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チートってのも悪くないね。  作者: 葉月 コウ
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頑張れ、理性・・・

 前回、前々回と比較的短い話だったと思うので、今回はちょっと長めにしました。

今回もよろしくお願いします。

 《矛盾点の御指摘があったので、文章内容を変更しました。一部ですのでストーリーが変化することはありませんが、失礼しました。ご指摘ありがとうございました。》

 私とリンが広場の方へ戻ると、準備をしてくれていたおばさんが私達に気づいて声を掛けてくれた。


「どこに行ってたんだい?皆待ちかねてるよ。ま、もう始めてる奴らもいるようだけどね」


おばさんはそう言って後ろ側に目線をやる。私もそっちに目をやると、焼けた肉の串を肴に、もう呑み始

めている男の人たちがいた。というか、その中心にいたのはウェバだった。


「…何も刺してない串を一本下さい」


ボソッと私が言うと、おばさんが首を傾げながらも手渡してくれた。


「何するんだい?」


「いえ、ちょっと。…喰らえ…」


胡坐をかいているウェバの膝を狙って串を投擲。投げた串はきれいな放物線を描いて・・・


「イテッ!何だ、串?」


見事にウェバの膝に刺さった(チクッとするくらい)。ナーイスピッチーング。ん?趣味の一つはダーツですが何か?


「お、お姉ちゃん・・・」


リンは呆れ、おばさんは唖然としている。え?ダメ?だって腹立ったんだもん、仕方ないでしょ。よし、あいつは放っておいて、アレ、作るとしましょうか。


 広場の中心まで出るとそこだけ何故かぽっかりとスペースが空いていた。リンが、主役の私達の席のつもりで空けておいてくれたそうで。うーん、そういうような扱われ方は苦手なんだよね…。ま、私達のために空けておいてくれたんなら好きに使わせてもらいましょう。


 とりあえず周りにいた人たちに頼んで、スペースをさらに広く確保する。


「うん、これぐらいでいいかな。それじゃ、組み立てようか」


「何を?」


リンに向かってニコッと笑う。すると笑顔を向けられたリンは私に向かって、大丈夫かな?というような白い目で見つめてきた。…そこまで信用無いかな?


若干凹みながらギルドカードの中から、先程森の中で伐採、採集してきた木材を引っ張り出す。ドゴドゴッという重そうな音を立てながら太い方の木材が地面に転がり出た。


「さて、じゃあ始めますか。リン、危ないからあんまり近く寄らないでね。『インテシオ』」


自身に強化呪文を掛けて、木材二本を平行に並べる。にしても『インテシオ』便利だね、全然疲れが来ないや。でも…後で来そうだな、これ。筋肉痛レベルのだるさが。明日討伐のつもりなんだけど…ま、いっか。最悪動けなくても敵の姿さえ見えれば魔法打ち込めるしね。


「よいしょっと」


気合を入れながら平行においた木材に十字になるように次の木を渡しおく。それを三回繰り返す、と。組み合わされた木は約百六十センチメートルになっていた。


「うーん、こっから先は飛ばないとダメかな。『ハルシオン』」


木材を持った状態で翼を羽ばたかせて組み上げる作業を続ける。


 で、翼をつけてから渡しおくこと、二回。その後、『バインディングチェイン』で外れない様に縛る。もちろんリンにはやらずに、近くにあった木に呪文を放ちましたよ?


 これで土台は完成。流石に翼を使って飛んだり、作ってるものがここまでの大きさになると、村の皆の大半が私の方に注目していた。子供たちからは、何作ってるの?とか、早く完成しないかな?と言う様な視線で見上げてくる。目は口ほどにものを言うって本当だったんだね。


 「さーて!これで完成っと!」


そう言いながら長い方の木材をギルドカードから直接組み上げた木材の中心の空間に放り込む。若干鎖がギシッといったけど、魔力を送り込んだので持ちこたえてくれた。さらに追加で送り込んでおいたのでよっぽどのことが無い限り、鎖は千切れないだろう。ここまでくれば何を作っているかは分かるでしょう。


