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チートってのも悪くないね。  作者: 葉月 コウ
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一方的な心理戦、終了…

 余裕をもって、という前回の意気込みはどうなったんでしょうか。

でも、今回も間に合ったので許してください……

 では、続読よろしくお願いします。


 これは会談ではなく尋問に近い、そう感じたのは最初からだろうなぁ……と、終わった現在、そう思い返さざるを得ない。どうしてゼノフォビアに来る際に正式ルートを通らなかったかと言う質問から始まる会談。思い返すと長かった……


 『しかし、不思議なものですね……深遠の森を正式な道を通らずにこのゼノフォビアに近づこうとは……』


「確かにそうですね。どうしてあのような場所を通ってゼノフォビアに近づいたのです?」


 ティターニアさんの言葉にエイラさんが同意する。いくらゼノフォビアに向かう冒険者だからと言ってどこからともなく現れるわけではないだろう。


「それは事故なのです。深遠の森内部にある、ヒトウという村の依頼を受け、完了したのですが、自分の納得のいく仕事が出来なかったのです。それで報酬をもらうのも申し訳ないので、黙って出てきたら迷ってしまったのです」


 ツッコむ暇も与えないように、それでいて失礼に当たらないレベルのマシンガントークで伝えきる。このことは事実でしかないわけだし、ここに関しては、全く問題はない。


 「なるほど、マナさんは責任感の強い方なのですね」


「それでこちらにご迷惑をかけてしまっては元も子もないのですけどね」


エイラさんの言葉に苦笑を返す。やることはやったのだから胸を張っていいとは思うのだが、やるせなさは無視できなかったんだよね。


「陛下、申し訳ないのですが一言よろしいですか?」


立っていたシンアさんが口をはさんでくる。正直、舌打ちをしそうになったのは秘密である。エイラさんからの質問なら様々に考えられるが、シンアさんの質問したいことなど一つしか思い当たらないからだ。


その質問だけならいいけど、派生しそうなんだよね……


 そんな私の思いなど露知らず、エイラさんは簡単に許可を出してしまった。


「では失礼して。マナさん、貴女は何故あのように長時間飛行魔法が使えるのです? 私が憲兵から連絡を受けて貴女を確認するまで、ずっと飛行していたようですが……」


 やっぱりか……


「私自身、理由はわからないのですが、単純に魔力が多いのだと思います」


「出身と、失礼を承知で聞かせてください、種族は?」


うん、そう派生すると思って…


「シンア!」


シンアさんが質問した途端、今までおしとやかでいたエイラさんがシンアさんを叱責するように大きな声を上げた。ビックリした……


「大丈夫ですよ。出身ははるか東の小さな村です。と言っても本当に小さく、名前もありませんし、もうなくなっていると思いますけどね」


一応、流れるように返しておく。しかし、私が出身を答えた時、ティターニアさんがさりげなく足を組み替えたのが見えた。


 『ゼノフォビアも一般以上ですが、マナさんの故郷はよほど女神の加護が強い土地だと見えますね』


にこりと微笑みかけてくるティターニアさん。それに愛想笑いで返す私。


「あ、もちろん種族は人ですよ。魔族ではありませんのでご安心を。もちろん信じていただけるのでしたら、ですけどね」


「どうしてそんな言い方を……」


横にいるリンからそんな言葉が聞こえた。会談って戦場なんだよ? 如何にイニシアチブをとれるかが鍵。でもシンアさんのおかげで形勢はよくなったかな、ただ一人を除いては……



 それから当たり障りのない話をすることしばらく。ようやく解放され冒頭に至る。会談後、王宮の一部屋を貸してくれるとの誘いもあったのだが、丁重にお断りさせていただいた。


考えなきゃやってられないのに、その思考を片っ端から読み取られたんじゃたまらない。策士策に溺れるって言葉はあるけど、これじゃ、策士策に溺れさせられるって話だ。……こんがらがってきたけど。


 それにしても、冗談抜きに、こんなところにいられるか、私はセドナに戻らせてもらう! って感じだよ。口に出したら絶対に悪化するよね、状況。死亡フラグ扱いだよ、今のセリフ。


「本日含め失礼しました」


正門を抜けたところで後ろから声がかかって振り返る。


「こちらこそご迷惑をおかけしました。むしろ無事にゼノフォビアに入ることが出来てよかったです」


軽く皮肉を含めて伝える。実際、着けたところと入れたところはよかったしね。撃ち落としてくれなかったらずっと森の中をさまよってただろうし。


「こちらは宿の紹介状です。これを見せれば無料で泊まることが出来ると思います」


 スルーしたな……でも、軽く口元がひきつってるのがまだまだだね……私は一体何様なのか。


「ありがとうございます、お言葉に甘えて使わせていただきます」


笑顔を浮かべながら受け取る。そうすると、もう話はないのか、再び直立不動になったので、一礼して出ようとする。


「あ、そうでした」


言っておくことがあったんだった。


「もし何かあれば、こちらまで、そうティターニアさんにお伝えください」


「……は、はぁ。分かりました」


煮え切らないものだったが、とりあえず返事はもらえたのでリンの手を引いて、王宮を後にする。視線を感じ、歩きながらチラリと後ろを見る。シンアさんは普通に戻っていくのが見えたため、視線を少し上にずらす。すると、正門の屋根の上に一部だけ色が違うところがあることに気づく。


「お姉ちゃん?」


振り返り、立ち止まった私を不思議そうに見つめてくるリンの視線……とは別にもう一つ視線を感じる。


「何でもないよ、さ、教えてもらった宿に向かおうか?」


「うん」


再び足を進める。それにしても、お前が言うなとは言われそうだけども、愚痴っても仕方ないよね?


