表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チートってのも悪くないね。  作者: 葉月 コウ
28/48

ダウン…

サブタイトルの・・・を…にすべきだったと今更ながらに気付いた作者です。こんな作者ですが続読よろしくお願いします。

「…………」


私、石化の魔法はかけたつもりないんだけど。もしもーしと目の前で手を振ると、ようやく思考が再起動したようで。


「マナさん、これはいったい?」


「いやー、少し騎士団長をからかって遊んだら怒られそうになったので、無断で逃げ出しまして、帰り辛くなったんで別人に成りすまして入国してきました」


包み隠さずに、私のいけしゃあしゃあと言うことを聞きながらベルさんは、若干頭の痛そうな顔をしながら苦笑した。大方、私ならやりかねない、むしろ躊躇なくやるだろう、と思っているのだと思う。まあ、実際にその通りだしね。


「全く、貴女という人は…… ん? では貴女が連れていたマリーという少女はもしかして」


「はい、妹ですよ。実際は戦わせてはいませんのでご安心を。むしろ相手を治してもらってますよ。私が早とちりして依頼人に魔法使っちゃったんで」


と私も苦笑交じりに返す。因みに普通に笑いごとではない、通常なら正当防衛の域を越えているので、報酬の減額があってもおかしくはなかった。カイの村が優しい人たちでよかった。


 「では路銀がない、というのは?」


「それは本当ですよ。実は一つ依頼を受けてきたんですけどね、ギルドに行ったら間違いなくイーヴァさんに捕まっちゃいますし、かといって現金の持ち合わせはあいにく少ないもので」


「難儀な人ですね、貴女は」


呆れている目を向けられてしまった。うん、次からはもっと計画的に行動します。でもまあ、イーヴァさんいじりをやめる気は皆無なんだけど。ああ、触手を持つ魔物って出てこないかな、危害加えそうにないなら偶然を装って、イーヴァさんのレイピアを手から飛ばしてあげるぐらいの援護はしてあげるよ。なんならリンもつけてあげよう。


「ふふ、ふふふふふ……」


「あ、あの……マナさん?」


あ、怯えさせてしまった。


 私の怪しい笑み、因みに変態なだけである、を見て怯えてしまったベルさんを何とかなだめた後に、ベルさんと話し合って明後日までにイーヴァさんに謝りに行くと決めた。気が重いのは確かだけど約束の件もあるのでしっかりと謝ろう。


 そこまで話した時に、不意にドアがノックされた。


「はい、どなたでしょう?」


ベルさんが返事をしたので、私は音を立てずにベッドの下へと避難する。マナの姿をベルさん以外に見られるわけにはいかない、けど、『メタファリング』は唱えた直後に光を発してしまうため、ドアの下部に隙間があるこの部屋で使うわけにはいかないからだ。


 潜り込もうとした時にノックした人が返事をした。


「すみません、マリーです。こちらにタイムが来ていませんか?」


何だ、リンか。じゃあいい、か……いや、いいこと思いついた。ニヤッと嫌な笑みのままベッドの下に潜り込む。


「あ、はい、いらっしゃいますよ」


ベルさんがドアを開ける。するとリンがお礼を言いながら入ってきた。因みに私にかけた魔法は解除してあるけど、リンの方はまだ、マリーのままだ。


 リンは部屋に入ってきて、ベッドの横で立ち止まった。


「タイム、どこにいるの? 明日の予定を立てておきたいのだけど」


「『リキッド』」


ばれないように、リンが呼んだタイミングで呪文を唱えた。『リキッド』で生み出した水を自分の腕に纏わせる。腕はプールに入っている感じで気持ちいいんだけど、どうしても水と空気の境界が変な感じである。まあ、それを利用するんだけど。


「ベルさん、タイムがいないのですが」


「あれ? さっきまでそちらに……」


話し始めてリンの意識がベルさんにいっている。ということで作戦開始!


