過剰防衛だったね・・・
どこが一週間だよ! そんな声が聞こえてくる作者です・・・本当にすみません。次こそは・・・と思いますがどうなるかは分かりません。
まずは今作をよろしくお願いします。
私はこれまたきれいな白い砂浜に降り立って辺りを見回す。これがホントの、青い空、青い海、白い砂浜ってやつだね。これだけでも眼福なのだが。
「きゃー、つめたーい。きもちいいー。」
リンが波打ち際で波と戯れているオプション付き。ああ、眼福過ぎる。これで水着姿なら言う事無しなんだけどなー。
「お姉ちゃんもこっちに来たら?気持ちいいよー!」
「うーい。今いくー。」
お誘いをうけたので私も海に入ってみる。冷たい水が肌をさらさらと撫でていく感触が気持ちいい。と、思っていたら。
「わっ!」
いきなり顔に水がかかった。何事かと思ってかかった方に目をやると、リンが如何にもしてやったり、という笑顔をしていた。だんだん私に似てきたな。
「お返しだっ!」
と言いながら海水をすくってリンにかける。
「きゃー!やったなー。それっ!」
「やあっ!」
しばらく水の掛け合いをした。現実でもあんまり海ではしゃがずに、じいちゃんと一緒にのんびり釣り糸垂らしていたからすごく新鮮な感じだった。そして、リンとだからなのもあるだろうが、とても楽しかった。
ひとしきり遊ぶと、ギルドカードの中から着替えを出して二人して着替えた。その後、リンは教会の皆にお土産と言ってきれいな貝殻を探し始めたので、私はそこら辺を歩いてまわることにした。時々鳴き砂の場所があって面白かった。砂浜が終わって岩場に入るとフナムシっぽい生物がいきなりお出まししたので思わずその場で
「『グラビディ』!」
と叫んでしまった。フナムシに関わらずカサカサ動く、というよりも自分よりも小さな虫が完全にダメなんだよねー。クモとかアリとか。Gは論外。地球上から消え去ればいいのに。
おかげでフナムシもどきは見事にプチッとつぶれて何気なグロ映像。直径一メートル以内に近づかない様にして先へと進む。しばらく先に進んで岩場に手を掛けてから、その手をかけた場所の岩陰をみると、先程のフナムシっぽい生物がわんさかといて、もう少し付く手をズラしていたらフナムシっぽい生物を握るハメになるところだった。
「もう嫌!『フレイムブラスト』!『ハルシオン』!」
恐ろしい程の寒気と共に先程の『グラビディ』以上の強力魔法を放った。この世界で言う古代中級魔法。いくら生命力が強いフナムシといえど、古代中級魔法に抵抗できる程強い生命力は持ち合わせていなかったようで豪炎に触れた瞬間から死骸すら残すことなく消滅していった。というよりも岩場すら砕いて地形を変えてしまった。
「あ、魔力制御し切れなかった。まあ、自業自得という事で諦めてもらいましょう。」
『ハルシオン』で飛びながら呟く。因みにフナムシからすれば完全にとばっちりであり、自業自得ではない。
これ以上岩場にいたくないし、このまま空から散策することにしよう。そう考えて岩場を再び見る。そ
こで私は一つの違和感に気が付いた。
「あれ?私が吹き飛ばしたところ以外にも浸食以外の破壊痕があるんだけど・・・かなり大きいけど何があったんだろう?」
そう、先程私の過剰防衛、というか一方的な虐殺のために放たれた『フレイムブラスト』による破壊した場所の他に、違う場所の岩場に何かが叩きつけられたかのような破壊の痕が残っていた。まるでかなり太い、直径一メートル以上もありそうな長い物体が叩きつけられたような感じ・・・あれ?何か思い当たる気がするんだけど、何だっけ。ここまで出かかってるんだけど。
「!」
私が答えを出す前に私の目の前に矢が通りぬけていった。突然の攻撃に身構えると同時にリンの姿を探す。見つけたリンは先程から変わらずに貝殻集めに夢中になっていた。一安心。さて、
「不意打ちとは美しくないね。やるなら真正面からかかってくればいいものを。」
章君辺りが聞けば、というよりも文芸部全員が「お前が言うな」と言うだろう、間違いなく。
「『クアリー』」
『ハルシオン』に加え、索敵呪文の『クアリー』を敵の数が鮮明に分かる中級レベルで矢が放たれた方向に展開する。広がった感覚の中で動く影は六つ。
私が索敵呪文を唱えたことによって気づいて空を見上げたリン。その奥に岩場に隠れた人と思われる影が合計五つ。そこに範囲を絞って『クアリー』のレベルを上げてみると、そのうちの二人が弓を構えていて、片方が再び私に向かって矢を放ってきた。狙いは正確。しかもこの距離なら気づく方が難しい。確実に射落とせて殺せるだろう。私以外なら。
