依頼完了…なのに…
まずは九月中に三話投稿が出来ず本当に申し訳ありませんでした。九月中は少し前に一話、本話で二話目ということで、間に合いませんでした。三話目は近日中に投稿いたします。
では、続読よろしくおねがいします。
もうかなり陽が落ちてきて煙が闇に飲まれかけてきたころ、ようやく煙の立ち上る場所が見えてきた。その位置は森ではなく……
「やっぱり村だー!」
狼煙……かどうかは分からないけど結果的に火を焚いてくれて助かったよ。あのままだったらせっかく助けられたのに危ないところだったしね。
村の門から少し離れた場所に降り立つと、リンには立ってもらって女性をお姫様抱っこの要領で抱え直す。そしててくてくと歩いていくと、薄暗い中で私達をいち早く見つけた門番さんが駆け寄ってきた。
「ご無事でしたか!」
「私とリンは何とか。ただ彼女はか……なり衰弱してますから、診療所のような場所があればそちらで休ませたいのですが」
「分かりました、私が運びます。お疲れだとは思いますがお二人は村長の家へお願いします」
抱えていた女性を門番さん、私達を迎えるために置かれたらしい、に預けるとリンと二人で村長さんの家へ向かう。途中でリンをおんぶしてあげようかと思ったけども、拒否されてしまった。でも恥ずかし気に顔を赤くしているのが可愛かったから良しとしよう。
夕飯時らしく道に人影は少ないが、見つかると質問攻め、称賛に遭うことになりそうだったので、村長さんの家に行ってくれ、と言われた私達にとっては丁度よかったのだが。
こっそりと地味に裏道なども使いながら村長さんの家へと向かう。途中で井戸やら川やら色々新しい場所を見つけながら歩いていると、入口と村長さんの家から同じ距離、離れた所に開けた場所があった。
「お姉ちゃん、ここって……」
「うん」
ただ開けているのではなく、地面には石碑が立っていた。そこには村を守るために散っていった者を讃えるような内容が書かれていた。多分、ここにはこのヒトウ村を守ってきた人達が眠っているんだろう、そして、今回の化物を倒しに行った人たちも。
「行こっか」
リンは頷くと、先を行く私の後ろを追って歩く。
そのまま二人共無言で歩き続け、ようやく村長さんの家に着く。ノックすると、すぐに扉が開き、顔を出したのは家へ案内してくれた女性だった。
「マナさん、リンさん、ご無事だったのですね! 大丈夫ですか、お怪我などは……?」
「大丈夫ですよ、あの……」
「あ、はい、こちらへどうぞ」
興奮冷めやらぬままに応接間へと通される。そこには椅子に座ってじっとしている村長の姿があった。私達の帰りをずっとここで待っていたのかもしれない。しかし、私の姿が目に入ると席を立って一礼する。
「ご無事で何よりです、マナさん、リンさん」
「冒険者マナ、そしてリン。依頼である化物の討伐任務を終え、ヒトウ村へ帰還しました」
その言葉を聞いた後、再び村長は深く下げた。
「ありがとうございました、マナ殿、リン殿」
それからはカイの村とは違って静かなものだった。マシェさんが、私達が疲れているだろう、と気を使ってくれて宴会は明日にすると言ってくれたため、今日はマシェさんの家で夕食を取ることになった。しかしリンは、食欲がない、と言ってパスしてしまっていたが。確かに今日見たものはリンぐらいの年の子が見るものでは決してない。まぁ、じゃあ何歳になったら見てもいいのか、というわけでもないものだけども。
本当のところ、私も食欲はなかったが、流石に断ることは出来なかったので、私が会食を行っている間、リンには別室で本を読んでもらった。出される食事を何とか胃の中に収めて、そこまででもなかったが疲れた、という名目で早くに帰らせてもらうことにした。リンを一人放っておくわけにもいかなかったし、正直、これ以上マシェさん達と一緒にいたら息が詰まって来る感じがしたから。
「すみません、あまり話すことが出来ず……」
「いえ、化物を倒されたとなっては疲れて当然です。今日はゆっくりお休みください」
「ありがとうございます、では、失礼します」
挨拶を交わして玄関から出る。夜風が頬を撫でていくのが気持ちよく感じた。
「リン、待たせてごめんね、帰ろう」
「気にしないでゆっくりしててよかったのに……」
リンはそう言ってくれるけども、私自身居づらかったんだからどっちにしろだった気がするけどね。もちろん、リンがいたから早めにしたのも事実だけど。
「いいの、お姉ちゃんも疲れてたからね。帰って水浴びしたら早く寝よう?」
「うん」
会話通り、家に着いたらすぐに水浴びをして、そのまま布団に入った。とは言っても、水浴び中にリンの体をくまなく確認させてもらったんだけど。もちろん変態な意味ではなく、傷がないかどうか。因みに傷はありませんでした。そこに関しては一安心。
「リン、どうしたの、考え事でもあった?」
いつも寝つきのいい私がいつまでも寝返りを打っていることに気が付いたお姉ちゃんが不思議そうに聞いてきた。
「う、ううん、別に何もないよ」
「それならいいんだけど。もしあの蜘蛛に何かされたんだったら言ってね。早いうちなら何とかなることが
多いからさ」
あれだけ体の隅々まで見てくれたのにまだ不安なんだ……心配してくれて嬉しいんだけど、あの時すっごい恥ずかしかったんだからね。
「それじゃあ、そろそろ寝よっか。おやすみ、リン」
お姉ちゃんは私の恨みがましい視線に気づいたのか否か、布団にもぐって寝息を立て始めた。
「おやすみ、お姉ちゃん」
そう言って私も目を閉じたが眠気が来ることはなかった。考え事が一つあったから。
私は確かに蜘蛛に捕まった時、手に持っていた短剣で糸を切ろうとしていた、刃もちゃんと糸に当たっていた。確かに刃物は当てた状態から動かさなければ切れないことが多いけど、砥がれていたし、破魔の魔法は当たった時点で発動するはず。それなのに糸が切れなかった。こちらを拘束したのだから悪意はあったのは事実。でも、その糸は切れなかった。そうなると考えられるのは二つ。
一つ目は単純に向こうの糸の力が強かったということ。あの数メートルの巨体を支えていたのだから可能性は十二分にあると考えられる。でも、私はもう一つの理由を考えてしまう。破魔魔法は持ち主に対する害意に反応する、ということは。
「私を害そうという意思がなかったっていうこと?」
思わず呟く。この考えでも説明はつく。でも、人間を害そうとしない魔物なんているのかな……
私は考え続けて、やっと来た眠気に誘われ、眠りに落ちたのはそれから数時間後、深夜よりも朝から数えた方が早い時間になってからだった。
今話は、前半がマナ、後半がリンの一人称でした。悪意と害意の違いって正直かなり難しい感じで、上手く表現できていたかと言われると首を横に捻ることになります……
最後になりますが、三話投稿できずに申し訳ありませんでした。近日中に投稿いたしますので、待っていてもらえると嬉しいです。次話もよろしくお願いします。