 「完成って何作ってたの?お姉ちゃんの故郷のお祭りにあるっていうものだったよね?」


「そう、これが」


組み木の中の木材に『ファイア』をさっきの竈よりも強火力で打ち込む。するとかなりの勢いで燃え上がる。村の皆からは歓声が上がった。


「キャンプファイアーだよ!」


そう、私が作っていたのはキャンプファイアーだ(あれ?ファイヤーだっけ?)。なんとなく外で皆集まっての宴会にはキャンプファイアーみたいなのって必須だと思うんだよね。松明で十分といえば十分なんだけど雰囲気に欠けるんだよね。それに肉や魚とかも焼こうと思えば焼けるし。なにより・・・


「「うわー、すっごーい!」」


村の子供たちが大興奮だった。宴会ってどうしても子供たちが放置っぽくなるからねー。まあ、危険だから近づかない様に言っておくけど。


 よし、キャンプファイアーも完成したし、乾杯の音頭をとらせていただくとしましょうか。


 「えー、この度は私達のためにこの様な会を開いていただき、ありがとうございます。明日は皆さんの・・・」


「長いぜー!早く始めろ…イテッ!」


「期待に応えられるように頑張りますので今日は楽しみましょう!それでは、乾杯!」


「か、かんぱーい…」


挨拶中に野次入れてきたウェバに、もしかしたら、と用意していた串をもう一本投擲しながら乾杯しました。若干皆が引いてるけどまあ、関係なしってことで。


 「楽しんでますか、マナさん?」


宴会が始まってから三十分程経ったとき、コーストさんが声を掛けてきた。


「ええ、もちろん。皆楽しんでくれているようで何よりです。食材提供した甲斐がありましたよ」


「私達は基本的に海と共に暮らしていますからな。肉は食べようと思えば食べられるんですがわざわざ行こうと思うものがいなくてですね」


そう言いながら串から肉を食べるコーストさん。


「お姉ちゃん、これも美味しいよ」


そう言ってリンが差し出してきたのはホタテっぽい貝の串だった。ってリン、君も何気にエンジョイして

るね、両手に合わせて三本の串持って。その中の串一本を貰ってホタテっぽいのを食べる。うん、美味しい。肉厚でふわふわしてる。もしかして買ったホタテっぽいのを戻して焼くとこうなるのかな?だったらぜひとも寮の食堂の方に頼んで作ってもらおう。


 そう考えながら宴会場を見渡すと子供たちがキャンプファイアーの周りで遊んでいた。近づきすぎると危ないから気を付けてねー、と言うと、分かった―、という返事が聞こえてきた。確かに盛り上がるだろうと思って作ったけど、キャンプファイアーの何がそんなに楽しいんだろうか?元の世界で合宿した時には食べるだけ食べて、後は木陰からずっと見てるだけだったからなー。


 あ、そういえば。


「ねえ、リン。セドナとかここってお酒は子供でも飲めるの? 私のいた村は子どもには飲ませてくれなくて……」


「ううん。十六歳にならないとダメなんだよ。そういえばお姉ちゃんって何歳な・・・」


「やったーーーーーー!」


ガッツポーズ。心からの歓喜。お酒が飲める!


「リン、お酒持ってきて!どんなお酒でもいいから!因みに私は十七歳だよ!」


「わ、分かった・・・。」


あまりの私の迫力にタジタジになりながらも探しに行ってくれた。いやー、タバコは絶対にやらないって決めてたけどお酒は飲みたかったんだよね。そういえばカイの村のお酒ってどんな感じのお酒なんだろう。なんとなく海に近いところのお酒って沖縄イメージで泡盛なんだけど・・・


「おねーちゃーん、あったよー」


お、来た来た。


「あ、ありがとう。ふーん、やっぱり日本酒っぽいね。泡盛系統なのかな?」


「あわもり?って何?」


「ううん、なんでもないよ。じゃ、いただきまーす。」


さーて人生初の飲酒。まさか異世界で呑むことになるとは思ってなかったけど。そういえば友達と成人式

の後に呑みに行こうって言ってたけど先に味わうことになったな~。異世界でってことで許してもらおう。


 こくこく・・・。


・・・きっつ!!!辛い!うわ、すごい!これウォッカレベルだった!


