二度目の遠征…
新年度まで後二週間ですね。今年度、何かやり残したことは……ないはず! そう思ってないと不安な作者です……
では続読よろしくお願いします!
昨日に引き続き、すやすやと気持ちよく寝ていた私を起こしたのは、突然の布団引きはがしだった。
「マナちゃん、早く起きな、来客だよ」
ひどい起こし方だなぁ、と思いつつ剥がした当人を寝ぼけ眼でみてみると、イーヴァさんでもなく、リンでもなく、なんと管理人さんだった。
「あぇ……おはよーございます……?」
何で管理人さんが部屋にいるの? ぼけーっとしている私に一つ溜息をついた。
「シャッキリしないと水かけるよ?」
起きました、今起きましたとも! だから冷水かけないで、かなり冷たいんだから。
何とか脅しのおかげで急覚醒したので身支度を整えつつ質問する。
「それで来客ってどなたですか? それとリンは……」
「妹ちゃんならイーヴァと一緒に朝食食べに行ってるよ。来客はギルドのフォーセだ。何やら深刻そうだから早く行ってやりな」
フォーセさん……? ギルド関係で何かあったっけ……あるとしたらカイの村の報酬関係書類に不備があったとかだろうけど、深刻にはならないだろうし。もしかして、受注中の依頼で何かあったのかな?
とりあえず深刻そうとのことなので身支度を済ませると、急いで玄関に直行。因みに朝食を抜いても基本的に活動は可能な体質なので。直行とは言ったものの、流石に寝起きなのでふらつき気味に玄関の扉を開けると、フォーセさんが立っていた。
「おはようございます、フォーセさん。どうしたんですか、こんな朝早くから」
「嬢ちゃん、いや、冒険者マナ。貴女の受注中の依頼について変化が起きたので至急、ギルドの方まで来てください」
やっぱりそっちか……となると? 想定できる出来事は三つ。
一つはゼノフォビアの方で依頼が完遂されたこと。二つ目はカイの村のように、依頼を撤回してきたということ。そして三つ目。一番想定したくないのが、急用依頼ではなかったあの依頼が、何らかの理由、があって急用依頼に変更された、ということ。
でも多分……私の予想の中では三つ目が正しい。何故ならそれ以外にフォーセさんが深刻そうな顔をする必要性が思いつかないから。私は了解して、すぐにギルドへ向かうと伝えると、フォーセさんを戻らせて、寮の食堂へと戻る。
すると、丁度良く、イーヴァさんとリンが食事を終えて出てくるところだったので、ギルドに行く用事が出来た、と伝えた。するとリンと、心配してくれたイーヴァさんも来てくれると言ってくれたので、合計三人で急いでギルドへと向かった。
ギルドに着くとフォーセさんの案内で奥の医務室へと案内された。医務室に入ってみると、ベッドで至る所に包帯の巻かれた女の子が横になっていた。胸が上下してるところを見ると、まだ息はあるみたいだった。少し安心。
「フォーセさん、彼女は?」
「ああ、呼び出した理由はその子のことなんだよ。それとさっき言った通り、嬢ちゃんが受けてる依頼についてだ」
私は頷くと、リンとイーヴァさんに女の子の容体を任せて、フォーセさんからギルドの応接間っぽい部屋で話を聞くことにした。
「それで、何があったんですか?」
椅子に座ると同時に切り出した。何となく早い方がいい気がしたから。
「正直に言うと確実ではないんだが、嬢ちゃんが受注してるA級依頼、現地で何かあったらしい」
……どうして嫌な予感って言うのはこうも当たりやすいんだろうね? 期待は大抵裏切られるもんなのに。
「何かあったのだろう、というのはあの女の子の様子を見ればわかりますが確実でない、とは?」
「直接あの子の口から聞いたわけじゃないからな。あの子は依頼をしてきた人と一緒にいた子みたいなんだよ」
なるほど。その子が満身創痍で来たら何かあったと考えるのが当然だね。確か森の奥の村だったっけ? 食料は現地調達、戦力は私一人で十分、水は……川か何かあればいいか。最悪氷を溶かして濾過すれば飲めるだろう。よし、問題なし。
「じゃあ、フォーセさん。いきなりだけど行ってきます。あの子が起きたら救援に向かったって安心させておいてください」
「は? じゅ、準備もなしにか!?」
私のいきなりの宣言に呆けた顔をした後に声を上げるフォーセさん。大丈夫だよ。だって最初のカイの村の依頼だって受けて出発したの二十分後ぐらいだったんだよ?