 パシャ……


水を纏わせた手でリンの足首をつかむ。リンからすればいきなりベッドの下から出てきた濡れた手に足首をつかまれるという状況。悲鳴ものだろうね、と反応を楽しみにしていたら、


「ひあ! な、なに……」


そこでリンの声が途絶えた。


「リン!」


どうしたんだろうと思ったのと同時に、ベルさんの声が聞こえた。その声に反応して、急いでベッドの下から這い出たら、そこにリンの体が降ってきた。あ、ヤバ……


「ぐえ……」


仰向けだったら支えることも出来たんだろうけど、私は生憎のうつ伏せ。綺麗にリンに乗っかられて潰れました。声が女子っぽくないのは放置で。


 にしてもやりすぎたか。そして人を呪わば穴二つとはよく言ったもので。そう思いながらケホケホと咳き込んだ。



 「……ケホッケホッ! うーん、まだ引っかかってる気がする……」


「自業自得だと思いますよ。水、どうぞ」


いまだに咳き込んでいる私に対して、白い目と冷たい言葉を返しながらもちゃんと水をくれるベルさん。優しくていい人だ……


 受け取ったコップの水を飲みほし、再度軽く咳をする。うん、治ったかな。あー、アーと高低音を出しているとベルさんが、いつもの微笑みを浮かべていた。


「でも楽しく過ごしているようで安心しました。騎士団長さんから、いきなり姿を消した、なんて聞いていましたから。まぁ、マナさんなら心配ないと思ってはいましたが」


信用してくれているようで感謝です。この信頼を裏切らないようにしないとね。


「いや、ちょっとカイの村まで行ってきまして。海が綺麗でリンも楽しんでいましたよ。あ、これお土産です」


ギルドカードの中から取り出してベルさんに渡したのは、桜貝を少しサイズアップした貝一つを装飾したものを紐に通しただけの簡単なペンダント。他にもブローチとかブレスレットとかあったけど、シスターの立場上、派手だったり、見えるところには付けられないんじゃないかな、と思って服の下に隠せるペンダントにしたんだけど……


「ありがとうございます、大切にしますね」


ベルさんはお礼を言うと、すぐに付けてくれた。喜んでいただけたようで何よりです。


 実を言うと、イノシシ討伐報酬の大部分を皆へのお土産に使ったんだよね。このペンダントを始めとするカイの村の工芸品、干物とかの食べ物。そして……イーヴァさん用のナマコ的な生物、もちろん生きてるま

ま。学習能力? なにそれ、楽しいの?


 汚れないように書類を全部抜き取ってから引き出しの中に入れておこうかな。あ、でもそれだとイーヴァさんの反応が見られない。却下だね。


 「うう……手が……手が……」


あ、やばい、リンがうなされ始めた。まさか気絶までさせてしまうとは思わなかった。私の横で寝ているリンを揺り起こす。


「リン、リン、起きて」


「うう……ああ、お姉ちゃん、おはよう……ってお姉ちゃん!」


少しずつ目を開けて、その目をこすること三秒。すごい勢いで跳ね起きてきた。すんごいびっくりした。一体どうした。


「どうしたの、リン?」


「お姉ちゃん、魔法解けてるよ!」


大丈夫、解けたのではなく解いたから。まぁ、見破られたからだけどね、迂闊だったわー。


 何とかリンを落ち着かせて話をする。ここまでの話を聞いたリン、因みに最後の方は半眼、は、一つ大きな溜息をつくと、口撃を開始した。


「お姉ちゃんって……すごいけど抜けてるよね」


ドスッ!


「それに最後って……子供なの?」


ドスドスッ! ワン、ツー、スリー! カンカンカン!


 一方的に殴られノックアウトされた私は、座っていたベッドを降りて、部屋の隅っこに座り込んで「の」の字を書きはじめる。この世界で私に一番ダメージを与えてるのってリンだと思うんだよね。


 私が隅っこでいじけていると、リンはベルさんに、黙って国を出て心配させてしまったこと、嘘をついてきてしまったことをちゃんと謝っていた。いい子なんだけど……その言葉の刃をどうにかしてもらえませんかね?


 謝られたベルさんは、気にしませんが、後でイーヴァさんにちゃんと謝ってきてくださいね、と言っていた。うん、いい保護者ですね、と思っていたら、マナさんも分かりましたか、とこっちにも火の粉が飛んできた。もちろん分かっていますよ、気が重いのは確かだけど。


 その後、私、リン、ベルさんの三人で多少の談笑をした後、『メタファリング』を掛け直してから、部屋を出た。そして孤児院の皆と一緒にお風呂に入って、私とリンに割り当ててもらった部屋へと戻った。戻ると同時に始まった約十分ほどのリンから説教を喰らい、全く聞いていないが、そのまま寝た。通知表には、人の話をよく聞きましょう、と書かれ続けていましたが何か?



 ある方に、「マナは危険な目に遭わないの?」と聞かれましたが、基本的に序盤では遭わないかと思います。何故ならチートですので。もちろんバトル描写はあります……一方的ではありますが。

 それでは次話もよろしくお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