「あ、マナさん。その酒は水で割らないと・・・って遅かったですね」


やっぱり、そっか。だろうとは思った、だってきつすぎるもん。このお酒…。にしてもあんまり得意じゃないかも、この系統のお酒。


「ご、ごめん、お姉ちゃん。大丈夫?」


リンが心配そうに訊いてくる。


「大丈夫だよー。若干ふわふわするけどね」


どうやら私は酒に強い体質らしい。コーストさんに聞くと普通、今の量を一気に飲んだら大の男でもフラフラになるまで酔っ払うらしい。うん、呑むことになったらイーヴァさん潰して悪戯しよう。多分飲み比べをしたら私が勝つだろうからね。


 ちゃんと水を貰って割ってからちびちびと飲みつつ、串を食べる。ああ、この状況を見たらお父さん喜ぶだろうな。念願だった娘と酒盛りが出来るんだからね。でも、帰って生きてても時間の進みが同じだったらそのまま十七だからすぐには飲めないわけだけど。そういえば帰るのいつぐらいになるんだろう。ま、すぐに帰る気もさらさらないんだけど・・・


 「おねーちゃーん!」


「わっ!」


そんな事を考えていたらいきなりリンが抱きついてきた。そのまま私の腕に頬を摺り寄せてくる。


「リ、リン?どうしたの?」


「うふふー、おねーちゃーん」


会話が成立していない。この状況、よくアニメとかで見るんですけど、まさか・・・


「・・・リン、もしかして、場酔い、した?」


訊かれたリンは私の腕に頬ずりを続けながら、うにゅー、とか声を発している。うん、間違いなく酔ってるね。確かに結構お酒の匂いが漂ってるからね。今までずっと教会の中にいたんじゃお酒に触れる機会もなかっただろうし、シスターの人たちも職種的に飲まないだろうからまったく免疫がついていなかったんだね。にしても弱すぎる気がしなくもないけど。でもまあ、


「可愛いのでオッケー!」


小さくガッツポーズ。可愛いって正義だよね。膝枕をして頭を撫でながらコップを傾ける。


 そのまま飲み続けること、約一時間。お腹もいっぱいになってきたのと同時に、リンが私の膝の上で完全に落ちてしまったのでコーストさんの家の私達の部屋へと戻った。私的にはもう少しリンに膝枕をさせてもらいたかったけど、外で寝かせて風邪でもひかせてしまったら元も子もないので、お姫様抱っこして帰ってきた。


一先ずベッドに寝かせてから、カードの中から買っておいた寝間着を出して着替えさせた。着替えさせている間、私の理性と欲望が激しい戦いを繰り広げたのは言うまでもない。そしてもちろん理性が勝ちましたとも。


 着替えさせたリンを改めてベッドに寝かせて、自分は椅子に座って一息つく。若干頭がぼやけている気がするけど行動するのに支障はない。これがほろ酔い気分、と言うやつなのかなと思う。


「にしてもあそこまでリンがお酒弱かったとは・・・イーヴァさんと飲みに行くときは酒場とかじゃなくてレストランとかのほうがいいかも。酒場とかだったらまた空気で酔っちゃうかもしれないし」


そのためにはまず、イーヴァさんに謝らなければいけないという事に気づき、凹む。やっぱりやりすぎは良くない。適度に、謝ってもすぐに許してくれるレベルで遊ぶべき、そう心に誓った。・・・遊ぶこと前提で考えが進んでいることは放置するとして。


 「ふわぁ…」


そこまで考えたところで私もあくびが出た。まだ比較的早い時間だとは思うけれど慣れない気候で疲れているのとアルコールで睡魔が襲ってきたんだろう。別に特にやることもないので、髪と体を洗った後、リンに言われた通り、髪が乾くのを眠いのを我慢して、乾いたのを確認してすぐに寝た。


 疲れていて本当に良かったと思ったことが一つある。それは、そうでもなければ、リンと同じベッドで一緒に横になる、なんて状態が疲れておらず、また素面では出来なかったからだ。間違いなく心臓ドキドキ、理性への精神総動員で眠れない。本当によかった、そう思いながら眠りに落ちていった。


 まずは一言、お酒は二十歳になってから!という、注意書きをさせていただきました。そして呑みすぎには本当に気を付けてくださいねー。

 それでは次話もよろしくお願いします。

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