味は無かったけど実際に頼られてみると悪い気はしないね。むしろ男に好かれるより気分いいかも。よし、逆ハーレム作ることになりかけたら百合ハーレム作ろう。


 そう心に決めた時、後ろからイーヴァさんが走ってきた。


「どうしたんですかマナさん、いきなり走り出して、ってこれは一体・・・」


来た瞬間、私に縋り付いて泣きじゃくっている女の子、地面にめり込んでいる男二人、そして若干女の子に抱きつかれて恍惚の表情を浮かべている私が目に入る。


どういう状況かは一瞬分からないだろう。しかし流石は騎士団長。次の瞬間には理解して男二人に向かって、


「あなた達を誘拐未遂で逮捕します。」


そう言うとイーヴァさんはポケットから直径がおよそ五センチメートルの黒い球を取り出すと男達に向かって投げつけた。その黒い球は男達に当たるとカッと光り、目を開けると男達が気を失っていた。(光で集中が切れてしまったので『グラビディ』の効果は切れている)


どうやらあの球は相手の意識を奪うものらしい。何で私と出会った時は投げなかったんだろう。ああ、利用価値を見出したからか。やっぱり抜け目無いなー。


 そこまで考えた時、イーヴァさんが振り返り、


「すみませんが応援を呼んできますので彼らを見張っていて下さい。彼らの意識は奪ったので立っているだけでいいのでよろしくお願いします。」


と言うと騎士団詰所の方へ走っていった。


 残されてしまった私と女の子・・・と男二人。

・・・うん、女の子と二人っきりだね。そういえば名前も訊いてなかった。


「君の名前は?」


そう訊くと女の子は泣き止み、居住まいを正して挨拶してくれた。


「先程は助けて頂きありがとうございます。私の名前はリンドと申します。どうぞリンと呼んで下さい。」


そう言って深々とお辞儀するリンちゃん。改めて見ると、艶々の黒髪、くりっとした大きな目、未発達ながらメリハリのある体型。どこを取っても文句のつけようのない妹ぞくせ・・・こほん、大和撫子な子だった。


「それにしてもどうしてあいつらに捕まってたの?」


「私は治癒魔法を使えるのでそのために狙われたのだと思います。」


「治癒魔法が使えると狙われるの?何で?」


そう訊くと、えっ、と言わんばかりに目を見開く。

すみません、来たばっかりなので全くこの世界の事を知らんのですよ。なので教えてくださーい。


「治癒魔法はゼノフォビアの妖精の加護を受けた方ならば使える方がいるようですが、このセドナ王国に住んでいる人間は使える方がほとんどいないのです。」


なるほど、だから使えるリンちゃんが捕まったのか。どこの世界でも珍しい子が捕まえられかけるのは一緒なんだな。やっぱもう一回『グラビディ』かけとこうかな、あいつら。あ、でも起きちゃうか。じゃあ、悪夢でも見せておこうか、それなら起きないしね。


そんな黒い考えを持っているとリンちゃんが小首を傾げてこちらを見上げてくる。


すみません、黒い考え持ってて。なんかこの子の無垢な目で見つめられると闇属性の魔物が聖属性の光を受けた感があるなー。


にしてもこいつら、仲間いるんだったらまとめて潰してやろうかな。それは面倒だけどそれ以上に退屈しなさそうだねー。


 二人で話しているとダダダッという足音と共にラインさんを含む五人程の騎士団メンバーを引き連れてイーヴァさんが戻ってきた。おかえりー。


「何かありましたか、マナさん?」


「いや、特に何も。敢えて言うならこの子を連れ去って売り飛ばそうって考えている奴らを一網打尽にしてやろうかなって思ってただけだよ?」


それを聞いたイーヴァさんの顔が引きつる。まるで自分の子供が買ってほしいおもちゃを見つけてキラキラしているのを見てしまったお母さんのようだった。


「まさか、本当にやろうなんて考えては・・・いるんでしょうね、貴女なら・・・」


さっすがイーヴァさん。もう私の性格理解してるね。


「と、いうわけで。」


リンちゃんの方を向きニコッと笑う。


「倒しに行こうか、リンちゃんを怖がらせた人達を。」


そう私が言うとリンちゃんは一瞬呆気にとられたように目を見開いたがすぐにニコッと笑ってくれた。かわいいーと抱きしめる。一通り抱きしめるとイーヴァさんの方を振り返って