「適当に現地で調達すればどうにかなります。薬だってリンがいれば即席回復薬だって作れると思いますし」
第一に私が怪我などさせないし。
断言すると、フォーセさんは前回と同じく軽く諦めたような顔をした後、了承してくれた。了承を得たので、先程の部屋に戻るとリンに依頼を完了させに行くことを伝えた。
「リン、すぐにこの子の住んでるところに行くよ。何が起こってるかわからない以上、さっさと終わらせるに限るからね」
「え、それは分かったけど……準備はいいの? 食料とか……いや、別に心配ないかな。分かった」
うん、途中でワイバーンとかを狩った時を思い出したんだろうね。
イーヴァさんも一緒について来てくれようとはしたものの、いくら天下の騎士団長でも飛行魔法で移動する私達と同じスピードで移動する方法は持ち合わせておらず、留守番ということになった。ただ、無茶はしないように、と滅茶苦茶に念を押されたけども。そんなに心配しなくてもちゃんと弁えてますって。
フォーセさんに別れを告げてからわずか約十五分。関所にてイーヴァさんに見送られながら飛び立つところです。あれ? 何かこの言い方だと違う意味に聞こえる気がするのは私だけ?
「マナさん。カイの村の依頼を完了したので止めはしませんが、十分に気を付けてください。少しの油断が命取りになる、なんてこともありえるのですから」
「了解です。それにほら、私が油断したとしてもリンが注意してくれるから大丈夫ですよ」
私の言葉にリンは苦笑して、イーヴァさんは溜息をつきつつ、やはり行かせるべきではないかも……と呟いていた。やばい、気が変わらないうちに出発してしまおう!
「それじゃ行ってきます」
そう言って城門を出ようと足を進めたところであることに気づき、歩みを止める。横を歩いていたリンも私が止まったのに気づき振り返って首を傾げる。
「どうしたんですか、マナさん。何か準備を忘れたんですか?」
不思議がるイーヴァさんの声に振り返って一言。
「ところで……深遠の森ってどっち?」
私の質問にリンやイーヴァさん、近くにいた衛兵の人も肩を透かされたようになったのは言うまでもない。リンだけはさらに、またか、と呟いていたことも言うまでもない。
リンに北東の方角を示されて再度城門から外に出る。二度目の遠征、今回は冷汗をかかないような立ち回りをしていこうか。
「それじゃ、行ってきます。『ハルシオン』」
もう衛兵の人にばれてるのと、隠すつもりもないので出たところで飛行魔法を唱える。リンを後ろから抱えると翼を羽ばたかせて、北東に向かって飛び始めた。
「さて、特に考えもなく出てきたわけだけども……深遠の森ってどんな場所?」
「下調べをせずに飛び込んでいくのやめようよ、お姉ちゃん」
私だって元の世界じゃ詐欺師……もとい結構下調べとか状況判断とかしっかりやってたんだよ? でもチートとか手に入れちゃって何か抜かないと物足りなくなってるのが現状なんだよね。初見プレイじゃないと物足りない、みたいな感じ? まぁ、リンの安全は最優先で行動してるけど。
深遠の森。如何にも魔女関係のクエストで出てきそうな森の名前。後は何か魔法とかで一度足を踏み入れたら最後、出てこられない、とかそんな感じ。でもそんな森の中に何で村があるんだろうね。
リンの説明によると、深遠の森は、妖精たちの住む国、ゼノフォビアを取り巻くように広がってる森。まだゼノフォビアが他国と友好関係を結んでいなかったころ、防衛のために妖精たちが張った魔法で決められた経路や許された人以外が侵入すると惑わせ、出られなくなり、やがて衰弱死する、という恐ろしい森だったらしい。だから深く遠い森の名前が付いたみたい。
今では魔法はないみたいだけど、その魔法のせいで近寄る者はおらず、草木が育て増やせ、と繰り返した結果、自然の迷路と化したため、それだけで方向感覚を失い、以前のような状況になったらしい。恐るべし、大自然の脅威。
「そうなると、まともに森に入っていくのは危険ってことだよね?」
方位磁針もなしに、深い森の中に入るなんて自殺志願者のやることだ、それもただでさえ迷う森と言われてるのに。方位磁針あっても入りたくない……
「そうだね。多分逃げてきた子は道案内も兼ねていたんだと思う。途中で何かに襲われて、眠り込んじゃっ
たけど」
となれば話は簡単。迷路の簡単な脱出法。
「上から見る迷路ほど迷わないものはないよね?」
そう、空を飛べるのだから空を飛んで直接行けばいい! ゲームというものは如何にルール内でルールを無視するかが重要。
「うん、それは名案だとは思うけどそれは迷路とは言わないと思う」
まったくの正論をありがとう。そんなことは百も承知でございます。まぁ、狩りとか寝るのに地面に降りたとしても何か方向を示すものを書き記しておけば迷わないだろうし、降りた場所からまた飛べばさらに迷う確率は減少する。せっかくの深遠の森、若干味気ないけど今は速度優先。
「少し飛ばすよ」
「分かった」
リンの了解を聞くや否や、今まで以上に強く翼を羽ばたかせた。
題名通り、今回は深遠の森のA級依頼の完了に向かいました。騎士団は基本移動手段が馬なもので空飛ぶマナには追いつけないんですよね……セドナで何か起こすべきか……
次話もよろしくお願いします!