「『ディフェンシブ』」
私の周りにきれいな泡が出現し、飛んできた矢はその泡に全て弾かれた。感触はほとんど無いに等しい。やっぱりもう少しレベルの低い防御魔法考えておけばよかったかな。初期攻撃相手って完全に無駄使い感があるんだよねー。異世界チートももったいない時もあるんだね。
「人相手は殺すわけにもいかないし、どーするべきか。『グラビディ』で身動きとれなくして話をしようか。」
そう決めて、リンと合流するためにリンの傍の砂浜に着陸し、羽をしまう。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
心配するような言葉を掛けてくれてるけど、実は君、ほとんど心配してないでしょう。拾い集めた貝殻数えながらだしね。確かに全く心配いらんけど。
「いや、正体不明の五人組にいきなり弓矢で狙われたから『グラビディ』掛けつつ話を聞きに行こうかと思ってね。」
「もはやそれって任意質問じゃなくて拷問だよね。軽い人なら口を割るレベルだよね。」
そうとも言う。これはお父さんの口癖だけど、まさか自分が使うことになろうとは。いくら私でも他人の自由権まで侵害したりしないって。現実世界では基本的人権の一つだし。
「どっちにしろ正当防衛だから。罪にはならないよ。」
「過剰防衛にならなきゃいいけど。」
ボソッと何か聞こえたけど気にしなーい。なる気はしないでもないけど。
『ディフェンシブ』を使用したまま彼らのいた岩場に向かう。なお、この『ディフェンシブ』には私とリン以外の全てを弾くようにしてあるのでフナムシも入ってきません。最初っからこうすればよかった。向かっているその間にも矢は一定間隔で飛んでくる。そのたびトン、トン、という軽い音を立てて弾かれていく。矢に魂があったら、ごくろーさまって労ってあげたいね。無駄にうたれて弾かれているわけだし。
向こうもこれ以上は無駄だと分かったのか一目散に逃げていく。おーおー、逃がすとでも思ったのかね、この私が。
「『グラビディ』広範囲版。それドーン。」
「「「かはっ!」」」
「「ぐっ!」」
その五人組全員が一気に地面へと叩きつけられる。多少アバラいってる人もいるだろうから後でリンに回復魔法をかけてもらおう。アフターケアも万全。なんて良心的なんだ。でも、私が魔法を撃たなきゃいいだけの話なんだけどね。
近づいていくと、こちらを見ていた男性の顔が恐怖に歪んでいた。私が悪魔にでも見えているのだろうか。散々友人には言われ続けていたが。いきなり矢を放ってきたのには少し驚いたが、ここらへんに住んでいる人らしいからいい案内者が出来たと思って良しとしよう。
「さて皆さん、カイの村って知っているかな?」
「お、俺達の、村に、何の用、だ!」
あ、ごめん。『グラビディ』かけたまんまじゃ答えるの辛いよね。にしても今、俺達の村って言ったよね。じゃあ、この人たちはカイの村の人?
『グラビディ』を解除しながら訊く。
「私はギルドで依頼うけてきた冒険者なんだけど?」
「依頼って、もしかして、化け物退治の事か?ケホッ」
「多分ね。さっきの弓矢の件は水に流すから、貴方達の村に案内してくれる?」
水に流す以前に十分な報復はしてると思うんだけど、ね。それに気づくことなく男達は顔を見合わせて私の言葉に頷く。
「分かった。それじゃ、すぐにっ!」
立ち上がろうとしてすぐに苦悶の表情を浮かべてうずくまってしまう。あ、アバラいってるんだからすぐに立ち上がっちゃダメだって。それじゃリン、よろしく。
「はいはい。じゃあ皆さん、傷を治しますので力抜いてください。『女神の加護を受けし精霊たちよ。癒しの力を持ちて傷を治したまえ』」
さっき、私に使った時以上の光が彼ら全員を包み込んで、彼らの苦痛に歪んだ顔が安らいでいく。光が消えると共に彼らの損傷が治りきったようだった。立ち上がって体の調子を見るように体を動かしている。私はお疲れ様、と言いながらリンの頭を撫でた。リンは恥ずかしそうにしながらも嬉しそうにされるがままになっていた。
作者も苦手です、フナムシ。家族に連れられて釣りに行くことがあるのですがテトラポッドの上にいるとゾッとしますね・・・
ともかく現在、続きを大急ぎで書いているところです。なるべく皆さんをお待たせしないように頑張りますので、次回もよろしくお願いします。