「手伝ってくれるよね?」


そう言われた彼女は嘆息し、首を振ると、


「嫌です、って言っても止まらないんでしょう。下手に動かれて王都を廃都にされても溜まったものではありませんしね。それに、恐らく彼らは人身売買グループの一味でしょう。人身売買は王国騎士団にも話は伝わって来ていた一件でもあるので今回は騎士団全体で解決します。力を貸してください、大魔法使いさま。」


はい、決定。さーてこんなにかわいい子を攫おうとした罪。どの魔法で償ってもらおうか。


 黒いオーラを纏っていた私にイーヴァさんが釘を刺す。


「くれぐれも禁忌魔法は使わないで下さいよ?」


う・・・わかってましたよ、一応、多分。




 私達はイーヴァさんが牢に男達を入れてくると言うので先にリンちゃんとイーヴァさんの執務室に戻って来て彼女を待っていた。


 しばらくして戻ってきたイーヴァさんはとても暗い顔をしていた。軽さが売りの私でも流石に表情を引き締め、イーヴァさんに問う。


「どうしたの?何かあった?」


「少し彼女の事でお話があるので少しこちらへお願いします。」


そう言って別の部屋の入口を指す。私は訳が分からなかったがとりあえず彼女について、別室に移動する。


「それで何の話?」


「彼女、リンドさんの身元のことですが。」


私は親が見つかったのかと勢いづいて、


「見つかったの?」


と言ったが、よく考えればそれならイーヴァさんが悲しそうな顔をしているはずがない。その通りだったらしく首を左右に振った。


「じゃあ、見つからなかったの、リンちゃんのお母さんとお父さん。どうして?」


「彼女は、孤児だったんですよ。教会に預けられていて、教会の名簿にも載っていました。彼女の両親は彼女が五歳の時に魔物に襲われて既に・・・」


「そんな・・・」


「そうなんです。私のお母さんとお父さんは私の小さい頃に魔物に殺されてしまって、もう・・・」


私が呟いた時に耳に入ってきたのは凛としてはいるが、どこか悲しげな響きのある声だった。


声が小さくか細くなっていった。ぐすっと鼻をならす。私はいたたまれなくなってリンちゃんの方へ行き、さっきのかわいいという抱きしめとは違い、優しく抱きしめた。


リンちゃんは声を上げて泣くでもなく、さめざめと泣くでもなく、キュッと私の事を抱きしめ返してきた。そして、微かにだが彼女の体は、震えていた。



 「イーヴァさん、この子、私の旅に同行させてください。というか、妹に下さい。」


気づいた瞬間、私はそう口走っていた。イーヴァさんはポカーンとしている。私は慌ててリンちゃんを腕の中から解放し言い直す。


「い、いや、旅はともかくとして、妹に欲しいっていうかやっぱり家族っていた方がいいと思うんだ。私もこの世界では一人っきりだからさ、気持ちも分からなくはないんだ。一人ぼっちも二人集まれば一人ぼっちじゃなくなるよ。私はそれが良いと思う。」


「・・・絶対今思いついたでしょう、そのいい感じな言い訳は。」


とジト目で見られる。ばれてるなー、流石イーヴァさん。だって、かわいいんだもん。



「・・・ちゃん。」



そこまで言った時、私の耳にリンちゃんのか細い声が聞こえた。


「何?リンちゃん。やっぱり嫌かなあ?」


そう問われたリンちゃんはまっすぐ私の目を見て、

今度ははっきりとした声で私の事を呼んだ。


「おねえちゃん!」


そう言って今度は涙を浮かべながらも笑顔で私の胸に再度飛び込んできた。


「リンちゃん、いや、リン。これからよろしくね。」


私に異世界、現実、共に初めて妹、義妹が出来た瞬間だった。左手で妹を抱きしめ、右手で頭を撫でながらイーヴァさんの方を向くと、いかにも、仕方がありませんねと言わんばかりに嘆息すると


「明日は教会に行ってきてください。リンドさんに家族が見つかったという報告をしにいかなければならなくなったようですしね。」


と言って苦笑してくれた。私はしばらく胸の中にある二日ぶりの家族というぬくもりに癒されていた。



 というわけで、マナに義妹ができました。冒険ものには欠かせませんよね、回復役(と癒し系)。マナは回復魔法は使えますが、リンが妹になったので使うことはないと思います。

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