「チートにもほどがある……」



 「これまた何と言いますか……」


「妖精と自然のゼノフォビアっぽいよね」


目の前にあるのは大きな宿屋。明るくて、至る所に木材が使われていて、とても暖かくてアットホームな感じでとても過ごしやすそう。ただ、一つとても気になる点が。


「これ、どうやって支えてんの……?」


至る所に木材が使われてるって言ったけど、語弊があった。木材しかない。下方修正ではなく、上方修正である。法隆寺って現存する世界最古の木造建築って言うけど、細かなところに金属使われてたけど,


この建物はパッと見、金属見えないんだよね。


 あ、法隆寺は世界最古の木造建築ではなく、現存する、世界最古の木造建築ですのでご注意を。ここ、テストに出ます、多分。


 「魔法がかけてあるんじゃないかな。もしくはそういう組み立て方をしてるとか」


「魔法か、武器の硬度も上げられるみたいな話もしてたし、そうかもね。でも組み立て方だったら作った人すごいね」


異世界にも匠はいるかもしれません。


 それはそれとして。紹介状を見せてチェックインする。王宮から選ばれるぐらいだからそこまでではなかったけど、頑張っていたので、裏でプチパニックを起こしていたのには気づかないふりをすることにしましょう。部屋もすごい綺麗だったし。因みに部屋は私とリンの二人部屋で、大きいベッドが二つに机、クローゼットなどが配置されていた。こういう調度品っていうんだっけ?はどこも同じみたいだね。


 部屋は最初、スイートルームに通されたけど、流石に辞退。庶民には庶民が合ってます。この宿のレベルが庶民かどうかは別として……


「えっと……一応夕飯まで時間あるけどどうする?」


ベッドにうつ伏せに倒れながらリンに聞く。


「そんな状態で外行こうなんて言わないよ。お姉ちゃんも疲れてるし、ゆっくりしよう?」


ありがたや~、ありがたや~


 結局その後、リンは何をしていたかは分からないけど、私はそのまま気を失うように寝てしまい、リンに夕食の時間だからと起こされるまで寝ていた。因みに夕食はとても豪華だった。やっぱり紹介状出したの間違いだったかな……


 とりあえず美味しかったことと、明日から一般客と同じもので構わない旨を伝える。すると味を聞きに来ていた料理長は胸をなでおろしつつ、戻っていった。別に不味くたって何もしませんよ……


 湯浴みをして部屋に戻る。こまごまとしたことをすると、どっと疲れが出てきたのか、リンが眠たそうにしていたので、寝かせた。


「お姉ちゃんは……まだ寝ないの?」


「うーん……私は昼間寝ちゃったからね、もう少し起きてるよ」


「分かった、早めに寝てね。起こすの大変だから」


ふにゃっと笑う。眠そうに眼をとろんとさせてするのは反則ではなかろうか。


「分かったから早く寝なー、リンまで起きられなくなるよ……ってもう寝た……早いなー」


言ってる最中に寝息が聞こえてきた。本当に疲れてたんだね。これが監獄にいた時、私のことを心配して気を張ってくれていたからだと考えるのは自分勝手すぎるか。苦笑しながらリンの髪をなでる。


 完全に寝たのを確認すると、窓際にある椅子に座ってギルドカードからお酒とグラスを取り出す。


「合うかは分からないけど、作ってみようかな」


呪文で出した氷の槍を短剣で削ってロックアイスを見よう見まねで作ってみる。シャリ……シャリ……という音が響くも、リンが起きることはなかった。


 少し不格好ではあるが、丸くするとグラスに入れてお酒を注ぐ。残りの槍は窓の外に投げた。因みに安全確認は行っております。


 カラン、という綺麗な音に惹かれてそのまま煽る。甘く、冷たくて美味しかった。アルコール度数はどれぐらいか分からないけど、カイの村で割って飲むものよりとても弱かったため、飲みやすかった。



 それからはゆっくりと少しずつ飲むこと数時間。杯数は少ないとはいえ流石に酔ってくるよ……? そろそろ来てもいいものだけど。


「まだかなぁ……」


残り少なかったグラスに残っていたお酒を一気に喉に流す。カツンと音をさせて机に置いた時に気づく。今、飲む前にはなかった手紙が置かれていることに。


 正直、それは手紙ではなく、紙切れを半分に折っただけのものなのだが、届けられた時点で手紙だと判断してよいだろう。二つ折りを開く。


「……さて、寝ようかな」


 差出人と内容を確認すると手紙を千切ってゴミ箱に入れるとベッドにもぐりこんだ。


 明日から新年度ですね。またちょっと視点を変えて書いてみようかなと思っています。まぁ、それよりもまずはストックが欲しいものなのですが……

 では、次話もよろしくお願いします

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